第14話無課金でする場合貰ったボーナスで何を引くか考えるのが楽しよね。引くまでは

 ギルドマスターの部屋の中は沈黙に包まれている。

 シロは相変わらず悠々自適で机の茶菓子を食べている。

 テンカさんは頭を押さえて問題のステータスを見ている。

 受付嬢は私を膝に乗せ頭を撫でている。


「こんな目にあったのだからご褒美が必要です。冒険者ギルドには癒しが足りないのです!」


 そんな事を言われたら黙って座っておくしかない。

 うちのシロが申し訳ありません。


「ジルア…お前貧乏くじを引いちまったな。こりゃ面倒事しか起きないぞ」


 それは俺も分かっている。

 亡国の王女が致命的だ。

 どこから暗殺者が来てもおかしくなさそうだ。


「テンカさん。護衛の人は引かせて。これは私の問題だ。私が何とかするよ。」


 俺はキリリと顔を引き締めテンカに言う。

 シロは俺の奴隷だ。俺が何とかしよう。


「何とかって…今はカルパスもクレアも戻って来てないしマロンも護衛任務でこの街に居ねえ。お前さんも狙われる可能性が高いのにこんなの連れてたらステーキを飢えた犬の前に置くようなもんだ…悪い事は言わねえ。そいつは手放しな」


 テンカのそんな言葉にもシロは何も言わない。

 今度はお茶まで勝手に入れだした…綺麗な動作だな礼儀作法ってすげー。


「あぁ。そう言えば紹介してなかったね。凶月出ろ!」


 俺の言葉と共に足元の影からブラッディウルフの凶月が現れる。

 2mを越す巨大な狼に受付嬢は腰を抜かし、シロは机の下に入りテンカは武器に手をかける…シロはブレないなぁ。

 ちなみにピクシーファミリーはお菓子をあげて帰ってもらった。

 どうやら一回召喚したら返すまでこの世界にいるようだ。


「し、召喚獣だと⁈そんなスキルまで持ってるのかよ!」


 召喚スキルでは無く無課金ゲームってスキルだけどね。

 黙っていたらそう見えるから黙っておこう。

 凶月にシロを任せ俺はシロのステータスの考察をテンカさんと始める。


「名前の?は分かるんだけど山羊族?が分からないんだよね」


「多分複合種ってやつだ。山羊以外にも他の獣人の血が入っているんだろう」


「半獣人と獣人の違いもそんな感じ?」


「そうだ。半獣人は人との混血が多く獣人は混じりっ気無しって感じだ。ただ今は総称で獣人と呼ばれているがな」


「不正奴隷は問題ないかな?」


「まぁよくある事だしな。そうだ!後でここでそいつに職業に就けとけ。奴隷じゃ補正がつかないからな」


「ここで職業に就けるの⁈」


『就きたくないんですけどねぇ』


「フィリのやつ…そうだ。フィリはお前さんが既に職業に就いてるから言わなかったのかも知れんがここで自分に選択できる職業に就ける。後は教会でも出来るからな」


「この子の能力ステータスどう思う?」


「人間の成人平均は10なんだが…素早い肉盾でいけそうだな。最悪囮にすればいい。職業の補正無しだと99までしか上がらんから職業につけば色々変わるかもな。ちなみに99は鉄クラスの冒険者の得意な分野のステータスだ」


『肉盾なんて酷い!でも感じちゃう!』


「スキルもやばいよね?」


「どうやったらレベル10まで上がるんだよ⁈どんだけ命狙われたらこうなるんだよ⁈」


『命を狙われてたのは三年前ぐらい迄ですねぇ』


「称号は…もういいや」


「そうだな…触れない方がいいな」


『いやいや、そこが大事でしょ?』


 何か途中から会話に入ってきたシロにジト目を向ける。平然とするシロに仕方なく話を振る」


「じゃあどうしてシロはこうなったのか教えてくれる?」


「おい待て!俺たちまで巻き込むな!」


「私まで巻き込まないで⁈」


 シロはそんなテンカさんと受付嬢を無視して話し始める。

 シロはこの大陸の東の最果てにあった国シドリアに第二王女として生まれたそうだ。

 本人曰く農業が中心で緩い性格の国だったらしい。

 そのシドリアがシロが六歳の時、隣国のトラヴェーズ帝国に攻められシロ以外の王家の獣人は殺され住民も獣人は皆殺しにされたそうだ。

 残ったのは人間と半獣人だけだったらしい。

 シロは乳母の知り合いの奴隷商人に引き取られ奴隷となってこの国まで3年をかけ旅を続けていた。

 この国で乳母と奴隷商人が暗殺者に襲われて死亡。

 そしてそれから独り身で3年は色々な街を周り娼館などで下働きをしていた所をこの街の人攫いに捕まったのだと言う。


「娼館で掃除の仕事をしていた時に、人攫いに首の後ろの奴隷紋を見られましてね。捕まったのはいいけどほら、私言うこと聞かないし、働かないから鞭で叩かれるわ飯抜きにされるわ大変でしたよ」


「言う事聞かないって奴隷紋で無理矢理どうにでもなるだろう?」


 テンカがいらない事に気がついた。

 それ、俺は多分理由が分かるんだよな。

 でもこれがバレたら俺も大変になるんだよな。


「それはご主人なら知っているはずなので聞いてみては?」


 シロめ!こちらに振りやがった。二人の視線に耐えきれず俺は予想を話す。


「私はここに来るまで奴隷制度自体知りませんでした。だからここからは予想になりますよ?シロは暗殺者に襲われた前後で奴隷契約が変更されてる可能性があります。理由は独り身で三年間旅を出来たからです。そして今、私は主人としての契約がなされてません。シロを攫った男達にも主人として契約している人はいなかったでしょう。何故なら先程話していた通り主人なら奴隷紋で操れますから。そこから推測すると…多分自分自身を主人として奴隷契約してるのではと推測できるのですか…」


 俺はシロに視線を戻す。

 俺は主人が奴隷を操れるという事を知らなかった。

 それにシロが何故か俺の奴隷だというマロンさんの言葉が分からなかった。

 多分マロンさんは俺が男から主人の証である何かを奪ったと勘違いしたのだ。そう考えると主人には奴隷を操る証がある。多分それが…


「ご主人は奴隷の事全く知らなかったんで丁度良かったんてますけどね…そうです。私は今この人と奴隷契約を結んでいません。私は私の奴隷です。」


 テンカが武器を抜きシロの首に当てる。

 受付嬢もシロの心臓辺りにナイフを突きつけている。

 俺は…(ウォータ・アロー)を二人の後ろに準備している。


「どういうつもりだジルア?事と次第ではお前も許さんぞ?」


「そうですよ。ジルアちゃん。この子は危ない、危な過ぎます。自分を主人にして奴隷契約を成功させるなんて普通じゃありえません」


 どうやら二人の殺意は本物だ。

 さて…どうしよう。

 俺の転移人生波乱万丈過ぎませんかね。

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