‐3.大地の中の少女‐
隠遁者の視点
第9話 ヴァーチ・シティ
その街はまさに…まさに、なんだ。オレに文才を期待すんじゃねぇよ。
このオレが誰かって?気にするな。通りすがりの天災だ。そう思っても違いはない。
さて、オレが今回やりたいことはこの世界の今後を語ることだ。
崩壊の宿命にあるこの世界でずいぶん楽しそうなことをしてるじゃねえか。
螺旋と渦巻が天に向かって反攻しているかのような塔の羅列、外から見れば大波が押し寄せてきているかのような威容を放つ壁、反射する光と言う光を吸い込んでいるかのようにさえ見える真っ黒な印象を受ける。
その街はいったいなんだってあんな様子になっちまってんだか訳が分からねえ。
理由はわからねえが、機能はわかる。
あれは、世界を食い殺すために在るそういう概念の象徴だ。
世界にあるあらゆる資源を搾り上げて一点に集中させる。
当然、そんな無茶なことをすれば世界の外縁から構造が破綻して分解されていく。
この世界の創造者は物語の始まりと終わりを作るのは出来るようだが、構造を維持するための関係性を構築するのはどうやら苦手なようだな。
アイツは、元はこの世界にないはずの概念を材料にして形作られたものだ。
構造の把握、関係性の構築、属性と含意を内包し物語の中で物語を壊すためにあるモノ、そういうモノの世界の構成材料を元にしてこちらの世界に現出されたものだ。
だから息を吸うようにこの世界の関係性を把握する。
少ない力で玉突きのように連鎖反応を引き出して周辺世界を塗り替える。
そういう異能に対する耐性や修正力が未設定な時点でアイツがこの世界の支配者みたいなもんだ。
しかもヤツは世界の創造者を気取りながら傲慢にもアイツに過剰なまでの祝福をくれてやりやがった。あれはない。ほんとない。油断しすぎ。
アイツには自己改造能力が隠し能力に設定されている。
だというのに、限定的な物質形質変換や、能力値の成長限界上限解除だの限定的な空間操作だのとどれか一つでもヤベー異能を追加しやがるとかうっかりしすぎだろう。
このままゆっくりと掌握できる空間を拡張し続ければ、いずれこの世界の全要素が一点に集まるだろう。はたして、世界の創造者は自らが作った世界の全要素を持ち上げることが出来るのか。まるで神話のようだ。面白い課題じゃないか。
世界の崩壊、そしてその後の創造者との邂逅の瞬間を狙った決戦に向けていましばらく時を待つとしようか。
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