第6部 陸上部

 私、川野 沙代かわの さよは陸上部に所属している。

 理由は簡単。何よりも走るのが好きだから。

 よく『走るの疲れない?』と聞かれるが私はそんな事を感じたことはない。

 走っているほうが楽しい。走っているほうが疲れない。

 友達から『あんたはマグロか』って言われる。

 マグロってなんで呼ばれるのかわからないけど、マグロは好きだ。

 なんだかんだで今日も走っています。


「うーん、よし行こう!」


 もうそろそろ試合がある。

 各自で走り込みをする。ある者はグランドでハードル、またある者はラダーで走り込みをする。

 そして私は今日は校外で走り込みする。


「自分のペースで……」


 運動場で走るのもいいけど、今日は外で走りたい気分。

 外の風景を見ながら走るのは楽しい。


「あ、高山たかやま君!」


 同じクラスの高山君。帰宅部でいつも一人で帰っている。


「ねえー、高山君」


 声をかけても返事がない。


「高山君ってば」

 

 近くで声をかけても返事がない。

 それにしてもなんで自転車を押して歩いているんだろう?


「高山君ってば!」


 呼んでダメなら叩いてみよう!


「おわっ!川野さん!」


 肩を叩いてすごく驚く高山君。


「やっと気が付いた。さっきから呼んでいるのに」

「川野さんは部活?」

「そう。走り込み、試合が近いから」

「そっか、それじゃ試合の応援行こうかな」

「え、本当!」


 応援しに来てくれるんだ。

 なんか嬉しい。


「それじゃ、試合の日わかったら教えてね」

「うん。明日教えるね」

「練習頑張ってね」

「うん。応援に来てくれた高山君に恥ずかしい場面見せられないもんね」


 高山君と別れまた走り込みをする。


「そっか、応援しに来てくれるんだ」


 ふふっ、なんか嬉しいな。

 今日の景色がいつもより楽しい。


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