第8話大体イベントって時期が重なるよね。複数のゲームしてる人は時間に追われて大変だよね

 生活魔法も手に入れた事で毎日綺麗に保てる。

 元日本人としては譲れない所だっただけに気持ちも急上昇だ。

 だから二人とも俺を撫で回すのを止めてくれませんかね。


「うちの娘は本当に賢いなぁ」


「私の娘だから当然よ!


 食堂でこんな状態は晒しプレイなんですがねぇ。

 ある程度時間が経つと落ち着いたので冒険者ギルドに行くことにする。

 カルパスとクレアの間で両手を繋いでな!




「二人とも共まるで夫婦のようですね〜そんな二人に指名依頼です〜」


 フィリが二人に封筒を渡している。

 裏の蝋で封印された紋章を見て顔色を変える。

 二人はフィリと奥の部屋に入っていった。

 内密な話かな?俺はクエスト依頼の掲示版を見に筋肉塗れの中に行かなくてならない。さてどうしよう。


「あら?ジルアちゃんじゃない?一人でどうしたの?」


 口調は女性だか見た目は筋肉ムキムキの男から声がかかる。


「確か…マロンさんでしたっけ?」


 昨日お菓子をいっぱいくれたから覚えているのもあるがその風体が異様だったので覚えたのも事実だ。


「あら?覚えていてくれたの?嬉しいわね」


 そう言って優しく頭を撫でてくる。

 気遣いの出来るオカマさんだ。


「それで掲示板を見てたようだけどどうしたの?」


 マロンさんは屈んで俺の目線で話してくれる。

 普通の子供なら泣き出すな…


「依頼を受けようかと思ったんだけど人が多いからどうしようかなって」


 悩んでいた事を素直に話すとマロンさんがいきなり肩車をしてくれる。

 マロンの背丈は180cmを超えているから掲示板が一気に見やすくなった。


「マロンがジルアちゃんに肩車だと!」


「しまった、そんな手があったか!」


「俺もエルフっ子に肩車したいな…」


 色々な声が聞こえるが、今の俺は掲示板に夢中だ。

 そして目当てのクエストを見つける。


「マロンさん。掲示板までお願い。」


「分かったわ。行くわよ!」


 マロンさんが怒涛の勢いで掲示板まで道を作る。

 前にいる冒険者は跳ね飛ばされているが多分大丈夫だろう。


「着いたわよ!良いのがあったの?」


「うん。これをするつもりー」


 俺が取ったクエストはこんな依頼だった。




 ゴブリン退治


 銅クラス推奨


 ゴブリンの退治をお願いします。

 ゴブリンの魔石1つにつき銅貨十枚になります。

 ゴブリンの死体は出来るだけ処理しましょう。


 フィリより




 なんか間の抜けた依頼書だがゴブリン退治は冒険者の基本だ。

 これで俺の実力も試せるしな!


「駄目よ!そんな危険な事!ここにいれば他の冒険者が勝手に魔石を持って来てくれるわ!」


 本当に持って来られそうだからやめて下さい。

 悲痛な顔で心配してくれるマロンさんに真剣な顔で自分の意見を言う。


「守られているだけじゃきっと何かあった時絶対後悔すると思う。お、私は私の力で生きていかないとこの先生きていけないと思うんだ…このままだとヒモになりそうだし」


 俺の言葉にマロンさんが涙を流す。

 周りの冒険者達も大泣きだ。

 解せぬ、俺はフィリさん以外の受付嬢に依頼書を渡し受注印を貰う。


「分かったわ。頑張ってくるのよ!」


 その声に背中を向けたまま右手の親指を立てて冒険者ギルドを出る。






 そして、気まずそうに帰ってくる。


「ゴブリンってどの辺にいるの?」


 情報収集は大事である。

 結局マロンさんが同行してくれる事になった。




「ゴブリンは基本何でも食べる雑食よ。繁殖力が高いから街の外なら何処でも見かけるわ。力は大した事がないけど武器を持っているから注意が必要ね。あと性欲も強くてそっちも何でも食べちゃうわよ。」


 貴重なご意見ありがとうございます。

 俺は頷きながら周りを警戒する。

 ジルアは野外用索敵スキルはかなり低く素人と対して代わりがないはずだ。

 気を抜くとすぐさまピンチだな。


「いた!」


 100m程離れた所に下を向いて何かを取っているような感じのゴブリンを見つける。

(ファイア・アロー)を単発で念じ、ゴブリンをターゲットする。

 檻から解き放たれたようにゴブリン目掛け突き進む炎の矢。


「ズガーーン!」


 着弾と同時に爆発するとゴブリンは声も出せずに絶命した。


「え、えげつないわね。ゴブリン相手にあの火力は要らないと思うわよ。魔力は大丈夫なの?」


 引き攣る顔のマロンさんに問題無いと首肯する。

 レジェンドエルフのジルアはMPが2000を超える。

 アロー系の消費MPは一本につきMP1消費だ、問題無い。


「とんでもないルーキーね。でも油断すると…こうよ?」


 目も止まらぬ速さで短剣を俺の後ろの男の額に命中させるマロンさん。

 俺は全く気付かず後ろに額に短剣が刺さっている死体が出来た事に驚いてしまった!








 ………チョロチョロ………







 …パンツお代わりお願いします。




 泣きながらパンツを履き替える俺にマロンさんは微笑みながら俺を諭してくれる。


「ジルアちゃんは確かに強いわ。でも強いだけじゃ生き残れないの。もっと色々考えて行動しないとね。街でギルドを出た時からこの男は付いてきていたわ。きっと人攫いの一味ね。あら?傭兵ギルドのカード持ちか。裏社会のどの部署が手を出してきたのかしら…楽しみだわ…そうそう話が逸れたけどこんな事は日常茶飯事だから今日が特別だとか思っちゃ駄目よ?冒険者は基本自己責任だから。持ち物は碌なものが無いわね…私が怖い?冒険者辞めちゃう?」


 笑いながら死体を漁り俺に問い掛けてくるマロンさん。

 確かにそれは怖かったが俺は涙を拭いマロンさんの目を見て首を横に降る。

 確かにまだまだこの世界を舐めていたようだ。

 俺が基本的に弱い人間だった事を忘れていた。

 俺はもう一度考えを直さなくてはいけない。

 濡れたパンツを握りしめ俺は覚悟をもう一度するのであった。




「そのパンツは早く洗いなさいね。染みになっちゃうわよ?」


 そういう言葉は覚悟を決めている時に言わないで下さい、マロンさん。

 クリアをパンツに掛け、冒険者としての心構えを教えてもらいながら俺はゴブリンを狩り続け、夕方になるまでマロンさんの教えを受けて冒険者としての生き方を教わるのであった。


「因みにあと五人ほどジルアちゃんを護衛しているからね」


 …こわっ!怖すぎるわ!









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