第40話課金キャラでは服装や性能違いのキャラが増える事が多くなりましたよね。やはり人気キャラは優先されやすい…

 アーバンパレスの領主であるタバサ伯爵の館は、街の中でもかなり北寄りに位置する。


 冒険者ギルドは、ほぼ中央に位置するから領主の館までは多少時間が掛かるわけだが…




「何だあの馬車 ⁈ 王族でも来たのか? 」


「最近噂の隣の国の王族じゃね? 」


「どうやらエルフの姫が乗っているらしいぞ? 」


「あぁ…あの暴走エルフの嬢ちゃんか」


「「「「なるほど! 」」」」




 …何がなるほどなんですかねぇ。


 隣の赤いメイド服を着たシロは、俺の服装チェックに忙しそうだ。


 シロの服はジルア用に作られた『ジルア専用メイド服』と呼ばれており、かなり高級感のある赤いメイド服という訳の分からない物になっている。


「ドラゴンファンタジア」では服は誰でも着れたので、シロに試してもらったら、シロの大きさにぴったりと合うように服が変化した…シロは遠い目をして服を見ていたが。


「相変わらずご主人が、不条理の塊である事を知らされた気分です」


 俺もそう思う。




「服の方は問題ないようですが、何かアクセントになる小道具が欲しいですね。団扇だと合いそうにないし何か無いかな? 」


 シロが困っているようなので、昔使っていた扇子を出してみる、これは和服の小道具として送られて来た物だが、漢字を白の扇子に書かれただけの物でシンプルで好きだった。


「おぉ…なんだか、ミステリアスな感じですね。これでいいでしょう! 」


 シロが喜ぶのでこれでいいか…しかし、今の服と合わせたら確かに摩訶不思議状態である。







「ようこそいらっしゃいました! 」


 領主館の門の前に着くと、左右の門番から大きな声で挨拶される。


 馬車の窓越しにあまり下品にならない程度に手を振ってみたが、門番達が倒れていくとは何事か ⁈


 …きっと徹夜明けだったに違いない。


「クレア…想像以上にヤベエぞ…ジルアが手を振っただけで衛兵が失神した」


「今日のジルアちゃんは見るだけでも意識を持っていかれるから大変よね。私も、目が合ったら倒れる自信があるわ! 」


「頼むから、変な醜態を晒さないでくれよ? 」


 馬車の外では不穏な話がされているが、俺は青い毛玉を撫でるのに忙しい。


「駄目ですよ ! 毛がついちゃうじゃ…あれ? ついてない? 」


「この服やシロの着ている服は、基本汚れないようになっているからね」


「どこまで予想外なんですか…」


 外を見るとそろそろ館に着きそうだ。








 カスパル達が館の前に馬車を止めると、馬車の扉の前まで来る。


 カスパルとクレアが、一人ずつ扉の左右につき、扉を開ける。


 すると、自動的に扉の下から足場が出てきて馬車から降りやすい形となってくれる…


 へぇ、こんな機能もあったのか。


 周りが騒めくのも構わず、シロが先に出て俺に手を差し出す。


 それって護衛騎士とかの仕事じゃないかなと思いつつ、その手を借りてゆっくりと馬車を降りる。


 完全に混乱している周りの人間を、出来るだけ気にしないようにする為、左手で扇子を広げ口元を隠す。




 今日、この日に使ったドレスは純白に金と銀であしらえたドレスである。


 フリルが下品にならない程度にあしらわれており、その生地は金箔や銀箔をまぶしたように輝いている。


 ドレスの上からベールのようなとても薄い布を羽織っており、作者曰く『エルフ幼女の天使を作りたかった』だそうだ…


 指輪や首飾りはシンプルな金の物にエメラルドを付けている。


 足の方のスカート部分はスケスケに近く、ハイニーソのような物を履いている。


 股間あたりはしっかり見えないようにミニスカ部分は普通の生地だよ !


 足先からはガラスの靴だし、頭には金で作られたティアラ…


 この製作者は余程、煩悩が溜まっていたに違いない。




 この服の時の写真は一番の売れ行きだったらしいけどね…






「これは…失礼した、ようこそ我が屋敷へ。ジルア・オシト殿。私がこの屋敷の主人であり、アーバンパレスの領主でもあるタバサ・グルーデンと言う。伯爵の地位を国から頂いてはいるが、このような辺境の地の代官だ。気軽にタバサと呼んで頂きたい」


 三十台前半の若い領主は、こちらを見ながら気軽に話しかけて来る…


 でも本気でそんな事思ってないよね? 周りの偉そうな人が、こっちを怯える目で見ているもの…


 それに『ジルア・オシト』とフルネームで呼ばれた。


 この名前、実はちゃんと理由があるのだが俺はこの世界では二人にしか名乗っていないはず…


 冒険者ギルドから漏れたのかな ?


「お招きいただき感謝しますわタバサ様。そう呼んで宜しいでしょうか? 」


 扇子を外し、問いかける俺の言葉に頷くタバサ。


 何人かまた倒れているが熱中症かな ?


「そう呼んでもらって構わない。それにしても声まで美しいとは…いや、いかんな。ご婦人をこんな所で立たせていては私の威厳にも関わる。ジルア殿、良ければこの後話し合うための部屋にまで案内したいが手をお借りしても宜しいかな? 」


 よく分からないのでシロの方をチラリと見ると頷くので少しだけ注文をつけてみる。


「この私のメイドと護衛の二人が同じ場所にいられるならお受け致しますが? 」


 俺の言葉にシロと二人が微妙に固まるが、俺としてはこれが最低ラインだ。


 三人を連れて行くのが駄目だと言われたら即帰るつもりだしな…


 隣でお座りしている毛玉は…


 役に立つのかな ?


「勿論構いませんとも! 女性を一人にするなんてとんでもない。ささっ! 」


 そう言うとタバサは俺の手を取りゆっくりとエスコートをするように館へと向かっていった。







「ヒャン! ヒャン! 」


 足元を戯れつくように周りながら付いて来る青い毛玉…


 皆さんどうもすいません。


 廊下で控える執事やメイドさんが、頭を下げながらもこちらを見ているのを居た堪れない気持ちでタバサに案内されているこの俺…どうしてこうなった?


 それにしても毛玉に何も言ってこないのは、ある程度この子の事を知っていると考えていいだろう…


 まぁ実害は無いから、放って置かれているのかも知れないが。




 部屋に案内されると、椅子を用意されてわざわざ伯爵自身が俺の座るのを手伝ってくれた。


 部屋の中には俺達の他に、タバサと執事が一人にメイドが二名、偉そうな人が五人に部屋の前の扉に騎士が二名と大所帯だ。


 お茶を用意されたので、昨日習った作法を必死に思い出しながらお茶を頂く。


 そのお茶を飲み終えた後に、タバサの方から話しかけられる。


「ジルア殿、実は盗賊ギルドの件で話を聞きたい事があるのだが…」




 どうやらここからが本番のようだ。












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