第41話ソシャゲのシナリオも侮れないものが多いですよね。ストーリーが良いのに売れないソシャゲも多けど

 さて、これからタバサ伯爵との会談が始まるわけだが先に聞いておきたい事がある。


「その前にお聞きしたいのですが、私が東の森に住むことについて何か問題はあるでしょうか? 」


 いきなり森に住み着いて問題あると言われても困るしな、この辺はちゃんとしておこう。


「そうですな…我が領地内である事は確かですが、森に住んでいる為に私の庇護を受けているとは言えませんし、何より優秀な冒険者ですからな。その年で銀クラスは中々いないでしょう。私としても他国に行かれるのは問題ですし、そちらの身の危険に関しては手を出せませんが代わりに住むことも問題ない事にしましょう」


 成る程、森に住むなら危険を承知で済むのだから何があっても知らないよ? と言うことか…


「ありがとうございます。これでゆったりと生きていけますわ」


 こちらとて出来ればスローライフと洒落込みたいのだ…ただ、いつの間に銀クラスになっちゃったのかな?


「そう言えば大氾濫後まだギルドには顔を出されて無いのでしたな。大氾濫を収めた貴女にはギルド長からの推薦もあり、銀クラスに昇格したとギルド長より聞いています。後で冒険者ギルドに寄ると良いでしょう」


 いつの間にか一流冒険者にされてました…ギルド長のテンカさんに後でじっくりと話を聞こう。


「分かりましたわ。では盗賊ギルドに関してお話があるとか? お聞かせ願えないでしょうか? 」


 俺の言葉に、目を光らせこちらを見つめるタバサ。


「えぇ…何でも盗賊ギルドの長であるセシルに盗賊ギルドの口添えをすると話をした…とか? 」


 確認口調で俺を圧迫して来るタバサ、しかしその程度では俺のお股のガードは崩せんなぁ…


「えぇ、勿論。部下の不始末は自分が背負うという気概に感動いたしましてそのように言った覚えがありますわ」


 口元に扇子を寄せ、笑いながらタバサに返答する。


「貴様、悪党の肩を持つのか? 」


「やはりエルフは人の機微と言うものが分からんのだ」


「所詮は亜人か! 」


「エルフ幼女ペロペロ! 」


 何か一人おかしいのがいるがタバサは何も言ってはこない…こちらの反応を見る為か?


『お黙りなさい! 貴族にも貴族の義務すら守れない者が多いのに己の矜持を守るため己が身を顧みず私に頼ったセシルを侮辱する権利は貴方達にはありません! 」


 扇子を閉めて机を叩く!


 その迫力に偉そうな人達は倒れたり、腰が抜けたりしたようだ…毛玉はお腹を見せて服従のポーズはいいからお座りしておきなさい。


「貴族の義務が守られていないとはどういった意味ですかな? 」


 タバサは表情を変えず、俺の目を見て聞き返す。


「タバサ様、貴方ならお分かりのはず。部下であるトリフ男爵が家族を魔獣に襲われ行方が分からなくなった後、奇妙な行動をとるようになった彼の上司である貴方にならね」


 俺の物言いにタバサも鼻白む。


 そこをすかさず追撃させてもらおう。


「セシルは部下であるブヒルの不可解な動きに対してその行動を調べ、己の責任を感じ、民衆の前でブヒルを撃とうとしたのです! その心意気に感動したからこそ『エルフ』である私が力を貸したという訳です。己の仕事に誇りある行動こそエルフの最も大事とする所、貴方達貴族はそうではないのですか? 」


 正直エルフにこんな考えがあるかどうかは知らない。


 でもここまで言えば分かるはずだ、彼が正当な考えで動いていた事に。


 これで盗賊ギルドの立場が良くなれば良いが…




「そんな事を言っても盗賊ギルドがした事に変わりはありません! だからこそあのようなギルドは潰すべきだ! 」


 偉そうな奴が俺を見て鬼の首を取ったかのように俺に突きつけてくる。


 タバサも少し辟易としている辺り問題の多い人間なのかも知れない。


 俺も溜め息をついてその偉そうな奴に目を向ける。


「どうやらタバサ様は部下に恵まれていないご様子で…街を治めるという事が分かってない方がおられる様子」


 その言葉に絶句する偉そうな方々。


 タバサは大声で笑っている。


「な、何を申す、無礼な! 」


「『私』はタバサ様に盗賊の件で話をしたいと聞かされたからこそここにいるのです。『貴方達』と話す為に来たわけではありません。そちらこそ無礼な! 」


 俺は態と怒るふりをして凶月を呼び出す。


 呼びだした凶月は心得たもので俺の前に立ち、偉そうな奴に睨みを入れる!


「ば、馬鹿な…無詠唱で召喚だと ⁈ 」


 それだけ言うと這いずりながらこの部屋を出ようとする…そんな事させる訳ないだろう!


「貴殿らはどうやら『エルフ』というものを分かってないようですね…誇りには誇りを、無礼には『死』が我々の矜持! たとえ人の世の貴族相手だろうと変わらぬと知れ! 」


 俺は(ファイア・アロー)を20本程待機させたまま発動させる。


 業火で作られた矢は獲物を探すかの如く揺ら揺らと動いて俺の周りに現れる。


「「「「ヒィィィィィィィ ! 」」」」


 その場で蹲(うずくま)る男達。


「そこまでにしていただけないかな? ジルア殿。確かにこの者達は不勉強なようだ。『必要悪』というものを何も分かってはいない。しかし、それはこのような者達を呼んでしまった私の不覚とする所、私が謝るのでその魔法を解除しては貰えないか? 」


 そう言うとタバサが頭を下げる。


 俺は手を振り、魔法を解除する。


「次はありませんよ」


 それだけを言って席に座る、シロがお茶のお代わりを勝手に用意してくれたのでそれをご馳走になる。


 因みにシロ以外の他の人達は唖然としたままだ。




「お前達は知らないかも知らんが盗賊ギルドはこの街、いや私の領地に必要不可欠なものだ! 周辺国への警戒や、街中での不穏な動きにの報告、貧困者の多いスラムなどの管理…人の嫌がる仕事をしてくれるからな! お前達がどういう目で彼等を見ていたかは分かった。今日の所はここから出て行け」


 タバサは騎士に目配せをして偉そうな人達を一掃してくれた。


 これで本題に入れるかな ?









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