第9話課金してくれる人がいるから無課金の人も遊べる。これが真理だね

 マロンさんの訓練を受け夕暮れの空の下、俺は冒険者ギルドにマロンさん達と戻る。

 ギルドの中にはカルパスさんとクレアさんは居ないようだ。


「フィリちゃん。カルパス達はどうしたの?」


 マロンさんが俺の聞きたい事を聞いてくれる。

 フィリさんはこちらを見ると申し訳なさそうな声で俺に話してくれた。


「実は…急な指名依頼がお二人に入りまして〜今現在お二人はこの街には居ません。代わりに私がジルアちゃんを預かりますのでご安心ください〜」


 いつものにへら顔に戻ったフィリさんだが俺の表情は硬くなる。


「フィリさんにそんなご迷惑をかけれませんよ。自分で宿屋を借りて泊まります。」


 そう言ってこの話を切ろうとしたのだがフィリさんの胸に顔を挟まれて動けなくなる。


「大丈夫ですよ〜痛くはしませんから〜一緒にお風呂も入りましょうね〜」


 …やばい!貞操の危機だ!俺は目でマロンさんに助けを求めるがマロンさんはいい笑顔で首を横に降る。


「裏切ったな!俺を裏切ったんだなマロン!」


「仕方ないのよ…ここの冒険者は皆んな彼女には逆らえないのよ」


 そんな茶番があったがもう一つの仕事を思い出してフィリさんに報告する。


「フィリさん。ゴブリン退治のクエスト、完了の確認をおねがいしたいんですが…」


 俺はそう言うと依頼書とゴブリンの魔石をを100個程渡すとフィリさんの完了の確認をお願いする。


「こ、これは…マロン手伝ったの?」


「いいえ。ジルアちゃんが一人で倒しているのを他の護衛達も見ているわ」


 蒼褪めながら確認するフィリさんと淡々と答えるマロンさん。

 周りの冒険者達もざわめき始める…ゴブリンは楽だったんだ。

 焼けたゴブリンの臭いにゴブリンが寄って来るからすぐに100を超えちゃったんだ。

 その後のマロンさんとの追いかけっこの方が何倍もキツかったなぁ…


「此処にいるみんなも覚えていた方が良いわよ?無詠唱で追尾して来る炎の矢がどれだけ怖いかを…ゴブリンが骨すら残らず魔石だけ残っちゃうぐらいだからね。」


 辺りがしんと静まりかえる。…いや、威力の調整が中々出来ないのよ。

 追尾は…多分ゲームでも外れる事が無かったからじゃないかな?ゲームじゃ無効化する奴多かったし。


「わ、分かったわ。イタズラはしないようにしておくわ」


 フィリさんがガタガタと揺れながら報酬を持って来てくれた。

 金貨一枚に銀貨十八枚、俺は銀貨だけ取ると金貨をマロンさんに渡そうとする。

 しかし、マロンさんは戸惑いながらも受け取らない。


「駄目よ?今回は偶々お手伝いしただけなんだから。そんなもの貰えないわ」


「私は命を救われた。私の命の価値を受け取ってくれ」


 今回何も知らなければ今頃俺は奴隷になっていたかも知れない。それ程危うかったのだ。それなりのお礼は必要だ。


「だったら…」


 マロンさんから小声で提案される。これは…恥ずかしいが仕方がないか。




 ………チュッ♪


「うふふふ。はい、ありがとね」


 …恥ずかしいから勘弁してくれ。ほっぺにチュってこんなに恥ずかしいのかよ。



 …周りの様子がおかしい?ってか怒りのオーラがこの冒険者ギルドから噴き上がっている⁈


「マローーーーン!手前やりやがったな!」


「ジルアちゃんのチュウ、ジルアちゃんのチュウ、ジルアちゃんのチュウ…」


「「「「某達も護衛してたのでござる!某達にもチュウを!」」」


 …あかん、これはあかん。

 冒険者ギルドがどこかの某プロレスリング見たいになっとる。

 ブツブツ呟いているフィリを捕まえて俺は冒険者ギルドから逃げていく。

 フィリに家の場所を聞きながらフィリを頭に乗せて運ぶ姿は街の噂になったと後で冒険者達に教えてもらった。




「もう、ジルアちゃんたら積極的なんだから、お姉さん恥ずかしいな〜」


 手を頰に当てくねくねしているフィリさんにチョップをかまし、フィリさんの部屋に入ることにする。

 フィリさんは冒険者ギルドの借家に部屋を借りているらしく日本でいう3LDKの間取りの部屋を借りている。

 部屋に入ると女性らしい…女性らしさどこいった⁈いきなり酒の瓶が転がっていた!


「ごめんね〜散らかっていて〜」


 フィリさんは気にすることなく瓶を蹴りながら中に入って行く。

 最初は台所かな?台所に入った途端、異臭がする。これ何か腐ってる⁈


「ごめんね〜時間が無くて台所は使ってないの〜」


 …使っていないとかそんなレベルでは無い気がする…


 次の部屋は…普通だな。意外だ、もっとおどろおどろしい生物まで出てくるのかと思っていた。


「普段は残った仕事を持ち帰ってしてるからね〜ここだけは綺麗なの〜」


 仕事は出来る女なんですね。

 分かります。


「お風呂場も綺麗だよ〜」


 確かに綺麗ですね、風呂場にマットとか何に使うんですかねぇ。

 トイレもスライムトイレか…ん?スライム…使えるか?


「最後の部屋は寝室だよ〜ここで一緒に寝ようね〜」


 灯りが既にエロいんですが…この猫娘発情期なのかな?男の頃だったら堪らなかっただろうな。

 今は反応するものが無いけどな!


「じゃあ、もう少ししたらご飯食べに行こうか?美味しい所があるんだよ〜」


「じゃあ時間があるんだね。少し試したい事があるから試して見るね」


 俺はそう言うと「パズルスライム」のランク1のスライムからあるスライムを選択し召喚する。


「ぼよ〜ん」


 俺の召喚に応じてバスケットボール程の大きさの青いスライムが現れる。

 真ん丸のスライムなので水風船みたいだ。


「な、何なんですか〜それ?一体何時呼んだんですか〜?」


 パニクるフィリさんを置いておき、そのスライムを片手で持つ。

 赤い線が俺の目には見えるようになり、スライムを投げた後の未来図を見せてくれる。

 成る程、ここに投げれば部屋全部を消せるか…俺はその線に合わせ全力投球する!


「はわわわわ。部屋がスライムに犯される〜」


 馬鹿なフィリさんの叫びは無視して俺の予想する結果になるのか俺は確認しなければならない。




 ランク1


 イレースライム


 特定の障害物を1種類消すことが出来る。敵にダメージを与える事は出来ない。




 このスライムに「ゴミ」を障害物と認識させたらどうなるか?


「ぼよよよよよぼよよよぼよよ〜ん」


 台所の中を跳ねまわり、ゴミというゴミを消していくイレースライム!最後の跳ね具合で俺の手に戻ってきたスライムは満足そうだ。


「台所が綺麗になってる⁇」


 お掃除完了!次は玄関だ!












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る