第2話 いきなりミスる二人!?

 二人は教室に戻るとさっそくやらかした。それは

いつものくせの様に紫藤の席に夕子が夕子の

席に紫藤が座ってしまった。

 それに気づかない二人。黙って入って来てしかも

席が違う。クラスの中は沈黙状態になった。


 その沈黙を破ったのは夕子の席、つまり紫藤の

姿をした夕子の隣の子が話しかけてきたのだ。


「ねぇ、そこあんたの席だったけ?」

「!?」

「そっちもだよな、そこ確か紫藤の席だぜ」

「!?」


 二人はようやく気付いた。心の中では慌てたが

そこはいつもぶっきらぼうな態度をしている

だけあって、表の表情は無だった。

 そっと席を立ち、二人は交差し紫藤が

耳打ちする。


「出直すぞ」

「ええ」

「お前が声をかけろ。こっちの方が話すと

へんに感じるだろ」

「わかったわ」


 話した通り、紫藤の体をした夕子が紫藤の

口調で話し出す。


「すいません、ちょっと出ます。こいつも

連れて」

「お、おい授業中だぞ!」

「すいません。欠席扱いでいいです!

行くぞゆ、新道」

「わ、え、ええ」


 紫藤も夕子の口調をマネする。それは

紫藤にとっても夕子にとってもすごく

恥ずかしいことだった。

 二人はそのまま教室を出る。その光景に

クラスメイト達はざわついた。


 その当人達は屋上に向かった。


「くそっ!しくじった」

「ま、まさかあんな事をするなんて」


 二人は悔しがっていた。いきなりあんな

ミスをしたことに。


「やり直しだ」

「そうだけど、すぐに戻ったら怪しまれない?」

「どのみち怪しい関係だってもう思ってる

だろうからな。俺らは無視していればいい」

「そうね。そうなると私達ぼっちよかったわね」

「そうだな・・・まぁいい。時間ができた

からな。もう少し話し合うぞ」

「わかったわ」


 二人は何度も互いの事を覚えようとしていた。

 いつもの歩き方、よくやるしぐさなど

本当に細かく話し合った。

 そうしてるともう午後の授業に入ろうと

していた。二人はすぐに教室に戻った。

 休み時間になら、慌てず間違えなく自分の

席につけるからだ。

 当然、クラスメイト達は笑っているが

二人は無視をする。


 そうしてようやく授業が終わり、放課後に

なった。二人はすぐには動かない。

 ここで慌てて二人で出たらそれこそアウト

だからだ。

 いつものように夕子はゲームをして

紫藤はただ窓の外を眺めていた。そうして

教室には二人だけになった。もう夕方だ。


「帰るぞ」

「ええ。でも」

「心配ない。もうミスはしない」

「そうね」


 二人は教室を出た。グラウンドでは

部活をしている生徒が多い。

 それ以外の生徒は速やかに下校

している。

 ここは丘の上にあるので、けっこう

坂道を下っていかなければならない。

 下りたらそこから田園道を歩き、少し

して最寄りの駅が見える。そこから電車で

帰る生徒もいれば、ここが地元なら

駅の反対側に言ったり、バスを乗ったり

する。

 

 夕子はこの夢見町が地元なので、駅の反対側に

向い、そこから数十分行ったところに

夕子の家と神社がある。

 紫藤は夕子の家に行く事にした。神社を

やっている家なら何かこんな不可思議な

現象を乗せている本があるかもと思って

来たのだ。

 

「ついたわよ」

「待った」

「何?」

「俺から行く。お前、俺の姿でただいまって

言うつもりか?」

「!?そ、そうね。自分の家なのに」

「しかたない。今は我慢だ」

「わかったわ。じゃぁお願い。部屋の場所も

わかるわよね」

「ああ。とりあえずな」


 そうして二人は中に入った。紫藤が

夕子の口調で言う。


「ただいま」


 それは普段の紫藤と変わらないが声と

体が違うので紫藤は恥ずかしいと

心の中で思っていた。

 靴を脱ごうとすると誰かがやってきた。


「お姉ちゃんお帰りってその人誰!?」


 やってきたのは夕子の妹で中学三年の

新道翔子(しんどうしょうこ)だ。

 夕子は髪が少し長いが、翔子は髪が

短い。でも胸は夕子より大きかった。いわゆる

ロリ巨乳だ。

 

「え、えっと同じクラスメイトの紫藤潤君」

「紫藤潤だ。よろしく」


 夕子は妹に何言ってるんだろうと心の

中で泣きながらツッコんだ。

 

「そっか、ついにお姉ちゃんにも彼氏が」

「ち、違うから。ただのクラスメイト」

「そういう事にしとくね。紫藤お兄さん

お姉ちゃんをよろしくお願いします」

「翔子!!」

「じゃぁ部屋に戻るね。あ、声は小さくね」


 翔子は自分の部屋に戻った。二人も

とりあえず夕子の部屋に行った。 


 部屋に入り、ようやく落ち着いて

座った。

 

「たいへんだな。出来の良い妹がいると」

「そうね。でも、助かってるわ。私は

こんな性格だけど、妹はちゃんと話して

くれるから。外では一人だけどここでは

一人じゃないからね」

「そうだな。なぁ妹には言っておいた方が

いいんじゃないか?誰か一人だけでも

知っておいてくれる奴がいたほうが何かと

心強いと思うがな」

「でも、いくら妹でも信じてくれるかしら」

「説得するしかないさ」


 二人は翔子に話す事にした。そして

翔子の出した返事は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る