第21話 秘密の話し合い

「じゃあさ、やっぱりグラナスさんを外に出した方が自然だよね?」

「誠、それは誘導尋問だろう」

「だってそうなるでしょう?」

 とんとんとん、と音がして、お母さんが飲み物を持ってきてくれた。

「おじいちゃんも呼んでくるか」

「はぁー、仕方ないわね。いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたわ」

 お母さんはお盆を持って、「おじいちゃーん」と呼びながら下におりていった。


 おじいちゃんがノックもなしにバタンと部屋に入ってきた。

「だから努、リフォームするならエレベーターをつけようって言ったじゃろ」

 おじいちゃんはぜーぜー言っていた。ちなみにぼくは、ぐるぐる回る階段がエスカレーターになるといいなって思うんだけど。

「ないものはないの。お父さんも頑固だな」

「お前もな」

 お父さんとおじいちゃんは血の繋がりがちゃんとあるのに、なんだか会う度にケンカばかりしてる。…原因がエレベーターのことが多いけど。


「つまるところ、例の件、じゃな」

「そうですよ」

「ふぅむ、誰もが一度は通る道と言ったところか」


 ふたりとも、まったく難しいという顔をしている。やっぱりぼくだけが間違っていて、みんなを困らせているのかなぁ。

「誠よ、ところでグラナスの本当の気持ちは確かめたのか?」

「え?」

 ぼくは困ってしまった。そう言えば、グラナスさんが旅に出た話を聞いて、たまに懐かしくなるって聞いたんだ。…でも、飛びたいって言ってなかったな…。

「ううん、ぼく、ちゃんと聞かなかったのに、聞いたつもりになってたみたい」


 気持ちがショボンとしぼんだ。たぶん、グラナスさんの話を聞いて、ぼくがふわーっていろいろ想像しちゃったんだ。それはダメだよね。グラナスさんのためじゃなくて、ぼくのためになっちゃうもの。


「誠、グラナスに尋ねてみてもいいが、グラナスはおそらく、外に出たいとは言わないぞ」

「どうして?地下室がすきだから?」

「そういうわけではなかろう。自由にとびたいかどうかはわからないが、いい加減、外の世界を見たいじゃろうな」

「ねぇ、グラナスさんはどれくらい塔にいるの?」

「そうじゃのう、それがよくわからないんだ」


 グラナスさんがうちにいつ来たのかわからないのか…。あんなに大きくて塔の中にどうやって入ったんだろう?そもそもうちの塔っていつからあるの?


 謎が謎を呼ぶなぁ。

「グラナスを地下室から屋上に出す方法はあるんじゃ」

 お父さんを見ると、お父さんもうん、とうなづいた。

「そんな方法があるの?」

「あるんじゃよ、これが。うちに代々伝わっている方法がな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る