第7話課金ゲームの育成って課金を前提に考えられているよね?

「知らない天井だ」


 そりゃそうである。

 異世界の高級宿屋なんだから。

 一人突っ込みを終えると起き上がる。

 この体は目覚めが良くて助かる。

 前の体は寝起きが酷かったからな。

 そして尿意が来る…ついに来たか!実は未だ異世界のトイレには入ってなかった。

 これから初めての異世界トイレが始まる。

 昨日教えてもらったトイレに入る、臭いは殆どしないな。

 流石高級宿屋、便座が少し大きいが気をつけたら大丈夫だろう。


 ………チョロロロロ………


 うん問題無い。

 乾燥された葉っぱがあるがこれが紙の代わりだろう。

 きちんと拭いて外に出る。

 流す機能は無いが中にスライムがいて分解するらしい。

 ファンタジー万歳!


 ベッドに戻り普通着に着替える。

 昨日はいつの間にかだぼたぼのセーターのようなものを着せられていた。

 旅の服にクロークを着て、魔法の鎖帷子を着る。

 服の上に直接着ないのは服を傷めない為もあるが元々こう着ていたからである。

 その上にレザーアーマを付ける。

 最後に魔法のマントで完了だ!…腰にショートソードを忘れてた。


 これだけ着ても重く感じない。

 レジェンドエルフの体の性能がいいのか装備が軽いのか詳しくは分からない。

 さて、カルパスさんを起こしにいこう。


 隣の部屋の前に着くとドアを軽く叩く。

 しばらくしても反応なし。

 仕方がないので強めに叩く!


「…誰だー?…ジルアか。視線に入らないんで気付けなかった。悪いな」


 カルパスさんはそう言うと中で顔を洗い着替えている。

 熊の体はモフモフだな。

 知らない間に体が勝手にカルパスさんの体に抱きついた。

 うーん、モフモフ。


「なんだぁ?親が恋しいのか?ほら、さっさといくぞ」


 胸に抱えられて外に出る。

 肩だと天井に当たりそうだから仕方がない。

 下に降りると食堂がある。

 既に朝食を取っている人がちらほらいる。

 カルパスさんが料理を頼み、それを食べる。

 どんな料理があるか知らないのでカルパスさんにお任せだ。

 パンにスープに肉団子、考えてみたら昨日はお菓子しか食べてないぞ?無駄に低コストだなこの体。


 一人前を何とか食べきる。

 思った以上に多かった。

 満腹な状態で少し休みたいがカスパルさんと行きたい所があるのでそちらに向かおう。


「今のお前さんは目立つからな。これでも被っておけ、多少は分かりにくくなる。」


 そう言って被せられた猫耳の帽子は俺の長く大きい耳を隠してくれた。


「カスパルさん、ありがとね」


 お礼をいって外に出る。

 俯き加減なカスパルに手を引かれ向かうはこの街の雑貨屋だ。


「これとこれとこれをくださいな」


 俺が欲しかった魔法の書を探す。

 生活魔法の本がどうしても欲しかったのだ。

 覚えられるかどうかは分からないが銀貨5枚で買えるなら後学の為、研究した方がいいだろう。

 この辺は課金ゲームの限界だ。課金ゲームに生活魔法なんて必要ないしね。

 他には予備の服と下着だな。パンツは多めに買っておこう。

 テンカさんに貰ったお金で足りるかなぁ?


「あー金なら出さなくて良いぞ。俺とクレアで出すから」


「いや、それは駄目でしょう。自分で出来る事は自分でしないと」


『ちっさいのにしっかりした子だねぇ少し負けてあげるよ』


「ありがとーこれでやっとまともな生活が出来る…」


「お前、無理すんなよ?今持ってる金が全財産だろ?クレアや俺をもっと頼って良いんだぞ?」


「…二人とも優しいから…これから一人で生きていかないといけないし…」


『嬢ちゃん、半額で良いや!持ってけドロボー!』


 何か雑貨屋のおっちゃんが泣きながら負けてくれた。

 解せぬ。因みにテンカさんからは金貨三枚も貰っていました 。

 日本円で30万ぐらいの価値みたいだ。

 ヤクザの治療費回収みたいだな…


「そういや、ジルアは背負い袋みたいな物は持たないのか?冒険者してると必要になるぞ」


 カスパルさんが不安そうな顔でこちらを見ている。

 ふっふっふっ、今こそ微チートを見せてやる!


「こんな感じて荷物は持てるから大丈夫だよ」


 そう言って手に持った荷物を「イベントリ」に入れる。


「はぁぁぁあ?何だそりゃ?魔法か?」


 カスパルさんが大口を開けて驚いている。

「ドラゴンファタジア」の自キャラには「イベントリ」と呼ばれる99種類99個のアイテムが入る機能があるのを昨日の夜思い出したのだ!慌てて開けて見たが中身は空っぽだった。

 結構色々持っていたんだが何処に行ったのだろう?かなり凹んだ。

 因みに課金によって999種類999個まで拡張可能だった…無課金縛りは結構きついのよ…


「おま…絶対他の人には言うなよ?奴隷確定案件だぞ?それ」


 …そういや異世界物ではそういう話が多かったな。

 テンション上がりすぎて忘れてた。


「今後人前で使わないようにします…」


「お、おう。そうしとけ」


 テンション下がってブルーな俺はカスパルさんの肩で熊の頭をモフモフして癒されている。

 やっぱり異世界は危険でいっぱいだ。

 こうなったら目立たないようにしないといけない。

 そんな事を考えながら宿屋に帰るのであった。


「ちょっと何処行ってたのよ?ジルアちゃんが家出したかと思っちゃったじゃない」


 ぷりぷり怒っているクレアさんを何とか宥めようとしているカスパルさん。

 そんな二人を横目で見ながら俺は生活魔法の本を読んでいる。

 この世界の文字は街に来た時読めるのを気づいていたので問題ない。

 どうして読めるかは称号に詳細があった。




 異世界転移者


 異世界から来た人間につけられる称号。

 現在この世界には一人である。

 この称号はどんな言葉も読み書き出来る[異世界言語]とスキルが非常に覚えやすくなる[スキル所得]を自動獲得する。



 称号自体にとんでもない効果があったのは驚きだがスキル所得が今の俺にどの程度当てはまるのかが不安だ。

 その為に生活魔法を覚えたいのだが…


「クリア」


 魔法の名前を唱えると俺の体に光の粒子が集まり、弾ける。

 どうやら成功のようだ。

 本には魔法の名前とその魔法の効果が書いており、魔法の効果のイメージがその魔法の性能を上げるらしい。

 俺はこの魔法に除菌作用のある魔力のシャワーをイメージしたがどうなら成功したみたいだ。


「ジルアちゃん、もう生活魔法を覚えたの?凄いじゃない!」


 クレアさんが抱きついて俺に頬擦りをする。

 俺は自分のステータスを見て、この世界で初めてスキルを自分の手で手に入れた事をとても嬉しく思うのであった。


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