第3話モブキャラを使いこなす事こそ無課金ゲーマーの極意である

 街の中に入ったはいいがお金も無ければ身分を証明出来る物も無い。

 無い無い尽くしの人生だ。

 どうしようかと考えているとカスパルさんに肩に乗せられる。


「人が多いからな。迷い子になったら大変だ」


 言葉少ないカスパルさんだかやる事はかっこいい。

 女の子になった俺でもキュンキュンするほどだ…主に熊の顔怖さに。


「ついでに冒険者ギルドに寄ろう。冒険者カードを作れば今後に役に立つ」


「冒険者になれるのか⁈」


 俺は思わずカスパルさんに聞き返す。

 異世界に来たらやっぱり冒険者ギルドが基本だろう。

 そして野暮な冒険者にからまれるのだ…あれ?今の状況で絡まれたらやばくない?下手したら何処かの貴族の愛玩奴隷とかになっちゃうんじゃない?やばい!簡単に考えすぎた!


「どうしたジルア?怖いのか?大丈夫だぞ。俺が付いているからな」


 斧を片手に微笑むカスパルさん。

 思わずカスパルさんの頭を抱き締めてしまう。


「ははは。甘えん坊だなジルアは…いてぇ⁈なんで俺を蹴るんだよクレア⁈」


 カスパルさんとクレアさんが揉めているが今の自分はそれどころではない。

 どうやって野蛮の権化の冒険者ギルドを攻略するか考えている所だ。




 そんな事をしているといつの間にか冒険者ギルドに着いてしまう。

 どうして分かるんだって?筋肉モリモリの武器を持った男達が溢れている場所なんてそうそうねーよ!思わず漏れそうになったじゃないか!子供のお股は緩いんたぞ!


「何かプルプル震えているけど大丈夫か?こいつらそんなに怖くないぞ?」


 カスパルさんが心配してくれるがどう見てもやばそうな人ばかりじゃないですかヤダー!カスパルさんの頭に抱きついて心の安定を図る。予想以上の場所だ…


「何かカスパルがちっこいの担いでいるぞ?」


「あれエルフじゃないか?初めて見たぞ」


「何かぬいぐるみに抱きついている子供みたいだな」


「「「それだ!」」」


 何か盛り上がっている所もあるがそれどころではない。

 クレアさんが近付いてくる男達をなぎ倒している。

 あの人本当に人間なのか?さっき吹き飛ばした狼男の獣人なんて2mぐらいあったぞ⁈


「カスパルさ〜ん、クレアさ〜んこっちに来てくださ〜い」


 のんびりとした女性の声が喧騒の中の冒険者ギルドに響き渡る。


「あいよ、フィリ。今行くから少し待っといてくれや」


 カルパスさんはそう言うと目の前にいる人混みを片手で散らしていく…いや蹴散らしてもいるな。

 クレアさんは遠慮なく殴っている。殴られた冒険者達が恍惚の表情なのは気のせいだ…気のせいだよね?


「相変わらず皆さんに人気がありますね。お二人とも」


 にへらとだらしない笑みを浮かべて二人に話し掛ける受付嬢だが…


「猫耳さんだ!」


 俺は無意識のうちにそう叫んでしまった!しかしそれは仕方が無いのではなかろうか!だって猫耳ですよ⁈猫耳!カルパスさんのような完全に獣状態でない猫耳…これは勝った!顔は緩い状態なのであれだが胸も凄い!クレアさんが太刀打ち出来ない大きさだ!…いや、クレアさんが小さい訳ではないですよ?そんな目でこっちを見ないで下さい。


「ありゃ?この子エルフじゃないですか。何処から攫ってきたんですかクレアさん?」


「攫ってなんかないわよ!この油の塊め!この子は西の森で一人でいたのよ!」


 珍しくクレアさんが喧嘩腰だ。確かに戦闘力では負けているが…


「ジルアもその女の胸ばかり見てるんじゃないわよ!全くどいつもこいつも…」


 クレアがこちらにまでキレ出した!胸の話はしないようにしよう。後が怖い。


「クレアの言う通りなんだよフィリ。俺達も迷い子かと思っていたんだがどうも違うらしい。取り敢えず冒険者カードを作ってある程度情報を知らないと、どうにもならん」


 カスパルさんが難しそうな顔で話しているがこれには異議ありだ!


「カスパルさんが聞いてくれるなら何でも話すよ?」


 俺がそう言うと何故か周りのみんなが顔を背けたり下を向いたりしている。何だ?何がおかしい?


「やべえ。あの表情、もう少しで倒れる所だった」


「ねぇ、もうこの子冒険者にしないでうちで飼いましょうよ?私お母さんでもよくなってきたわ」


「ほえええ。エルフの幼女は最高ですねえ」


「「「俺が、俺たちが守ってやる!」」」


 …何か別の意味でみんながおかしくなってきた。


「ま、まぁともかくジルアに聞いてみるか。ジルアはどうしてあの森にいたんだ?」


「気がついたらあの森に一人でいたよ?」


「なら家族はどうした?」


「あの森に来た時から一人だったよ?」


「…じゃあ家族はいるのか?」


「父さん、母さん、お兄ちゃん、妹の四人だね。じっちゃんとばっちゃんはもう死んじゃったしね。」


「…それじゃ家族は心配してるんじゃないか?家はここから遠そうか?」


「…多分喜んでるんじゃないかな?外に出るの久しぶりだったし。家には多分帰れないくらい遠いかな?神様でもなきゃ無理っぽい」


 そこまで話すと冒険者ギルドにいるみんなが泣き出した。大泣きである。

 おっさんの泣き顔なんて見たくはないぞ。


「…安心しろ。俺が絶対に守ってやる!」


「お母さんって呼んで良いのよ。ほらこっち来なさい」


「ふぇぇぇぇん」


「「「お前ら!この子はこのギルドで守るぞ!」」」


「「「おうさ!」」」


 ………訳が分からないよ………




「分かりました。冒険者として登録しましょう。彼女には冒険者ギルドの後ろ盾が必要です」


 なんかフィリさんが泣きながら俺の頭を抱えて決意をした声で宣言してくれた…胸の間に頭が挟まれて息が苦しい…死んじゃう。


「フィリ!あんたこの子を窒息させるつもりかい⁈ジルアはこっち来な。母さんが守ってやるから」


 胸の間から救出され胸の前に置かれる。よく分からないがそうなった。


「それではジルアちゃん。この水晶に触ってみて下さい。それで貴方のステータスと呼ばれるものが分かりますから」


 あれ?この世界の人は普通にステータスオープンが出来ないのか?まぁ出来ないなら俺が出来るとおかしい事になるし黙っていよう。

 透明な水晶玉を触ると光輝き出す。

 しばらくするとステータスオープンの時とは違うウインドウが現れ、文字や数字が書かれているようだ。

 フィリさんが先行して内容を見ているのだが顔色が段々と青くなっていく。


「こ、こんなことって…」


 それだけ呟いたフィリさんは青ざめた顔でこっちをじっと見つめていた。


 ………一体何が書かれていたんだ?













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