第2話 いつもの日常

12月26日 AM7:50



時間にいつもの駅。


いつものホームの立ち位置にいつものタナー。


(あー、寒いっ!電車まだー??)


スーツの右ポケットに潜り込んだタナーが騒いでいる。


「 あと5分ってところだな。」


(早く電車に乗りたーい!)


俺は全く乗りたくないのだが。


「あんな満員電車の一体何がいいんだよ?」


(んー、電車の中は寒くないから!)


ですよね。そんな理由ですよね。


【電車がまいります】と、電光掲示板に文字が浮かぶ。


俺からしてみれば、【いつもの日常がまいります】に見えなくもない。


(やっと来たね!1分くらい遅れてるんじゃないの!?)


タナーのいうとおり、ホームの時計を見る限りでは1分遅れて電車が到着する。


だが残念ながら、それさえも含めて、いつもどおりの日常なのだ。


「ドアが閉まりまーす。ご注意下さい。」


気が抜けたような、車掌の声が、


いわば【いつもの日常】の始まりの合図でもある。


足のやり場に困る。


手のやり場に困る。


満員電車とは本当に窮屈なものだ。


スマートフォンで通勤時間を潰そうにも、


そもそもスマートフォンをポケットから取り出せない。


ふと気になって、スマートフォンを持っているか確認するため、


ポケットに入れているスマートフォンに意識を集中してみる。


あれ?おかしい。


いつもはスーツの左ポケットに入れるはずのスマートフォンだが、


今日は誤ってタナーが潜っている右ポケットに収納してしまっていたようだ。


さぞ、ポケットとスマートフォンの狭間で揉みくちゃにされていることであろう。


すまんな。



AM8:20


会社最寄りの駅に降り立つ。


(酔った)


タナーは乗り物酔いが酷い。


(あたし、今日こんなんで働けるのかな・・)


「働くのは俺なんだけどな。」


(気持ちだけでも働いてる気になってるんだよ☆)


何なんだよ、その☆マーク。


(あ、大島さんって人からメール来てたよ。バイブの振動でマジ吐くかと思った。)


「ああ、今日飲みに行くんだったな。」


(とりあえずさ、まだ時間あるから一服してから行こうよ!)


「何様なんですか。」

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