第63話ソシャゲの実況者のガチャの動画とか見ていると自分の運の無さを実感出来ます…

 アクトが前世の記憶を思い出したのは10年以上も前のことらしい。


「その頃の俺は冒険者をしててな、鉄クラスまであともう一息って所だったんだが戦闘中にオークに後ろから頭を殴られたみたいでな……気が付いた時に、俺は浅草の町工場で働いていた頃の事を思い出しちまったんだ……」


 それからはPTの面々より恐ろしい早さで成長するアクトが、周りからは浮いてしまいPTが解散するきっかけとなったみたいだ。


「まぁ……その頃には自分が異世界転移者だという事が分かって調子に乗ってたから、PTの奴らとも何度も喧嘩になったし自業自得さ……」


 彼にとっては苦い思い出なのだろう。


 それからアクトはソロで冒険者を続けながら他の異世界転生者について調べ出したのだと言う。


「称号の異世界転生者の人数がよく減る事が気になってな、俺のユニークスキルに関してもよく分からない事があったし他の転生者と交流を持って今の人生をより良くしたかったんだ……」


 しかし思った以上に集まらない転生者達の情報にアクトは苛立ち、自分の足で探す事をやめ情報屋などで集める事にしたのだが……


「これがどうやら不味かったらしい。情報屋の中では異世界転生者についてはタブーとなっていて、その言葉を口にしただけで追い払われたよ……そこで俺は気付いちまった。『誰か』が異世界転生者を集めているか、排除しているかのどっちかだってな……」


 ん? 情報屋でタブーになるくらいで何でそんな話になるんだ?


 俺の考えを察したのだろう……アクトがその説明をしてくれる。


「情報屋にその情報が集まらないなんて事はまず無い。情報を集めた結果、その情報を取り扱う危険性を知ってしまった……そういう事だろう。情報屋が扱うことすら嫌がる情報なんて、大国の王族の秘密みたいなもんだ」


 なるほど、扱いあぐねるレベルの情報だからこそ情報として売れないという事か。


「だからそこで俺の異世界転生者探しが終わるはずだったんだが……酒場で妙な話を聞いてな。『ある人物が納豆というものを探している』ってな」


 日本人なら誰もが名前ぐらいは知っている納豆を探す人物……なるほど、これなら確かに異世界転生者を探しているのと変わりはない。


「俺はその男達に酒を奢りながら納豆を探す人物の情報を集めた。驚いた事に、その人物は商人ギルドや冒険者ギルドにも依頼として出していた。俺はその男の事を確かめるべくその男の周辺でその男を観察していたんだが……その時にあいつを見てしまったんだ! 」


 アクトはそこまで喋ると全身を震わせ、膝から崩れるように座り込む。


 これはヤバイと思った俺はアクトの口に【イベントリ】から取り出したラム酒を瓶ごと口の中に突っ込む!


「くぼっ ⁈ ちょ? 何だこの度数は! 俺を殺す気か! 」


「ふぅ……良かった。気付には度数の高い飲み物が良いって漫画に書いていたのを覚えていて良かったよ」


「アホか! そんなの漫画の中だけだ! くそっ……何だよ一気に酔いが回ってくる……一体何飲ませたんだよ? 」


「ん? ドラゴンファタジアでイベントで集めていたラム酒。あのイベントは八岐大蛇を倒す為にお酒が必要だったから結構な種類のお酒を集めたんだよね」


「て、て……めえ、絶対に…わざ…と…だろ」


 赤ら顔になったアクトが倒れるように眠るとダンジョン自体が光り出し、俺達はいつの間にかダンジョンの入り口のあった荒野へと移動していた。




「こ、これはどういう事なの? 」


 マロンさんもかなり驚いているようだし、他のみんなも唖然としている。


 実は俺も予想外だったのだが、まぁこれでマロンさんを助けた事にもなるし良しとしよう。


「さて、取り敢えずこの人を伯爵様に会わせないとね? 今から馬車を出すからみんなそれで移動するよ」


 ここまできた馬達に、前に使った馬車を引かせながら俺達はダンジョンの無くなった荒野を離れ、アーバンパレスの街へと戻っていく。


 どうやら今の時刻は朝方のようだ……そう考えるとほぼ1日でダンジョンクリアか……何だか裏技ばかりで終わらせた気がするがこんなものだろう。


「さて、ジルアちゃん?ちゃんと説明はしてくれるのよね? 」


 威圧感漂うマロンさんに問い詰められ絶体絶命な件について。


 ちなみにシロとセシルはこうなる事が分かっていたのか自主的に馬車の御者をしまいます。


「うーん。正直言ってマロンさんとカルパスは知らない方がいいと思うよ? アクトの件で分かったと思うけど完全に『世界の敵』に認定されちゃいそうだし…」


 俺の言葉に、俺に対して言葉を掛けられなくなる2人。


 クレアさんはもう当事者みたいなものだし、多分同じ事を言っても聞いてくれないだろう。


「いや!俺は聞くぞ! クレアの命が掛かっているんだ。こんな所で止まれねぇ! 」


「カルパス……あんたって人は…」


 強い口調で俺に答えるカルパスと、それを見て涙ぐむクレア。


 そりゃこんなイケメンなセリフ聞かされたら落ちちゃいますわ……


「ふぅ……私としたことが情けないわね。どうせ伯爵様には話すつもりなんでしょ? だったら私にも話しなさいな一連托生もジルアちゃんとなら悪くはないわ。あと、私のことはマロンでいいわ」


 こちらも偉く格好いい決め台詞を決めたマロン……これでオネエでなければもっといいのに。




「それじゃ話すけど誰にも言わない事を誓っておいてね」


 俺がそう言うと3人とも決意を秘めた目で頷いてくれる。


 そして俺は世界の守護者との戦いの後の話と、俺の考える世界の守護者の目的を街に着くまでに話していくのだった……






 アーバンパレスの街の門に着くと、またもやフリーパスで通してもらう。


 何人かの兵達がマロンさんを見ていたが、やはり金クラスは違うと言う事か。


「先に、冒険者ギルドに寄ってもらえるかしら? テンカにも話をしておかないと面倒だし」




 マロンさんからの提案で冒険者ギルドに寄る事になるが、これがあんな事になる前ふりだとは今の俺には考えもつかない事だったのだ……








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