第5部 帰宅部

 どの部もヤル気と元気であふれている。

 放課後は彼らの活動タイムだ、そうなると自分の居場所は放課後にはいない。


「はあー」


 ため息は大きく、存在は小さく。

 自転車を取りに体育館の近くを通りかかった時だ。


「俺達は次の大会に勝つ」

「吉田……」

「卓球部だからな、大会に勝たないとな」

「上野……良かった、お前たちがやる気になってくれて。俺もお前たちと大会を優勝したい」


 卓球部が友情のハグをしていた。

 確か卓球部は部員が少なく廃部になると聞いた。


「彼らも何かしらのやる気があるんだ」


 やる気がある人たちは部活などで発散している。

 それじゃ俺は。

 何もなく帰宅部。

 家に帰ってベットに横になる。

 バイトもすればいいのに、そのやる気もない。


「はあー」


 ため息を吐いて、自転車を押して歩く。

 高校生活は楽しい。

 学校には友達もいる、けど友達は部活をおこなっている。

 それじゃ俺は?

 やる気もない。


「あれ?」


 この世に部活がある限り俺は放課後一人なんだろう。


「ねえー、高山たかやま君」


 この時間は憂鬱と後悔に押しつぶれそう。


「高山君ってば」


 なんであの時部活に入らなかったんだ。

 あの時にゲームにはまっていた自分を殴りたい。


「高山君ってば!」

「おわっ!」


 突然肩を叩かれ驚く。

 気が付いたら学校の外に出ていた。

 そして肩を叩いた人に顔を向ける。


川野かわのさん!」

「やっと気が付いた。さっきから呼んでいるのに」

「川野さんは部活?」

「そう。走り込み、試合が近いから」

「そっか、それじゃ試合の応援行こうかな」

「え、本当!」


 なにその顔は、それは俺みたいな帰宅部が来るのは迷惑だよね。


「それじゃ、試合の日わかったら教えてね」

「うん。明日教えるね」

「練習頑張ってね」

「うん。応援に来てくれた高山君に恥ずかしい場面見せられないもんね」


 少し会話して川野さんと別れる。

 明日も川野さんと話せる。


「なんだか、帰宅部も悪くない」


 今日の自転車はいつも以上にペダルは軽かった。


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