第58話ゲームをしてるとスマホが熱くなりませんか? 特に最近のゲームに多い気がします

 拍子抜けな敵の行動に思わず顔を見合わせる俺とセシル。


「セシルに聞きたいんだけどダンジョンのモンスターってこんな感じなの? 」


「いえ……普通に徘徊しますし、もっと野生的というか荒々しいはずなんですけど……」


 2人で話し合っていると他の面々が心配していたのかこちらまでやってくる。


 先程行われた戦闘をベテラン2人に話してみるが、2人も困惑気味だ。


「何だそりゃ? 一応生き物なんだからもっと動き回るはずなんだけどな」


「もしかしてゴーレムなのかも? 次の戦闘はみんなで戦って見ましょう」


 2人の助言により次の戦闘は全員で当たる事になったのだが、シロが先程からそわそわしている。


「どうしたシロ? 何か感じるのか?」


 俺の言葉に周りを見渡しながら視線を泳がせるシロ…何かを感じているのは間違いなさそうだ。


「えーと……何と言ったらいいのか。何かに見られているのは間違い無いんですがそれが魔物や人とは違う感じで…気持ち悪いです」


 曖昧なシロの言葉に困る俺だが、他の人達は今のシロの言葉を聞いて納得した様子だ。


「確かに、そう言われれば納得できるな。何か嫌な感じはしていたがそれだったか…」


「森の動物や魔物とは違う感じだから気にはなっていたけど、確かに見られているって感じよね」


「シロちゃんの感覚は凄いわね。よく考えて見たらカメラを向けられた感じによく似ているわ」


 ……おかしいな? 俺は何とも無いんだが……気配察知のレベルの差か? それとも単に俺が鈍感なのか?


「そういう事なら丁度いい妖精がいるから呼んでみるよ。みんな少し離れていてね」


 俺はそう言うと「フェアリーダンス」でも有名なケットシーを召喚する。


 完全に猫の姿なのに二足歩行で歩き、貴族の着るような服とマントにブーツを履いて腰には白い短剣を差し、小さな王冠を被った黒猫は俺を見るなり膝をついて俺の手の甲に軽くキスをする。


「ジルア様のお呼びにより参上しました。このような無粋な場所で残念ではございますが、姫の為に存分にこの力を発揮致しましょう」


 因みに性能はこんな感じだ。




 ケットシー


 コスト3


 猫の王とも呼ばれる妖精。

 身軽な体から繰り出される短剣の腕前に加えて魔法まで操る万能タイプ。

 攻撃力と体力には若干不安は残るが、それでも並みの戦士以上の活躍をする。

 魔法も全ての属性を使えるスーパーキャット。




 俺の良く使っていた妖精だがどんな戦闘にも対応できる為、初見の相手をする時は必ず呼び出す妖精だ。


 相手の嫌がる事を出来るキャラというのは意外と貴重なので、ケットシーに色々な事をさせては相手の情報を良く集めたものだ。


「こんな場所が初めての召喚で悪いね。実は、この場所で何かに見られているようなんだけどそれが『何』なのか見当がつかないんだ。多彩な君なら何とか出来るかなと思って呼んでみたんだけど分かるかな? 」


 俺の言葉にケットシーは考えるような仕草を取るとおもむろに壁に近づくと、その壁に短剣を刺して『何か』を取り出す。


「多分これが皆様がご不快に感じる物でしょう。どうやら特殊な魔法でこの珠から我々を見ていたようですな」


 そう言って可愛い肉球の上に乗せられた小さな珠は確かに薄っすらとだが魔力を感じ取ることが出来る。


「成る程、確かに魔力を感じるね。流石私の信頼するケットシーだ。こんなに早く原因を見つけれるなんて呼んだ甲斐があったよ」


 俺の褒め言葉に髭を若干震わせ、耳をピクピクさせながらも澄ました顔のケットシー。


「あ〜ん。この子もとっても可愛い! ジルアちゃん。こんな子がいるなら最初に教えてよ〜! 」


 いつの間にかケットシーを抱いて頬擦りをしているクレア…俺にはその姿が見えなかったんだが。


「ご、ご婦人。姫の前でこのような真似はやめて下さい。これではまるで愛玩動物の扱いではないですか。私はこう見えても猫の王! 分かって頂けたなら早くこの手を離して下さい」


 ジタバタと暴れるケットシーをものともせずに自分の思うがままに可愛がるクレア……そういや自分も最初はあんな感じに扱われたな。


「ジルア、あの猫は俺みたいな獣人じゃないのか? えらく流暢に喋るし、頭も良さそうなんだが…」


 カルパスにはケットシーをどうも妖精と思えないようだ。


「ああ見えても私より剣の腕は確かだし、魔法も色々使えるよ? 実戦なら私より強いかもね? 」


 俺の言葉に大きな口を開けて呆然とするカルパス……流石に熊だな、歯並びが凄いや。


「ひーめ! 助けてください! この女性人の話を全く聞きませんぞ? 」


 泣きが入ったケットシーを流石に放って置くことが出来なかったので、カルパスと2人でケットシーからクレアを剥がす。




「た、助かりました。この世界の女性は恐ろしいものですな…姫このような世界は危険です。早く元の世界に戻りましょう」


 俺の胸に縋り付き、プルプル震えるケットシー……トラウマにならなければいいが…




「それじゃ、元の隊列に戻ろう。ケットシーはシロと一緒に最後尾で。何かあればケットシーとクレアが入れ替わってね」


 ケットシーが増えたことで隊列を若干変更してこの階層のボスの元へと進んでいく。




 ケットシーが見つけた珠の所為でこちらが向かっているのが分かるのか、何度かゴブリンの群れと戦うことになる。


 しかしゴブリン達の動きが悪く何か不自然な動きの為、前に戦ったゴブリン達よりも楽に倒していく事が出来る。


「どうやらこのダンジョンのゴブリン達は動きが何かおかしいな。連携もせずにただ前に進んで来るしか出来てないし……これだとマロンが帰って来ない理由が分からないんだが」


 冷静に斧でゴブリン達を駆逐するハニカムがぼやきながら前にと進んでいく。


 隣のセシルも冷静にゴブリン達を短剣で仕留めていくので後衛のする事がほとんど無く魔石を拾うだけの状態だ。


「楽でいいですけど何か釈然としません」


 シロが魔石を拾いながらぶつくさ言うが、それはPT全員が思っている事だから我慢して欲しい。


 そんな奇妙な状態でようやくボス部屋の扉の前まで来ることが出来た。




 本当にこんな調子で良いやら……

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