第16話 いろいろあったんですよ、色々ね

長い日々でした。とてもとても長い日々でした。

わたしがここに至るまでに出会った大人たち、そして子供たち。

すべての祝福を受けて!いま念願の!この時を!!



―――農耕だった、収穫の夏だった。

ふぅ…ことしのお野菜もいい感じに育っているね。雨が少なくて不安でしたが良かった、ひと安心ですね。



―――なに?恋愛ルートに飽きたのこいつ。

うっさいですよ、ナレーションがしゃべるな?


―――天の声だ。って何話しかけてるわけ?次元違うんですけど?

数多の輪廻を乗り越えた者である、このわたしに観えないモノなんてないんですよ。


―――それで何で農耕なのさ

街で人に囲まれて生きるのに疲れたんです。気にしないでください。


―――ずいぶん幸せそうだったじゃないか。ボクはもっと先が観たかったけど。

もういいんですよ、子供のことは子供に大人の事は大人に任せればいいんです。

だからわたしはわたしのことををするのです。


―――ふーん、幸福ならずっと続けばいいと思うけどそうでもないのか。

よりそうだけが真理でもないものですよ。思い出にはなるのだけれどそこまでです。


―――含蓄がありそうで全くない感じが君っぽいね。

そうでしょう?……褒めてるんですよね?それ。



―――まあ、今回は気まぐれに付き合ってみたけど本来は君とボクが会話するのは禁忌だからね。今後は控えさせてもらうよ。彼の眼もあるかもしれないからね。

そうですか、わたしはこれから新鮮なお野菜を使った豪華な朝食をいただくので涎を垂らしてみているがいいよ。


―――ははは、楽しそうだね。それじゃあ、また破壊の時にまでさようなら。

おとといきやがれ、ばかやろー、ベーだ。



背の高い稲で編んだ帽子、木綿の手袋、麻を張り合わせて貝殻と樹液で染色した上下セットの洋装に膝までの丈の二股ズボン、雨季の後の季節の日差しはまぶしい。


あいつめ、何が恋愛ルートだ。ちょっとこっちの時間で400年ばかり家族を作って過ごしてただけじゃないか。いちゃいちゃしてたのだって最初の30ねんだけだし?

恋愛ルートなんて言い方は心外だわ。


そんな浮ついた生き方してないですし?



―――長生きしすぎだろ、寿命の設定忘れてんじゃねえか?改善項目だな。

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