第17話 一人暮らし、ひさかたぶりの?はじめての?

昔話をしましょうか。

あれは400年前、わたしがまだ試験管から飛び出たばかりのころでした。


その街は小さく、それでいて都市としての機能が全て詰め込まれているとても過ごしやすい街でした。

議会があり、時計台があり、パン屋があり、病院があり、噴水のとなりには花屋もありました。そして、議会を囲う壁には門がありました。


そう、彼との馴れ初めはわたしが議会にある提案を提出しに行った時のことだったのです。そこで、出会いました。

彼は、門番です。

わたしは彼とともに語らい、追いかけ会い、気が合ったので一宿の時同じ屋根の下で過ごしました。


そして、朝起きると……なんということでしょう。パラメータに結婚フラグが建っていたのです。しかもステータスに出産までの期間が追加されていました。


……なんなんです?この世界を創った奴はどれだけ大雑把なんですか?行為とか儀礼とかそういう手順を全部省略していきなりフラグだけ建ててステ移行させるのってちょっと大雑把すぎませんか?


―――記憶が消えているだけでやってたとかだったらまるで18禁のエロ漫画だな。


あとはもう、なんか成り行きで夫婦エンドのエンディング後をずっと過ごしていたわけですが、まあ子だくさんですよね。なんていうか、フラグ管理、雑すぎませんか?この世界、どうなってんですか?デバッグちゃんとしてるの?


―――デバッガーはお前だ。


まあまあまあ、悪くないですよべつに。目的もなかったですし?食事があって家が有って家族が有ってたまに休日になると綺麗な服を作るための布を買いに行くのに付き合ってくれる人が居て?退屈はしない毎日でしたよ?



まあ。でも、ありますよね。寿命。

わたし以外は毎日の巡回行動を繰り返すだけの単純な思考回路しかない素朴な生き方をしている平和な街でしたが、着実に時を刻んでいたのでした。

まさかの老衰による死別とは。


平凡な奴で居るのか居ないのかわからない時もあるくらいに気配を消す奴でしたが死に際になって周りから好かれている自分を観たせいなのか。笑顔で静かに居なくなりましたよ。


うん、わかります。ここまでは、まあ、いいですよね。そういうこともあります。

ただ、死んだ瞬間に消失して墓地に墓が生えるのはちょっとどうなのかなーと。

シナリオメイカーさんは構成だけつくって細部は他の人がやってんですかね?

わたしてきには、余韻も何もありませんって感じでしたが、周りのみんなは泣いていたかな。笑顔だったかも?

それも10分程度たったら鎮静フラグが建って即時解散とか言うこれも雑な仕様でしたが、こっちの方は悪くないんじゃないですかね。


彼が老後を過ごした寝具の傍らでひとりで静かに佇む時間をもらった気分でした。



……ここまでが、400年分の最初の30年のおはなし。

さて、次はいつ語ることになるのでしょうか。


とりあえず、朝ごはんを食べ終わったこの微睡の中でひとり。ゆっくりと空でも眺めて過ごしましょうかね。




―――おまえ、おばあちゃんみたいだな。とか言ったらどんな顔するかな?

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