第6話 恐竜ハンター
ぼくたちの間でいま流行ってるのは、恐竜を狩るゲームだ。大人の人たちの間でも同じようなゲームが流行ってるらしいけど、ぼくらのは子供向けだ。
難しい戦略は特になくて、回り込んだり囲い込んだりしてとにかくやっつける。その中には『飛龍』と呼ばれるドラゴンもいて、今日はあれこれ理由をつけてドラゴン退治はやめてもらった。
ぼくのジョブはガンナー。銃や弓を使って、少し離れたところから敵をねらう。クリティカルが出やすくて、もし出れば即死を狙える。なかなか集中力と判断力が試される、とぼくは思っている。
リョウタはがんがん殴る系ジョブがすきで、今日はウォリアー。タクミは守ること前提のナイトか癒し系ヒーラーが多い。ゲームだけどみんなそれぞれ個性が出ておもしろい。みんなでひとつのクエストを達成するのは充実感いっぱいだ。
「誠、少しお休みしておやつにしたら?」
「はーい!」
リョウタたちも大きな返事をする。おやつがなければ戦えない、という感じだ。
コントローラーを置いてぼくは、またグラナスさんを思い出す。おやつ、食べないのかなぁ。そもそもグラナスさん、何をどうやって食べるんだろう?
「誠ー!無くなるぞ!」
「あ、リョウタくん、それお兄ちゃんの!」
実咲がリョウタの腕をさえぎろうとする。
「大丈夫だよ、実咲ちゃん。リョウタはいつもフリだけだからね。」
タクミがにこにこしている。
ぼくたちはまるで兄弟みたいなものだ。何しろ365日のほとんどを一緒に過ごしてるんだから。
ぼくは外で遊びつつ、地下室の様子をうかがいたいなぁと思っていたんだけど、おやつを食べてもうひとつクエストをやったら(今回の敵は巨大魚だった)夕暮れになってしまった。
暗くなるまでにふたりが家に着くことが、うちで遊ぶときの約束だ。それは、ママ友同士である、お母さんとリョウタのママ、タクミのママで決めた。3人は仲良しだ。たまに一緒にランチに行くらしい。
「おしゃべりしに行くのよ。」
と、お母さんは言うけれど、きっとおいしいものを食べるに違いない。
夕飯の時間まで、まだ時間がある。
ぼくは何気ない顔をして、そろりそろりと塔の階段を下りた。塔の階段と言っても、今では板張りになっているので、石造りの階段のようにカツーンとか音が響くことはない。
要は忍び足で歩くことだ。
ところがここで大失敗してしまった。
1階にはおじいちゃんの部屋があるので、階段の下でうっかり、鉢合わせしてしまった…。がっかりだ。
「こんな時間にどこに行くのかな、誠?」
おじいちゃんはにやにやしながら言った。わかってるのに、と思うとちょっと悔しくて、返事はしなかった。
「どれどれ、食事の時間に誠がいなかったらお母さんが心配するだろう?少しおじいちゃんと話さないか?」
作戦負けだ。相手の言うことを聞くしかなかった。
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