第3話 冷える…椅子カタくない?

とりあえず、空気のあるところに出てみた。


息を吸う。息を吐く。とても簡単、誰でもできる。

いままでしていなかった私が言うことじゃないけど。

ああ、でも液体の中でも呼吸ってできるのかな。

どうでもいいけど。


外に出る方法、これは簡単だった。

液体の中も外からこっちを見ている視線が判る様になったのだから。

誰かがこっちを見ているときに動いて見せれば、あら不思議

どたばたと大騒ぎだったようで…


いまは椅子に座っている。

周りを見回してみる。

けれど、点と線の集まりで何が何だかかわかりやしない。

私が見ていた、あおさ一色の世界は私が入っていた容器を満たしていた液体のあおさだったようだけれど…


直線と直線の集まりの中に向かって手を伸ばす。

直線の世界の中に曲線が生まれる。

手を引く…曲線が消える。残るのは直線だけの世界。


壁からひんやりしている空気が肌まで漂ってくる。

あと、椅子が堅い。

「椅子カタくない?」


わたしが言葉を口に出すとすべてのどたばたが一瞬止まった。


そしてさっきよりも慌ただしく駆け回る彼らの動きを追う。

ドタン、バタン、ドタン、ドドドド、ピピピピピピ

忙しいのはわかるけど、まずはこっちを診てくれてもいいじゃない。


――世界にとって自分がどういう存在かという自覚は私にはまだない。

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