第2話
私は今日から医学部付属樹木病院という不思議な病院の研修医として働くことになった。
自己紹介をすると・・・
「そこの研修医!」
「なんですか?」
「今人手が足りないの、手伝って!」
ごめんなさい。ちょっと仕事に戻りますね。
「わかりました〜」
この病院では人間と同じような薬は処方しない。なんせ、人間相手ではないからだ。
じゃあ、何を相手にしてるかって?
――樹木に決まってるじゃん。
題名にもあるでしょ?まだ(仮)だけど。
「そっち終わった?」
「終わりました!」
「じゃあ、休憩していていいわよ。」
「は〜い。」
それじゃあ、自己紹介をしておこう。
「研修医!」
「はい?」
「これはなんなの!?」
「普通に手当しただけですけど?」
「こんなんじゃダメに決まってるでしょ。」
毎日こんな有様である。
「・・・お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
ナースの近藤さんはぐったりしている。仕方ないだろう。先程も言っていたが、この病院には私を含めて4人しかいないのだから。
普通ならこの病棟封鎖されるはずだ。なのにこの病院は全く閉鎖される気がしない。
ざっとこの病院について話したところで、私の自己紹介をしようと思う。
私は小林 祐(こばやし ゆう)だ。1か月前にこの病院の配属になった。何故か私の所属する医学会ではトップクラスの病院になっている。
――こんな変な病院になんの価値があるんだろう。
いつもこう思う。
あとは、一応近藤さんも紹介しておこうと思う。
彼女は、看護師として働いているが元々は医者だったという噂がある。しかし彼女は
「ただの噂だよ。」と言う。
他のふたりはおいおい紹介するとして、俺は研修中である。
――何故か看護師として。
おかしいと思わないか?医者だったのに看護師の研修をされてるんだよ?
「そう言えば・・・この病院って医者がいない気が・・・」
「新人、ようやく気づいたかい?」
「近藤さん?」
「ここは病院という肩書きだけど、実は研究施設の一部だと思うんだよね〜」
「その根拠は・・・?」
「えっ・・・?」
「根拠あるんじゃないんですか?」
「?」
首を傾げる近藤さん。
「研究施設じゃないんですか・・・?」
急に笑い始めた。
「じょ、冗談だよ? うふふふふふ。」
「またですか〜」
研修医(ナース見習い?)として働いて1ヶ月、ほぼ毎回のように冗談を言ってくる。
「よくネタが切れませんよね〜」
「オバチャンのネタ袋なめんなよ?」
なんか嫌なんだよな・・・この人。
「なんで、嫌そうな顔するのさ〜」
「してました・・・?」
「顔に思いっきり書かれてるよ。墨で。」
「はい?」
「墨で書かれてるよ。」
そんな訳ないと思った。また、冗談と思った。
「また、冗談ですか?」
「違う違う。マジで。」
「鏡って・・・」
「確か・・・」
バッグから手鏡を出してくれた。
「ほら。」
鏡で自分の顔を見てみると、おでこのとこにでっかく『嫌!』と書かれていた。
「何じゃこりゃ!?」
「書かれてるでしょ?」
「は、はい。」
今日も騒がしい日である。
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