第4話 入れ替わりの真実!そして二人の同居生活が始まる

「そうですか。まさかこの目で見る事になるとわ」

「そうね。まさかこの子が」


 そう言ってるのは新道夕子、翔子の母親、敦子と

父親の義雄(よしお)だ。

 二人共和服を着ており、義雄は現役の神主で

母も巫女だ。

 その二人はずっとこの夢見町に住んでいて

二人は入れ替わりの事を知っていた。


「というのがその夢見ヶ丘校の言い伝えだ。もちろん

知ってるものは少ないがな」

「そんな言い伝えがあるなんて。でも、私達

口づけなんてしてないよ。ねぇ紫藤君」

「ああ、そんな事しなかった」

「二人は気づいたら倒れたのよね?かぶさるように」

「うん。私、元の私が上で、彼が下になった

状態だった」

「じゃぁその時にしちゃったんでしょう。二人が

気づかなかっただけで」

「・・・」

「それで入れ替わったのは納得がいくね。でも

それじゃそこでまた口づけしたら元に

戻るんじゃないの?」

「私達もそう思ってたわ」


 実は敦子達も入れ替わりをしていたみたいだ。


「元に戻ったのは一年後だった。その場所で

口づけをし、戻った。その頃には二人共

愛し合っていたからな」

「じゃぁ私達も一年たたないと戻らないの?」

「そうなるかな。まぁ他に方法がないわけじゃ

ないかもしれないが、今のところはその

方法しかない」

「一年。俺は女で新道が男のまま」

「最初は大変だと思うけど、少しずつなれて

くると思うわ」

「慣れてたまるか!!」

「紫藤君!?」

「俺は人が嫌いなんだ!誰とも仲良くなんて

なるか!友情も恋愛もそんなものは俺には

必要ない」

「紫藤君!!」


 紫藤は勢いよく外に出てしまった。


「夕子、彼はどんな性格なんだ。初めは

真面目そうな感じがしたが」

「・・・お父さん、お母さん、彼は」


 夕子は紫藤の事を話した。紫藤は孤児で

両親がいない。

 今は古いアパートで一人暮らしを

しており、自分が親に捨てられた事をは

聞かされていて、それから一人で生きていく事を

決めた。なので紫藤は誰とも仲良くなったり

しないようにぼっちを選んだ。


「そうなの。彼もつらい道を歩いているのね」

「それならなおさら助けてやらないとな」

「お姉ちゃん、紫藤先輩を追って」

「わかった。行ってくる」


 夕子は紫藤を追って行った。その紫藤は

家を出て自分ではだいぶ走った感じで

息も切らしているが、実はそこまで遠くに

行けてなかった。


「くそっ!女の体のせいか!全然走れん!!

もう息も切れるし、くそっ!!」


 紫藤は大声で怒鳴った。田舎のこの町。周りは

田んぼで、大声出しても騒音にはならなかった。

 でも、その声は夕子に聞こえていた。すぐに

夕子が走ってやってきた。


「紫藤君!」

「新道!もう追いつかれたのか?」

「・・・すごいね紫藤君。あんなに早く

走ったのに全然疲れない。まだ慣れてないから

体は重いけど」

「・・・お前はもっと、体力をつけろ!

それと体重も減らせ」

「今はできないよ。紫藤君がしてくれるなら

別だけど」

「ああしてやるよ。もう走れん」


 紫藤は道端に仰向けに倒れた。すると夕子が

かぶさってきた。


「邪魔だ」

「どかない。どいたらまたどっかに行くでしょ」

「少ししたらな。今は動けんからどけ」

「やだ。ここはほとんど人も通らないし

誰にもみられないから」

「さすが田舎だな。たった二つ駅が違うだけで

こうも違うのか」

「そうね。でも、私は都会より田舎の方が

好き。静かだし」

「そこは俺も同じだ。だからこの町の学校を

選んだからな」

「そうなんだ。だったらここに住むのも

悪くないよね」

「・・・そうだが、俺は一人の方がいい」

「私は紫藤君と一緒がいい。あなたの過去を

知ったからっていうのもあるけど、でも

それ以上に紫藤君に興味が出てきたの」

「それは入れ替わったせいだ。入れ替わらなければ

俺になんて興味はないはずだ」

「そうでもないよ。実は私、少し紫藤君に

興味があったから。同じクラスで同じ感じが

したから紫藤君は」

「ただの同類みたいな感じだろ」

「そうかもね。でも、私は容姿とかより

紫藤君自身の事の方が興味あったから」

「もしかしてそのせいで入れ替わったのか?」

「そうかも」


 夕子は笑いながら言った。その笑った顔を

紫藤は初めて自分の笑顔を見た。

 

「帰ろ。お母さん達も心配してる」

「わかった。悪かったな取り乱して」

「ううん。しかたないよこんな状況だしね」

「そうだな。あと、俺の声で女の口調で

話すのは止めてくれ普通にキモイ」

「努力するよ」

「ああしてくれ」


 二人は立ち上がり、家に戻った。紫藤は

敦子達に謝り、これからこの家にやっかい

になる事になった。

 翌日の休日に紫藤は荷物を夕子の

家に運んだ。そして、この事を二人は

学校にも伝える事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る