第59話課金ゲームでは同じランクに全く引けないキャラとかいませんか? それはきっとその子が貴方の1番の子だからですよ

 ボス部屋の前の門は、流石に他の場所とは作りが違う。


 今までの石の通路もかなりの出来具合だったが、門には色々な装飾がされて魔力まで感じる。


「ここがボス部屋と呼ばれる部屋だ。ここの扉を開けるとボスがこちらに攻撃してくる。その上ボス部屋は入れないようにしちまうからな。応援も呼ばないし中々嫌な作りだぜ」


 カルパスは何か嫌な思い出でもあるのか、珍しく唸っている……そんな顔を急に見せないで欲しい…急な展開に俺のお股は弱いのだから。


「ん––じゃあ試してみよう! 」


 俺はボス部屋の扉を【イベントリ】に仕舞えるか試してみる。


 まぁ出来れば儲けものかなという程度の気持ちだったのだが、予想外の事が起こってしまう!







「おぃ……ボスが全く動かないんだが? 」


 カルパスさんの白い目が俺から離れない。


 顔をそっぽに向けるがそちらからはシロから白い目で見られている。


 仕方がないので更に他の方向を見てみるがクレアが白い目で見ている……


 仕方がないので天井を見ながら叫んでしまう。




「ちゃうねん。試しただけやねん」


 ケットシーとセシルの大きなため息が聞こえて来た。




 結局【イベントリ】に仕舞う事の出来た扉が何か関係しているのか、ボスとしてこの部屋に存在していたオーガは全く動く様子が見られずにただ立ち尽くすだけだった……




「これって倒しちゃってもいいんですかね? 」


 オーガをペタペタ触りながらシロが聞いてくるがカルパスがそれを聞いて首を横に振る。


「オーガって言えば鉄クラスのPTで戦うような相手だぞ? 勝てることには間違いは無いが、わざわざ殴って動き出したら面倒なことになる。今のうちに下の階層に向かう方が安全だな」


 カスパルの言葉にクレアが頷く。


 確かに無駄に時間を掛けて倒しても、マロンさんの所に行くのが遅くなるだけだしな。


 そう思って通り過ぎる事にしたのだがケットシーがオーガを見ながら足を止めている……何か分かったのかな?


「ケットシー。何か気になる事でもあるのかな? 良ければ話して欲しいんだけど」


 俺の言葉に頭を左右に傾けながら俺の隣にまで来たケットシーは俺の耳元で驚愕の理由を話してくれる。


「実は……これ、どうやら無線で操作しているみたいでして……姫の元の世界で言う、アトラクションに出てくるロボットみたいな物だと判明しまして…」


「マジか! 」


 思わず叫んでしまい周りのみんなの視線を浴びる。


「あ––ごめん、ちょっとびっくりしただけだよ。早くマロンさんを探しに行こう! 」


 俺はケットシーを抱きかかえて、下の階層へと続く階段へと走っていく。


「ケットシー。悪いがその件については後でみんなに話すから、今は悪いけどマロンという男を探す事に注力してくれ」


 走りながら抱いてあるケットシーにささやくとケットシーがこくこくと頭を縦に振る。


 階段に着くとそこには大人3人が並んで降りれそうなくらいの大きな階段がある。


 無駄にでかいなと思いつつ、階段を覗き込んでいると、後ろから来たカスパルに頭を軽く叩かれる。


「こら! 急に大声を出したかと思えば、1人で走り出しやがって。俺らを置いて勝手に動くんじゃない。ダンジョンは階層が変わると一気に強くなったりするんだ。ボスがオーガだった事を考えたら、二階層の雑魚でもかなりの敵になっているはずだ。思ったよりも厄介なダンジョンだぜ…」


 カルパスのお説教を食らって反省をしながらも二階へと階段を降りていく中、後ろにいるシロから何やら視線を感じる。


 セシルも何か言いたげな雰囲気を出していたが、俺も完全には把握してないので俺の想像だけのこの考えをまだみんなに言うわけにはいかない。




「やべえな。二階層からはオークが主力かよ。最悪マロンを迎えに行くどころかこちらが全滅しちまうぞ」


 カスパルの焦る言葉にクレアも不安そうにしている。


 セシルの表情はいつもと変わらないし、シロも呑気にケットシーと話し合っている。


「取り敢えず一回みんなで戦ってみるよ。その後みんなに話す事があるから……だからそんな目で見ないでくれるかな? 」


 おれの言葉にケットシー以外の視線が突き刺さってくる。


 教えたいのは山々なんだけど、まだ自身が無いから言いたく無いのよ……


「……仕方がない。みんな行くぞ! ジルアを弄るのは後でだ! 」


 無駄に上がっていくみんなの戦意を感じながら、俺はみんなと一緒に戦闘に向かうのだった。




 オークが10体がこちらに反応して戦闘態勢をとるが、やはりどこかぎこちない。


 先ず、表情が無表情過ぎる。


 オークは女を見れば、『アレ』をおっ立てて向かってくるとシロがスプリガンとのレベル上げで、会った時の事を教えてくれた。


 それが女性4人もいるのに全く反応がない…不能の可能性も無い事は無いが、全員が同じ訳が無いので怪し過ぎる。


「何これ……これ本当にオークなの? 」


 セシルの動揺する声に、無言で冷静に斧を振るっているカルパスさえ顔に動揺が出ている。


「何か興奮しないオークなんて初めて見たわよ? 」


 矢を放ちながら、呆れた声で言うクレア。


 俺は自分の考えが間違いない事を確信して、シロにある事を命令する。


「シロ! オークを鑑定して見てくれ」


「オークを鑑定するんですか? 分かりましたけど何がおかしいか分かったんですか? 」


 怪訝そうに俺を見るシロだが、俺の言う通り【鑑定】したのだろう……表情が明らかに変わった。


「な、何ですか…これは! 鑑定結果が『オークもどき』と出てますし、このステータス低すぎますよ ⁈ 」


 シロの言葉に唖然とする仲間達。


 俺は(ファイア・アロー)でオークを倒し、魔石を見てみるが魔石の大きさがゴブリンの時と全く変わらない。


「やっぱりそうか……みんな聞いてくれ! このダンジョンは普通じゃない。このダンジョンは……人工的に作られたダンジョンだ! 」


 俺の言葉に絶句するPT。


 ケットシーだけが俺の言葉を聞いても冷静でいてくれる。







「おい! この映像を見ている奴、今からお前の所に行くから反省するなら今のうちだぞ! 」


 俺は壁を指差し、所謂『犯人はお前だ』ポーズをとっている。


「姫、カメラの位置がもう少し左です」


 ケットシーのツッコミが入ったので、若干左へ向きを変える。




 かなり緩くなった空気の中、俺はそのポーズのまま、みんなの白い目の視線を浴び続けるのだった。

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