教室の獣(原作:芥流水@noname)
ようやく秩父を使うことができました。本決まりになったのは、「秩父のどこかに狛狼がいたはず」といううろ覚えの知識から、三峯神社を発見したときですね。これっきゃない、と。
埼玉を好んで使う理由の一つとして、東京や海という対置物を用意しやすいからというものがあります。逆に「川は流れる」(リライト)がそうだったように内陸の奥……山へと向かうと、わたしの話ではたいてい大変なことが起こります。マーガレット・ミラー言うところの「怪物領域」ですね。
本編の話に入りましょう。まず、自分が着目したのが教室と獣という組み合わせでした。これを自分なりにどう噛み砕いて意味を持たせるかというところから出発しています。結果としては先述の三峯神社と、旧大宮学校というこれもまた秩父の歴史に助けられた格好です。旧大宮学校はフランス特命全権公使アルチュル・トリクーの支援によって建築された洋風建築です。学校、それも洋風ということで、近代の象徴とするにはうってつけでした。それに狼を前近代の象徴として対置しています。ここにはもちろん近代になって姿を消したニホンオオカミのイメージも重ねられています。司祭が出てくるのは、(日本人にとって)近代的権威の象徴であると同時に作者=神のメッセンジャーとなってもらうためですね。
また、作中でも述べられているように、害獣を捕食し、夜道で人を見守る(いわゆる送り狼)ことから狼が神聖視された日本に対して、ヨーロッパ諸国では基本的に狼は邪悪な存在とされています。ですから、狼と対峙するのは司祭でなければならなかった。
プロットとしては同じくホラー要素のある「死神の通告」と似たようなことをやってます。シチュエーションを反復させ、パターン化してるんですね。この辺はもろ趣味が出てます。黒沢清とか、デイヴィッド・ピースとか、あるいはくりぃむしちゅーのオールナイトニッポンなんかからも影響を受けてるかもしれません。内容よりシステムとかパターンの方に注意が向いてしまいます。
コズミック・ホラーは何作か読んでるはずなんですが記憶がうっすらです。しかし、先述したデイヴィッド・ピースがラヴクラフトも愛読してたりするので、影響がまったくないこともないかも。
長々と書いてますが、それだけいろいろ考えながら書いたということです。やってることは割といつも通りなのですが、そこに行き着くまでに四苦八苦しています。
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