恋のオノマトペ?(原著:雨天荒さん)

「まっつぐ行ってシュッと左に入ってふわっと進めばドンとあるのがソレ」


 ボーッと歩いていたらガッと目の前に立たれたおっさんにグーッと詰め寄られるような感じで道を尋ねられた。

 ハッとして、わーっと答えたものの、そんな場所、パッとは思い出せやしない。


 大体、今の僕は、ソレどころじゃぁない。

 朝からずーっと考え想い悩んでいる。

 恵美めぐみのことを考え、ぐるぐるとめぐる思いにうーんとくるしみ藻掻もがき、宛もない想いにもぐる。

 もう、グッと堪えたこの目眩めくるめく想いを押さえ込む事なんか出来やしない。


 ――ッ痛ぅ。

 目頭に、痛い程の夏の日差しがシャッと射し込む。

 じりじりと照りつけるソレにじわりと汗ばみ、らされ待つ僕は自意識過剰。

 じくじくと心は痛み、時間を追う度、自重出来ず自虐的。

 今日の僕はヒリヒリと痛々しく、しかし、轟々ごうごうと燃え立つ。

 スマホの画面にポテポテと指を当て、想いをガツンと打ち込む。

 手紙――

 メールやLINE、そんなゆるゆるした類じゃない。


 ――告白。

 彼女とのふわっとした友達付き合いは、今日でピタリとお終いにする。

 漠々ばくばくとした不安にぎゅーっと抑え付けられるくらいであれば、ドンと挑み、パーッと散るのも男のはな

 はなから叶うとは想っちゃいやしないが、さーっと鼻白はなじろんでるようじゃお話になりゃしない。


 彼女がさらりと到着するまで、まだ、ちょろっと時間があるだろう、そうだろう。

 僕はがむしゃらに、ぐりぐりと画面に書き殴る、ぐだぐだとつづる、ぐずぐずと鼻をすする、時折、分からない言葉をgoogleググる。


 できた。

 すらりと書けた。

 よし、送信――

 ――ぽちっ!

 、とな。



…――なぜ、何故、君は綺麗なの?

そのは何を見詰みつめているの?

僕は気儘きままに、君を見詰めるだけ。

恋の擬声語オノマトペが、只、駆け抜けるだけ――


――なぜ、何故、君は<好きだ>と言ってくれないの?

届かぬ想いが夏空にれた儘、

君は気紛きまぐれ、僕をかどわせるだけ。

恋のオノマトペが、只、駆け抜けるだけ――


君の気持ちを待っても、

どんなに待っても、

君は今日も、、、


巨塔ビルの谷間を彷徨さまよあゆむだけ。

既視感デジャヴの続きを、また、見せられるだけ――


君は気紛れ、僕を拐わせるだけ。

恋のオノマトペが、只、駆け抜けるだけ――…



 ――どうだッ!

 心臓バクバク、血脈ドクドク、体はガクブル、顔はカーッと、恵美からの返信を、反応を、答えをじっと待つ。


 みょこん――

 ――!?

 来たッ!

 返事がきた。

 がばっと即行、画面を覗く。


 どうだッ!?



めぐみ>なにコレ?酔っ払ってるの?w



 ――ッドギャーーース!

 全ッ然ッ、届いてねぇー!

 いや、IMはちゃっちゃっと届いてるんだが、気持ちがまーったく届いてねぇー、何一つピンと来てねぇーわ、コレ!

 ぬぬぬぬっ。



「――あのさぁ…」


 僕は落ち着き払った声で、ぐるぐる、もぞもぞ、ぽかぽかな空の下、言いようのない感情を吐露した――



 ――しょうがない。

 逢ったら直接、と告白しよう。

 な彼女には、ソレがいい。

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