第22話 『魔法』を信じるかい?

「…どうやって大きなグラナスさんを塔の屋上に出すの?うち、壊れちゃうよ」

 グラナスさんを外に出したいと言い出したのはぼくなのに、うちが壊れちゃうかもしれないと思うと、それはあまり試してみたくないかもって気持ちになった。

 住むところがなくなるなんて、なんだか怖い。


 おじいちゃんもお父さんもぼくの言葉を聞いて笑っていた。

「グラナスを外に出してやるためにうちが壊れちゃうんじゃ、なんだかロボットかなんかみたいだな、グラナスが」

「大きさと強さならロボットとあまり変わらないでしょ?」

「グラナス、発進!」

 お父さんはひとりでめちゃくちゃウケている。ぼくはこどもだけど、そんなに笑われたらすごくバカにされた気持ちになる。


「悪かったよ誠、からかって」

「お父さんは無神経だと思うよ」

「そうじゃな、今のは努が悪い」

 おじいちゃんがうんうん、とうなづいた。さっきは一緒に笑ってたくせに。


「いやいや、グラナスを外に出すのに家が壊れるかもしれないなら、お金をかけてこんなにきれいにリフォームしないよ」

 お父さんまだ目に涙を浮かべていた。

 確かにお父さんの言う通りだけど。

「じゃあ、うちを壊さないでどうやって屋上にグラナスさんを出せるの?秘密の出入口が地下室にあるの?」


 お父さんとおじいちゃんは顔を見合わせていた。ふたりの横顔は、こうして見るとそっくりだった。

「あるんだよ、誠。それはね、『魔法』なんだ。誠は『魔法』を信じるかい?」


『魔法』だって…。


 それは本の中にある不思議な力じゃないの?物語の中にはいろんな不思議な力があふれていて、それが主人公を助けたり、危ない目にあわせたりするけど。

 グラナスさんを、塔の地下室から屋上に出してあげる『魔法』?

「それって…つまり、召喚魔法?」

「おおー、さすがは我が息子!」

 お父さんが変なところで盛り上がる。

「お父さん、RPGの登場人物みたいな話し方、やめてよ」

「ごめんよ、ぼくは誠が『魔法』を信じる子どもに育ってよかったなぁって、今、心から喜んでいるんだよ」

 …うちのお父さんはやっぱり、よそのお父さんと違う気がする…。

「誠はこの世に『魔法』や『妖精』が存在すると思っているんだろう?すごくうれしいよ。そりゃそうだよなぁ、そうじゃなくちゃドラゴンがうちに住んでるなんて信じないよな」

「そういうの、信じたらおかしいかなぁ?子どもっぽいってこと?」

「違うよ、誠。ぼくは、ぼくと真美さんの子育てが間違ってなかったと今、確かめたんだよ」


 正直に言って、お父さんの言ってることの意味がわからなかったけど、おじいちゃんが隣で「うん、うん」と首を縦に降っていたのでおかしなことではないのかもしれないと思った。バカにされてる気は、まだしていたけど。

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