第61話ソシャゲで周回をしてる時って眠くなりませんか? 自分は良く寝落ちしてます…
無事に二階層の攻略を終え、三階層へと辿り着く。
「ここでマロンは行方不明になっている。敵の強さもここからは変わる可能性が高いだろう…みんな気を引き締めろよ? 」
カルパスの言葉に俺達は気を引き締めて警戒して進んでいくのだが……
「全く敵がいませんね?」
前を歩くシロが辺りをきょろきょろしながら俺の思っている事を代弁してくれる。
「おかしいわね? 罠はあるのだけれど完全に沈黙してるわよ? 」
「こちらも同じですな。どうやら機能自体が停止中のようです」
セシルとケットシーが罠のある所を調べているが、調べた結果がこれである。
「仕方がないから音が聞こえる所を探していこう。このままじゃマロンさんがどうなってるか想像もつかないよ」
俺の言葉にみんなも不安になりながらも賛成してくれる。
何も無い通路をただただ進んで30分ほど過ぎた頃、止まる事ない打撃音のような鈍い音と、地震のような揺れが感じられるようになってくる。
「やばい! これはマロンの本気の戦闘音だ。みんな、早く止めに行くぞ! 」
カルパスが叫んだ言葉が俺にとっては理解不能なんだが……止めに行くとは、どう言う事だ?
走り出すカルパスに不可解ながらも後を追う俺達だったが、カルパスの言うことが理解出来たのはそれからすぐの事だった。
「な、何ですか ⁈ あれって本当に人間が出来る事なんですか? 」
シロの悲鳴のような叫びが、俺達全員の心からの思いである。
だってオーガが打撃音と共にあっちこっちの壁にめり込んでいるのだ! どうやら地震のような振動はオーガが壁にめり込む衝撃だったみたいだ……
「カルパス、あれ本当に助けに行くの? 絶対に助けに行ったら怪我するよ? 」
俺は青褪める自分を自覚しながらも、カルパスが無茶をしないように止めている。
「そ、そうよ! あれは近寄ったら死んじゃうわよ? 何よあれ! ドラゴンよりもやばいじゃないの! 」
クレアがカスパルの背中にしがみつき、必死に向こうに行こうとするのを止めようとしている。
「だからあれを止めないと、ここら一帯が崩れてしまうんだよ! そんな事になったらアーバンパレスの街が下手したら無くなっちまう! 」
…もうあの人は、災害指定の魔物って事でいいんじゃないかな?
オーガの数はこの辺一帯を埋め尽くすような状態なのに、マロンさんの
「あ、それ ♪ 」
の掛け声と共にオーガが天井へと突き刺さり、
「てぃ ♪ 」
の可愛い掛け声で数体のオーガが吹き飛ばされながら、他のオーガを巻き込んではオーガの海をなぎ倒し、
「はい ♪ はい ♪ はい ♪ 」
の音頭と共にオーガが血煙となっていく……
俺のお股は本当に良く頑張ってくれたよ!
「あら? ジルアちゃん達が来てくれたの? 私を心配してくれるなんて嬉しいわ」
ようやくマロンさんの顔が見えるぐらいの距離まで近づけたが、そのマロンさんの姿が強烈過ぎる!
今までずっと戦っていたのか、体から蒸気を上げながら血染めの鎧と拳を今も止まる事なく動かして、顔についた血飛沫を舌で舐めとるマロンさん。
「キュ–– ⁈ 」
あまりの凄惨さに、シロがその場で倒れてしまう……
ケットシーが何とか支えてくれて助かったけど、セシルは後ろを向いて屈んでいるしクレアはカスパルに張り付いてガタガタ震えている……
「ジルア……お前、垂れ流しているぞ? 」
……どうやら気付かなかったが、俺のお股は俺の意思とは関係無く強制パージを敢行していたようだ。
そこから先のことは俺の記憶に残っていない…
「ジルア! 目を覚ませ! そのままだとマロンまで殺してしまうぞ ⁈ 」
「あらあら ♪ ジルアちゃんも凄いわね。このままじゃ私本当に焼死しちゃいそう ♪ 」
何か焦るような声で呼ばれた気がして、俺の意識は覚醒する。
周りには焼け焦げたオーガの死体が次々と光の粒子となって天井へと向かっている。
既にオーガは10体程度まで減っているが、カルパスとマロンさんがあちこち焦げているのは何でだろう?
「ようやく気がついたか……お前もマロン並にやばい奴だったんだな」
「本当に凄かったわよね? 私、ちょっと濡れちゃった ♪ 」
何が濡れたのかは分かりたくないので自分の姿を確認するが、どうやらあの後、オーガと戦っていたようだ。
聖剣もオーガの血で赤く染まっているし、魔法の鎖帷子の下に着ているクロークすらも血で濡れていて気持ちが悪い……
取り敢えず自分とマロンさんに最大出力で(クリア)を掛ける。
血塗れだった俺達は洗濯したてのようにピカピカになるが、どうしてもパンツに違和感があるので【イベントリ】から新品を取り出していそいそと履き替える。
「ジルアちゃん…そんなに恥じらいもない履き方をしちゃ駄目よ? 」
何故かマロンさんに小言を言われてしまうが、多分精神耐性がMAXとなっているだろう俺にとってこの程度の事は既に日常茶飯事である……
冷静になれたので辺りを確認してみるが、未だ女性3人は夢の中にいるようで起こすのも可哀想だ。
ケットシーはそんな女性達の間を走り回りながら介抱している。
ケットシーには猫缶の良いやつをご褒美としよう。
「それであそこにいる人は一体誰なんですか? 」
残りのオーガの後ろでプルプル膝を震わせながらこちらを見ている茶髪の青年を指差して、俺はマロンさんに尋ねてみる。
「そうなのよ! 私が
「ふざけんな! 人の『家』に勝手に入って来たばかりか、俺の『家族』まで目茶苦茶にしやがって! どんだけ俺が怖かったと思っているんだよ! 」
困った顔で俺に説明するマロンさんに、涙目で文句を言ってくるオーガの後ろで震えている茶髪の青年。
一体全体どうなっているのやら……
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