第62話レア度ってやはり性能重視なんですかね? それでも好きなキャラは使っちゃうんですけどね

 少し困った状態だ。


 マロンさんは青年を普通の人だと思っているが、どう考えても彼がこのダンジョンの製作者である事に間違いなさそうだ。


 問題はマロンがこの事を知った場合、彼がどうなるかという事だ。


 流石に無罪放免とは行かないだろうし、下手をしなら伯爵の領土を脅かしたとして死刑も充分ありえる。


 しかし、俺としてはユニークスキルを持つ異世界転生者としての情報が欲しい……




「すいませんマロンさん。少し彼と話をさせてもらっても良いですか? 」


「ジルアちゃん?……分かったわ貴女に任せましょう」


 俺のお願いにマロンさんは少し戸惑っていたが、真剣な俺の表情に何かを感じたのかマロンさんは了承してくれた。


「さて、そこの茶髪の青年。今から話をしたいんだけど、そちらに行っても良いかな? 」


「な、何を言ってるんだ! お前はさっきのバーサークエルフじゃないか! こっちにくんな! 」


 俺の言葉にそれまで唖然としていた青年が、まるで人を悪魔のような扱いでこちらを拒否してくる。


「ふーん。なら、君はアーバンパレスの『敵』としてこれから討伐されるけど覚悟はいいんだね? 」


「は? 」


 俺の宣戦布告とも言える言葉に、青年は思考が停止してしまう。


「だってこんなアーバンパレスに近い所に『ダンジョンを作る人間』がいるなんて、絶対に領主様が許すはず無いよ? そこの所分かっているの? 」


「……。」


 俺の心配するような言い方に、青年は何かを躊躇するような表情で顔をそらす。


「ジルアちゃん。それはどういう事なの? 私にはその子がこのダンジョンを作ったみたいに聞こえたんだけど? 」


「正確には『ダンジョンみたいなアトラクション広場』って感じでしょうけどね。その考えで間違いないですよ」


 俺の言葉に不思議そうなマロンさんに対して、青年の方はギョッとした表情で俺を見てくる。


「お、お前も異世界転生者なのか? そうなのか? 」


 必死にこちらに話しかけてくる青年を見て、俺はどうやら当たりだと確信して話を進めていくことにする。


「私は異世界転移者だけどね。お兄さんは名前はなんていうの? 」


「俺の名前はアクトだ。それより異世界転移者って何だ? 聞いた事が無いぞ?」


 どうやら多少は信用してくれたみたいで名前を教えてくれたが、やはり異世界転移者という言葉は知らないようだ。


「ん––。お兄さんが元日本人なら話を合わせられるんだけど、外国だと地名程度しかわからないし……」


「東京だ! 俺は東京の浅草に住んで居たんだ……マジか、こんな所にも転生者は居たんだ…」


 どうやら元日本人のようだ。


 しかも安心したのか、オーガ達をかき分けるようにしてこちらに走ってきている。


 ……涙を流してこちらに来てるけど、このままじゃ俺絶対何かされちゃうよね?


「そこまでです! お触りは禁止です! ファンの方は握手までなのです! 」


「シロちゃん……アイドルじゃ無いんだからそんな止め方じゃ駄目よ? アクトさんでしたっけ?私も浅草の浅草寺ぐらいしか行ったことは無いけど、一応場所ぐらいは覚えているわよ? 」


「え? えぇ ⁈ 」


 俺の方に駆け寄ってくるアクトの前に両手を広げながら止めに入るシロと、俺の横にいつの間にか来てため息をつくセシルの言葉に混乱して、その場に止まってしまうアレン。


 あのままだと確かにやばかったので助かったのは確かなんだが、セシルは俺の頭の上に大きなお胸様を置くようなポーズを取らないでください!


「こんな所に3人もいるのか?……いや、こんなに集まったら『世界の守護者』に見つかっちまうだろ! 」


 混乱したアレンの言葉に、俺達3人は驚きを隠せない!


 こいつ! あの男に追われた事があるのか?


 その先を聞こうとして前に踏み出すが、それより先にクレアが男に詰め寄り襟元を掴んで持ち上げている ⁈


「お前、世界の守護者について何か知っているのか? 知ってるなら今すぐ話せ! 今すぐだ! 」


 人の変わったようなクレアは男を釣り上げて無理矢理聞き出そうとしている。


 流石に止めようとするが、クレアはこちらを睨みつけそれ以上近づけさせようとはしない!……やばかった、もう少しでお股の非常停止ボタンが押される所だった。




「奴に何処で会った? 今奴は何処にいる? 」


「ぐっ…………! 」


 クレアの執拗な質問に、首を絞められて喋れないのかアクトの顔色が悪くなっていく……俺はクレアを止めるために覚悟を決めて前に出ようとするが、その前にカスパルがクレアの頰を打つ音がする。




「いい加減にしろ! お前は自分の復讐心をいつまで他人にぶつけるつもりだ! 」


 真剣なカスパルの言葉に、力の抜けた手からアクトは解放される。


「いくら実の兄を世界の守護者とやらに殺されたとはいえ、お前がその男を責めるのは間違いだ。冷静になれ」


「……うん」


 カスパルさんはそう言うと、崩れ落ちたクレアさんの肩に手を置くと優しく髪を撫でている……いかん、カスパル兄貴に惚れてしまいそうだ。


「げほっ……熊の兄さんもそのくらいにしてやってくれ。俺にもその女性の気持ちはよく分かる。あんな化け物に身内を殺されたなら確かに気が狂いそうになるのは間違いない……」


 アクトもクレアを責めずに同情している……いい話や。


 今度あいつに会ったら手加減無用で殺しにいこう……


「それなら大丈夫ですよ。ご主人がかなりボコボコにしましたから、当分は動けないはずです」


「「え ? 」」




 ……あかん……




 そういや、あの件を黙っておく事をシロに言うのを忘れてた……







「ま、そう言うわけであいつはかなりダメージを受けているはずだから当分は出てこれないかな? 」


 クレアとアレンに詰められて、仕方なく世界の守護者との戦いをこの場にいるみんなに話す事になった。


 マロンさんは難しい顔をしていたが黙って俺の頭を撫で、


 カスパルは本気で心配してくれ、


 クレアには何度もお礼を言われた。




「そうか……それなら当分は俺も大丈夫だな。それにお前になら俺のこれまでの事を話しても良いだろう」


 そう言ってアクトは世界の守護者に出会う前からの話をしてくれた…








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