第5話 いつもと同じじゃない
学校に行ってる間もぼくはグラナスさんのことばかり考えていて、算数の計算問題を3問も間違えた。算数は得意な科目だから、ぼくを指した先生はちょっと変な顔をした。まぁいい、みんなだってたまには間違えるんだから。
人は間違える生き物だっておじいちゃんはいつか言ってたし。間違えたら正せばいい、とも言ってた。だからぼくはノートにもう一度同じ問題を書いた。集中すればきっと解けるはずだ。
業間休みになるとさっそくリョウタとタクミがやって来て、うれしそうにぼくを冷やかした。
「なんだよ誠。めずらしいじゃん。昨日の宿題、ちゃんとやったのかー?」
「うるさいなぁ、ちゃんとやったよ。算ドだろう?」
「なんだよ機嫌悪いなぁ。ほら、オレらが遊びに毎日行ってるから、誠の勉強にエイキョウしたかなーとか思ってさ。」
にやにやしながら二人は同じことを口にした。
「誠の家のテレビでゲームするのが最高なんだよな!」
…そこかよ…。
そういうわけで今日も放課後、コントローラーを持って集合する約束をした。お母さんのピンクの車に乗りながら、やっぱりうちのテレビは大きすぎるよな、とつまらないことを考えていた。
「誠、黙り込んでどうしたの?お腹すいた?」
お母さんが調子外れなことを言う。
「給食食べたから、まだお腹へってないよ。」
「そう?」
お母さんと実咲は今日のおやつを何にするか、相談しはじめた。買ってから帰るらしい。これだから女子ってさ、とぼくは思う。
家に帰ってからのぼくは一人になる時間がとにかく待ち遠しかった!今までの人生ではじめて、リョウタたちが遊びに来られなくなればいいのに、と思ってしまった。
最低かもしれない。
でも時にはそんなこともあるに違いない。友だちならわかってくれるはずだ。
テレビゲームの用意をして、塔の窓からぼんやり海を見ていた。空にはふわふわした雲がいつも通りだよ、と言って浮かんでいた。空と海がいつも通りでもぼくはいつも通りじゃないんだけどなぁ!
…だれもわかってくれない。話してないから当たり前だけど。
グラナスさんもぼくを待っているかなぁ。そうだといいな、と思っていたら実咲が大きな声でぼくを呼んだ。
「おにいちゃん!リョウタくんとタクミくん、来たよ!」
ぼくたちはいつもと同じく大きな大きなテレビの前で、ゲームを始めた。あんまりテレビに近づいたらいけない約束なので、テレビの前に置かれたソファに座ってゲームする。
「おい、誠。ぼやぼやすんなよ。」
熱中したリョウタが僕を急かす。
「ごめん、ごめん。ちょっとミスった。」
「誠は後ろから来ればいいよー。そのための後衛ジョブだろう?」
タクミがコントローラーを操作しながらのんびり言う。
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