第13話 周りを人に囲まれた

黒い世界、白い世界、また黒い世界。

なんだっけこれ、覚えがあります。

くるくると世界が回って光が届く。巨大空間が魅せる奇跡の饗宴。

その名前は太陽、そして夜と朝


それだけわかれば十分です。あとは目を閉じたまま世界の回転を見守りましょう。

変化を見守るだけでいいなんて、まるで箱庭のカミサマ気分でしょうか。

わるくないです。

この、寝具の、シーツも、カミカミすると口がやわらかい感じがまた、カミカミカミ


「あーこのおねーちゃんお行儀が悪いんだー先生を呼んで来よーっと」

「ひゃぃ!」


子供の声…?えっこの世界、人語を解する存在が居るんですか。聞いてないです。

…聞いた気がします。…いえ、やっぱり聞いてないです。前の世界の記憶はない。

そういう設定。設定なので!設定は大事です。あーるぴーじーは説明書を読むと強力な交渉力になるって何かの情報媒体で認知しました。きっと、従った方がいい。


うーんとりあえず、次に来るであろうことを予測して備えましょうか。

どうしましょうか。

とか思っているうちに次の事が来てしまいました。備えがありません。不可避です。

受動です。私は弱者だー。補償を求めるぞー。餓えたねこには暖かいスープをよこせー。ねこ、ねこねこ。にゃー。あっ相手がいぬ派だったらどうしよう。

わんわんわん。だめだ、しっくりこない。いぬは嫌い。

…ねこってなんでしたっけ?言葉は知っているのに形が想像できません。

まあいいでしょう。



事後報告です。検診を受けました。福利厚生ばっちりです。

この世界はしっかりと人間が居て、医療技術が確立されています。

医師が体に直接手を触れて健康を確かめるという方法を基準にして、主観的な観測による診断の体系が出来上がっているようです。

……なぜだか、胸元だけ入念にペタペタと触れていたのは何か異常があったのでしょうか?首をかしげていたような気もしますし、あとで直接聞いてみましょう。



ひと段落したので、寝具の中へ戻りましょう。外に出ている理由などないのです。

えっ、退院…?なんで?私ここに住んでも構わないですよね?えっダメ?どうしても?そうですか。ちなみに、理由をうかがっても?お金ですか?…上の指示?

ならしかたないですね。おーかみはコワイ。定番で絶対の真理です。逆らってはいけない。…いや、私は逆らうために生まれてきたのでは?そんなわけないですね!

今後の生活を確保するために利用できそうな余地は多い方がよいです。明るく考えましょう。きっとみんな私にやさしい。


…きっとこの後は楽しいことが待っている、そうですよね…?期待していますよ?

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