第10部 吹く

 今日は日陰で練習。

 放課後の場所を見つけては一人で練習。この時間は人がいないため練習には向いている。


「すー」


 息を大きく吸い込む。肺活量には自信がある。


 ~ ♪ ~ ♪ ― ♪


 少しずれた。まだこの譜面には慣れてない。

 ここが難しい。

 うまくできない。

 それにしてもさっきから誰かに見られている気配がする。


「音源を聞き直そう」


 鞄からMDプレイヤーを取り出しイヤホンをで音楽を聞く。

 やっぱりこの音楽が好きだ。

 この曲を吹奏楽部で演奏することは初めて。だけど一緒にやろうっと決まった瞬間なんだかわくわくした。

 この曲を初めて聞いた時はなんでこんな曲をやらないといけないんだと思った。これまで聞いてきた、演奏した曲とも違う曲。だがそれでも気になる曲。

 心の底から面白いと思った。

 それからだこの曲のことを調べて興味を持ち、好きになった。


「よし、もう一度」


 ~ ♪ ~ ♪ ~ ♪


 今度はうまくいった。

 これができたら次の譜面もやろう。


「それにしてもその曲が好きなのかな?」


「えっ……」


 声がしたほうをみると部活棟の窓から身を乗り出している人物。

 そっか、ここが部活棟の裏でここで私がトランペットを練習していた。

 この人は私の練習をずっと聞いていたの。


「いつからそこに」


「君が練習を始めた頃から」


「はあーなるほど」


 これは恥ずかしい。

 まだ完璧と言うほどではないモノを人に聞かれるのは恥ずかしい。


「それでさ、君にモデルになってほしいんだ」


「は、え?モデル?」


「いいからこっちに来てね」


「え、えー」


 この人、話しを聞かない一番苦手な人だ。

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青春とは部活生活である 二又 正偽 @futaba1131

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