第77話基本的にソシャゲってシステム的に制限が多いよね? それでもここまで進化してきたのは日本人の技術力があるのかな

「ご主人様……私のことを放っておいて畜生風情とイチャイチャして……獣姦プレイなんて上級過ぎます」


「どうやったらこの悪魔を消滅出来るのかな? 」




 母親フェンリルのミドリが森を再び纏め上げる為に姿を消した後、何時もの状態に戻ってしまった駄目イドを折檻しながら俺達はみんなの元へと向かっていく。


 どうやらミドリの存在が強過ぎたのか、強制的に戻された無影を呼び出す事が出来ない為、俺とミーアは仲良く走りながらミーアが感知したみんなの気配の場所へと向かっている途中だ。


 因みにアオは俺の懐の中でお休み中だ……




 ミーアの感知能力はかなり高いようで、俺は彼女の指示通りに動いているのだが彼女は動きやすい場所を選んでくれているようだ。


「それにしても何故ご主人様はそんなに急いで皆の所に戻ろうとしているのですか? 」


 若干不満気なミーアの言葉に苦笑いをしながらも、俺は何故か嫌な感じがしてならないこの気持ちをどうやってミーアに伝えようか逡巡してしまう。


「うーん、どう言ったらいいのか……何だか知らないけどみんなの事を考えると何故か嫌な気分になっちゃうんだよ」


 そんな曖昧な俺の言葉を聞いた瞬間、ミーアの走る速度が劇的に上がってゆく!


「……ご主人様、それは勘違いではありません。きっと皆に何かが起きている筈です。すみませんがこれからは少しばかり無茶な場所を突き進んで行きますが宜しいでしょうか? 」


 いつになく真剣な表情で語りかけながら走り抜けるミーアは、俺を心配をしながらも目的の場所へとその足を止める事はなかった。


「問題ない。そのままみんなの元に先に行ってくれ! 少しは遅れるかもしれないけど俺も全力で向かうから」


 俺はミーアの後を必死に追いかけながらミーアに全力でみんなの元へ向かう事を命令する。


 ミーアは少しだけこちらを見ていたものの、ふわりと誰もが見惚れるような笑顔をこちらに向けた後、俺の目の前からまさしく消えるように走り去っていった……




「さて、悪いがミーアの後を追わせるつもりはない……アオ、そろそろ目を覚ましてくれないか? ここからは俺も全力でいくからな」


 《ジルアりょうかい。おれもほんきだす》


 森の中にいる全ての魔物達がこの場に集まって来るかのような光景に、俺は自分の勘が嫌な方向に当たってしまった事に怒りを覚え、ミーアやみんなの元にこいつらを行かせない為にも、アオと共にこの場でこの魔物達を殲滅する事を決意する。


「行くぞアオ! お前らには悪いがここからは私達がお前等の黄泉への水先案内人だ。お代はお前達の命で払ってもらうぞ! 」


 聖剣を抜き放ち、巨大化したアオの背に乗ると俺達は魔物の群れの真っ只中へと飛び込んで行くのであった……







 巨大な蛇の頭を聖剣で切り落とし、頭を失った胴体が暴れるのを(アイス・ランス)で凍らせて【イベントリ】へと送り込む。


 身体中から紫の液体を垂れ流している不気味な蛙は(サンダー・アロー)で感電させ、鋼の羊毛を纏った羊ごと電撃による感電死を狙う。


 巨大化したアオの咆哮は青き炎となりて炎で出来ている虎さえも凍りつかせていく……


「意外と、こいつら……根性ある……な! 」


 魔法の連打の隙間から何度かこちらへ襲い掛かってくる魔物を聖剣で撃退しながらも、流石に1時間全力で撃退していた俺の体力はかなり削られてしまった……


 すでにアオも魔力切れの為疲労困憊となりながら元の小さな姿に戻りながらも、懸命に魔物達を牽制している。


(サークル・ブレイド)で俺の周辺を囲んでいた魔物達を一掃するも途切れることのない魔物の数に辟易しながら、俺は残りの魔物をどうやって殲滅しようかと頭の片隅で考える。


 アロー系の魔法は連射出来るが、様々な属性を持つ魔物の群れに打ち込むのは躊躇してしまう。


 現に何度か連射したアローの魔法で、逆に力強くなった魔物達がいたので単体にしか影響のないように単発で使えるランス系に切り替えてある。


 剣術スキルによる攻撃で敵を削ることも試して見たが、魔物の数が多過ぎるのとスキル使用後の硬直を何度か襲われ、出来るだけ無理のないようなスキル使用に変更している。


「ははは……まさに八方塞がりって感じ……だな! だけど私は絶対に諦めないからな! 」


 聖剣が突き刺さった魔物がその身で俺を押し潰そうと倒れ込んでくる所を俺は聖剣に魔力を大量に流し込むことで塵へと変える。


 自らを叱咤するように血塗れとなった頰を軽く叩くと、聖剣の真の力を見た事により怯えの混じった魔物達へ、俺は更なる魔力を聖剣へと流し込みその力を解放していく。


「聖剣! 出来るだけ周りに被害が出ないようにお願い」


 何故そんな事を口走ったのかは後になっても分からないのだが、俺は聖剣に対して無茶な注文をつけながら聖剣の力を解放していく。




『本当に今回の使い手は使い方が荒いよね……まぁ、幼女の言う事だし今回はサービスしておくよ』


「へ? 」


 聖剣を振り下ろすと同時に聞こえた少年のような声に俺は間の抜けた声を発してしまうが、聖剣より放たれた緑色の波動はその言葉を肯定するかのように辺りの魔物だけを塵へと変えながら周りには一切の影響を与えずに広がっていくのであった……







「ちょっと、話が出来るなら最初から喋ってよ! ……ねぇ? 聞いてるの ⁈ 」


 辺りから魔物の気配が消えた森の中で俺は聖剣に問い掛けるが、あの言葉以降沈黙を守り続ける聖剣はただ俺の手の中で薄っすらと緑色の光を放ち続けるだけだった。


 納得は出来ないが先を急ぐ俺は剣を鞘に収めると、へばっているアオを懐に入れるとミーアの向かった方向へと走り始める。




 魔力の半分近くをこの戦闘で使ってしまったが、今もなお嫌な感じのする自分の心に焦りを感じつつも木々の間を走り抜ける俺の足は止まる事なく、仲間の元へと走り続けるのであった……




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