第ニ話 強くて、弱い。

あー喉渇いたー

おもむろに冷蔵庫を開け、飲み物のラックを物色する。

コーラにしよ。あ、あとポテチもいるなぁ

たけのこの山脈も欲しい!

コーラ!ポテチ!たけのこの山脈!

コーラ!ポテチ!たけのこの山脈!

コーラ!ポテt...


って俺なにやってんだよw

思わず自分の訳の分からないテンションにニヤけてしまう。俺はあれだ、家ではテンション崩壊してる系男子だ。


さー部屋にこもってゲーム、アニメ三昧だー!!


そう言って部屋に行ってPCを立ち上げ、ギャルゲーを起動させる。いつものように。


カチャカチャカチャカチャ...









(外でカラスの鳴き声がする)

カーカーカー




そろそろ終わりにするか。丁度全ルート終わったぁ。そーいえば、もうすぐ新発売のゲーム機PZ5の発売日だったよなー

金ないし、バイト始めようかな。


親のすねをかじるみたいなのが嫌で、お金をねだることはしなかった。

というかそもそも、家は金持ちだけど、実際に俺自身が金をいっぱい持ってる訳じゃない。親に言わないとお金は貰えないし、そもそもその肝心の親が家に中々帰ってこないから、お小遣いとして毎月支給される1万円で全てやりくりしていかないといけない。でもその1万円はゲームのソフトですぐに消えるから、お手伝いさんの内緒のお駄賃で飲み物を買ったりしている。



まあでもどこかに友達と遊びに行くことはないし、普通の高校生よりは金を使っていないと自負している。あ、これは切ねぇわ(泣)




近くにファミレスがあったから、そこでバイトする事にした。シフト表を渡され、働く日程を決める。



─バイトシフト表─


中田浩

山木梨沙

黒沢あみ

島崎凛華

軽部健太

城野豪

前沢凌生

篠沢遼

・・・






え、マジかよ。


島崎凛華、こいつは朝にいつも挨拶してくる奴だ。好感度狙いで。1年の時クラスが同じで、2年になってたまたまクラスが同じになった。



まあ誰かは同じ高校の奴いるだろうなと思ってたけどよりによって島崎凛華かよ!

バイトしてるんなら金あんだろ...

それなのに俺に寄ってくるって金の亡者かよ!

あー、ツいてねぇなぁ...今更バイト変えるのもめんどくさいし、日程ずらして入れるか...

でも会うよな...

まあ我慢だな。


そう思いながら、バイトの日程を決め直す。


てかこいつ働きすぎだろ。一体何時間入れてんだよ。そんなに金が欲しいのかよ。


入れられるとしたら夜遅いなぁ。

しょうがないか...








そしてバイトが始まった。ファミレスのバイトはそんなに難しいものでもない感じで無理なく出来そうだった。まあやりがいもあるしいい感じかな.....


島崎さえいなければな!!





洗い物の最中に島崎がバイトにやってきた。





「え??篠沢くん??バイト??」



いや見りゃわかるだろ、



そう言いたかったがその気持ちを抑えて精一杯の作り笑顔で、うん!と答えた。



「金持ちなのにバイトなんかするんだー」


「なんか親のスネかじるみたいで嫌だから、自分が欲しい物は自分で稼いで買うようにしてるんだ。」


「へぇー!偉いねー!さすが篠沢くんだね!」


「そうでもないってー」


「じゃ、着替えてくるねー」


「お、おう」



しくった、親のスネかじるのが嫌ってほんとの事言わなくて良かったのに!金持ちの余裕感出てるし!!




てかあいつクマすごい出てたな...

まあいいか...





その日はたまたま帰る時間が一緒だった。

時間になった途端、島崎は憔悴しきった顔で足早にファミレスを後にした。

あまりにも急いでいるようだったので、様子が気になってあとをつけた。



・・・




居酒屋!?まさかあいつここでもバイト??

もう夜10時だぞ...

こんな時間から高校生が働いていい訳ないだろ...明日学校もあるのに...



あいつ大丈夫なのかよ...

その日は自分もバイトが遅くまであったので家に帰った。



次の日、学校に行くと島崎は大きな声で挨拶してきた。



「篠沢くんおはよ!!」



「あ、おはよう」



そして友達の方に走っていった。



あいつすげぇw疲れない能力でも持ってるのか?

4時間目に体育でバスケットボールをしたけど、キビキビした動きでドリブルをしていた。部活は確かソフトボール部って言ってたな。てか部活もしてバイトも掛け持ちしてってすげぇタフだな...







家に帰るとバイトに行く支度をする。って言っても特に要るものがあるわけでもないが。



バイト先に着くとエプロンを着て、できた料理を運ぶ。島崎もあとから来て、俺に軽く挨拶して同じように料理を運ぶ。

でもどこかぎこちない足取りだった。




バイトの時間が終わると、島崎はいつものように急いで走って出ていく。今回も後をつけることにした。その時、




「きゃっ!」




ふらっと島崎は体勢を崩し、コケるようにして車道へ飛び出した。

























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