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 どうしようもない夜というのは、どうしても訪れる。


 どうしようもない、とは、連絡をする相手がいない、連絡をしたい人がいない、さらには自分の無力さや、やはり自分は独りであると自覚することで追い込まれていく、そのようなことである。

 眠るには悔しすぎて、起きているには自分にできることはないので冷蔵庫で冷えた缶を取り出してみたりする。

 しかし朝日が突き刺さる体のことを思うと、時計を睨んで舌打ちするしかない。


 そこでやっと思いつく。私には彼らがいる。

 リビングで大人しく自分の寝床を確保し体を丸めている彼らは、私が夜半に現れたことに不思議そうな顔をしながらも、起き上がって用を足してからその体温を預けてくる。

 また別の彼らは、重たい瞼をこじ開け、寝転がった私の頭に額をこすりつけ、ふわふわと動くしっぽを腕に沿わせる。

 幼い頃、犬か猫かの二択を選べなかった。今もできないままだ。

 他愛のない二択だが、選べない二択が存在するということを知る良い機会だった。

 さらにいえば大抵の二択にはその他の選択肢があるし、よほどのことがない限り二つのうち一つを選ばなければいけない状況はないのである。それを知りながら、わざと選んだことだってある。

 人生は選択でできているとよく聞くが、選ぶ前には理由やきっかけがあることを忘れがちになる。


 猫の腹の柔らかさ。犬の口角の柔らかさ。

 彼らの背や腹を借りて、私は何度も静かな夜を越えた。

 今でも二択を目の前にすると彼らのことを思ってにやけそうになる。もちろん、目の前の二択のことなど忘れてしまう。

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