第11話課金ゲームは栄枯盛衰の象徴だね。金の切れ目が縁の切れ目とも言うけど
闇夜に赤く光る目を持つ狼に乗り敵の所まで走り続ける。
凶月の嗅覚により犯人の場所はどうやら分かりそうである。
どうやら向かっているのは一軒の酒場みたいだ。
近くまで来るとスピードが弱まった。
これからは俺のターンと行こう。
中に入ると酒の臭いが酷い。
中にいた全員が俺を見て驚いているが俺の知ったこっちゃない。
俺は凶月を連れてカウンターまで行く。
「嬢ちゃん。ここは酒場だ。酒が飲めねえガキは来ちゃいけないんだ」
笑いながら俺を追い出そうとするバーテンダーを足を払って転がす。
レジェンドエルフはエルフの中でも体力的には最高レベルだ。
流石にオーガやジャイアントには負けるがそこらの人間など相手では無い。
「いってえ!何するんだこのガキ!」
立ち上がろうとするバーテンダーの胸を蹴飛ばし部屋の奥まで吹き飛ばす。
「凶月。どいつからあいつらの臭いがする?」
凶月は鼻をしかめながらもある人物の所までゆっくりと歩いていく。
「そうか…貴様が元凶か」
俺は凶月のまえにいる太りきった男を見て喜びの笑みを浮かべる。
男は俺の顔を見て青褪めるが俺が一人なのを見ていやらしい笑みを浮かべる。
「まさかエルフからこっちに来るとはな。楽な仕事になったもんだ。手前ら、このガキを捕まえろ!金蔓が向こうから来たんだ。さっさと奴隷にしてしまえ!」
部屋の中の全員が俺を囲むようにして間合いを詰めて来る。
凶月は唸りをあげ威嚇するが流石に一匹では向こうは引かない。
「それがお前の遺言か?」
俺はショートソードを腰ダメに構え中級剣術の(サークル・ブレイド)を発動する。
俺が剣を振り払い一回転すると円状に剣圧が生じサークル状に広がっていく。
台風のような剣圧は周り全てを吹き飛ばし酒場の壁すらぶち抜いていく!
「周りに建物が無くて良かったな」
俺は予想以上の威力に驚きながらもまだ生きている人間が多いため他の手段をとらせてもらう。
「フェアリーダンス」より「ピクシーファミリー」を召喚する。
素早さによる回避盾役や状態異常での足止めを出来る優秀な妖精だ。
ピクシーファミリー
コスト1
攻撃力は低いが複数のピクシーによる臨時の盾役、弱い状態異常による足止めなど様々な支援を行える。
「きたよきたよますたー」
「なにすればいいの?」
「おなかすいたー」
「今寝転がっている奴らにいたずらしてやれ。おやつは仕事が終わってからだ。歩合制だから頑張って働け。」
「おかしだいすき。いたずらするね」
「いたずらだいすき。やりほうだい」
「くっきーかすてらしゆーくりーむ」
一体少し不安な奴がいるが多分何とかなるだろう。
様々な状態異常を受けて盗賊達は声を上げることが出来ない。
「さて、お前には聞きたい事がある。喋ってくれるよな?」
でっぷりとした男は俺を睨みつけてくる。
俺はそれが気に入らず凶月に合図する。
「凶月。こいつを痛めつけろ」
俺の無慈悲な命令により男は腕を噛まれ骨を砕かれる。
男の悲鳴で周りの男達は震えあがる。
俺は手を挙げると凶月は動きを止める。
ゲーム通りの忠実さだ、後で骨をやろう。
(ヒール)を掛けて跡が残らないほど回復した男に俺はもう一度聞き直す。
「さぁ知ってる事を話してくれないか?」
口のあたりが血塗れの凶月を見て男は洗いざらい喋ってくれた。
どうやら街でカルパスの肩に乗ったエルフとして有名な俺を奴隷しようとしていたらしい。
俺の他にも既に奴隷の子がいるそうなのでこの場はピクシーファミリーに任せて男を連れて店の地下にある牢獄に行く。
中には鞭で打たれ傷だらけの半獣人の子供が気絶している。
俺はかっとなり男の腹を蹴飛ばして動けなくすると檻の鍵を(ストーン・アロー)で壊して中に入る。
すぐさま(ヒール)を使い怪我を治す。
俺より少し大きいぐらいか?体がガリガリだから小さく見えるがそんな感じだろう。
体から異臭がするのは長い間体を洗ってないからか?(クリア)を使い綺麗にする。黒かった髪は白へと変わり浅黒い肌は小麦色へと健康的になる。
イベントリから替えの服を取り着替えさせる…この子女の子だ。
パッツンパッツンになったのは許して欲しい。
こちとらペタンコエルフなんや…
半獣人だと思ったのは、頭に巻いた角があるのと尻尾があったからだ。意識は未だ戻らないようなので両手で持って運んでいく。
「凶月はそいつを運んで」
俺がそう言うと悲しそうな顔で男の首襟を噛んで引きずっている。
仕方ないね。
「ジルア!大丈夫なの?返事をしなさい!」
女口調の男の怒声が聞こえる。
マロンさんかな?地下から上がってくるとピクシー達が飛んできた。
「あのひとこわいのー」
「ひと?ひとなの?」
「あれはたべれない」
散々な言われようである。
マロンさん可哀想。
「よかった無事だったのね…その子は?」
俺の無事を喜んでくれたマロンさんだが俺の両手の中の子を見て眉を顰める。
「こいつらが見つけた奴隷の子。鞭で打たれた跡もあった。凶月が咥えているのが主犯格」
それを聞いた瞬間俺の視界からマロンさんが消える。
「キャゥゥン!」と聞こえた音の方向を見れば尻尾を股に挟んだ凶月と片手で重たそうな男を釣り上げているマロンさんがいた…凶月の悲鳴なんて初めて聞いたぞ…
「お前…奴隷の子を攫っただと?子供の奴隷なんておかしいとは思わなかったのか?…」
俯いたマロンさんの声が響いてくる。
男はそれを見て嘲笑う。
「ケダモノの子なんざ奴隷でもいいじゃねえか!それよりお前はあのエルフが欲しく無いのか?あれは高く売れそうだぞ!」
つくづく腐った野郎である。
殺そうかとあちらに向かおうとした瞬間「ここにいたら死ぬ」レベルの危険察知の警報が響き渡る。
「お前…死ぬよりいいから死んだほうがいいのレベルにしてやるよ!」
マロンさんの体から黄金色のオーラが間欠泉のように湧き上がる。
筋肉がボコボコと音を立てている。
その体から放たれたデコピンは男に一切のダメージを与えていない。
ただ男の顎から下は動かなくなった…
「ふぁふぁふぁふぁ?ふぁふぁ!」
下顎と舌が動かないから喋れない。
男は涙を流すことしか出来ない。
「手前は殺すよりこのまま生かしておいてやるよ。死なないようにな!」
鬼の笑う顔を見た。あれはヤバイ、ヤバ…
………チョロチョロ……チョロ…
…ふええええ、あんな顔見たら仕方ないんじゃ!
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