第7話 ここが私の街ですか?

服を作りました。

カクカクでゴワゴワしてても衣服は衣服です。

体温を保持する事が衣服の目的です。

であれば、紙を重ねて貼り合わせてできた衣服も何の問題もなく衣服と名乗れます。

問題など何一つありません。

決して自分に対する言い訳などではありません。


裏庭で紙束を見つけた後に、その中から一束分持ち上げて持っていきました。

まずは、大きい方の彼らの前に紙束を持って行って正面に立ちます。

おそらく、彼がこの家の主であると

決めつけた私は紙束を持ってジッと彼を見つめました。

じーーーーーー

あっいま顔を逸らしましたね?私の勝ちです。この紙束はもらいますね。

戦利品を材料にすれば何でも作れますね。

はい、作れませんね。

のりが無いです。

張り合わせることが出来なければ、ただの小さな紙片の集まりでしかありません。

「どうしましょう」

困りました。詰みです。ノーゲームです。無効試合です。戦う前に負けています。


そうだ、のりがないならのりで何とかすればどうでしょうか?

「いえーい、今日から君ら紙束は私の衣服になるのだー。いえーい」

もう投げやりすぎて自分で泣けてきました。


……なぜか衣服が完成しました。

この世界の法則が理解できません。ちょろくないですか?

もしや、もしかしてこの世界の神様は私にやさしいのでは?

願えば大体何でも適うのでは?やってみましょう。


「ははっはー。この街は私がいただいたー。今日から私の街になるのだー」

どうでしょう?後ろを振り向いてみました。

すこしドヤ顔気味でニヤついている自分に

気が付きましたがそこは気にするところではないでしょう。


反応が無いですね。

とりあえず家の外を歩いてみましょうか。


すごく……かしずかれます。

私が歩くと向かう先で彼らのうちで私より高い位置にあった頭をゆっくりと下げて身を固くして止まってしまいます。


これはちょっと居心地がよくないです。


誰ですか、この状況を作った黒幕は。

黒幕さん出てきなさい。

「私が黒幕だ」

出てきましたよ黒幕。

ない、それはない。

そんな展開はあり得ない。

でも都合がいいから倒してしまいましょう。


「もしかして、私があなたを倒せば私がこの世界の覇者ですか?」

「ははは、そんなルートは用意してないよ」

「本当ですか?やってみてもいいですか?やってみますね?」

「どうぞどうぞ。試してみるといい」

「動かないでくださいね。いまから攻撃しますので、必ず当たってくださいね」

「はいはい」

「当たったら一撃で倒されてくださいね」

「いいよ」

「私に倒されたらあなたの持つ世界の権限を掌握させてくださいね」

「ちょっと待て、その指定はおかしくないか?そんな知識与えた覚え無いんだが」

「問答無用です。悪逆、討つべし」

「おい。ワタシはこの世界の創造者なんだが?なんで悪逆呼ばわりされる」

「私に不遇を強いるすべてのものは私にとっての悪逆です。ちゅーします」

「まてまて、それしたらこの世界が終ってしまうぞ?」

「関係ないです。私にやさしくない世界なんて終わってしまえばいい」

「妥協案とかないのか貴様」

「……妥協案、出しても良いんですか?」

「あるの?妥協案」

「私、穏やかに暮らしたいんです。でも貧相な生活は嫌なんです」

「豊かな生活を保証すれば方針を変えると?」

「内容によりますね。考えます」

「この街を領地として自由に使える権利とかはどうだろうか」

「良いですね。あと、この服を作った時の能力?みたいなのも追加でほしいです」

「欲張るね。あまり褒められないけれど、キライじゃないよ。良いだろう」

「ありがとうございます。貴方は良いカミサマですね」

「ワタシはそんなものじゃないさ」

「私よりは大きな能力を持っているじゃないですか」

「それは間違いないけれど」

「大きい方から分け与える方が簡単なんですよ。だから私に下さい」

「仕方ないなあ」



――この世界の運命が停滞に決定したのはこの時であった。

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