狐と猟犬
翌日!
備品管理部別室は軍曹と、大槻副司令の二人により運用されていた!
「感あり。フォックス1ポスト」
「ふむ。こんな時に。我々の都合はお構いなしか」
「mrp値上昇。22……25……30……なお上がる」
「部内警報デフコン1。やれやれ、マニュアルは読んで来ているが少尉のようにはゆかん。頼りにするぞ軍曹」
「了解。いつも通りに進めます。明日は平日ですし、とんでもないことにはならないと予想します」
「そう願おう」
***
>本日のストーム24、「このひとのお題でやりたい!」的な要望を募集します。
>票が集まったひとに突撃してきます。
>かなり票が割れそうなのである程度独断と偏見が混じるかもです。
>採用できない可能性がでかいのでお気軽に。著名人は勘弁してください。
>あと突撃して怒られたら慰めてください。
>ではどうぞ。
「これはまた……妙な動きを」
「大物配信者や人気の絵師、歌い手が選ばれたら、参加者数も回線負荷もハネ上がる恐れがありますね……申し訳ありません副司令。早速自分の予想は何の参考にもならなくなってしまいました」
「謝ることはない。化かすのが狐だと聞いている」
「恐縮です」
「今日は正規人員が君だけで、私もサポートのスキルがない。司令からは回線賃貸の予算は必要なだけ使って良いと言われている。君が安全だと思う範囲で十分な回線を押さえて、サーバーや基地局へのダメージを回避するように頼む」
「了解。石橋を叩いても渡らない勢いで」
「いや……最終的には渡り切らないと困る」
***
>お題を決めて24時に創作をPOSTをする遊び
>『ストーム24』
>32回目の今夜のお題はりょうどなりさん (@ryodonali) 提供
>
>『焦燥(感)』
>参加表明不要の自由参加です。
>#stom24 のタグをつけて下さい。
>お題にまつわる内容であれば単語そのものは入ってなくてもOKです。
***
「ふぃー……mrp値、規定値を割り込みました。回線負荷、オールグリーン。全て問題なし」
「ご苦労。良くやってくれた志村軍曹」
「今晩だけで回線貸与料を一千万円近く使ってしまいましだが」
「君がバイパスを用意したどの回線も、耐荷重限界に近い値になっていた。メンバーがいれば適宜圧力の落ちた回線に負荷を回すことで賃貸回線なしにコントロールが可能だったかも知れないが、今日はそうではなかった。君は与えられた権限の中で必要な手続きをし、任務を遂行したのだ。問題はない」
「ありがとうございます副司令」
(言いたいことは分かるけど、話長いな。副司令)
***
「クローズも全て完了です。お疲れ様でした副司令」
「ご苦労だった、軍曹」
「終わったか」
現れた司令の石野に、二人は立ち上がって敬礼する。
「司令! お疲れ様です」
「お疲れ様です。たった今無事終了しました」
「ご苦労。直れ。軍曹……その後、犯人について何か分かったか?」
「いえ……出勤してすぐ狐が動いたもので。 」
「そうか……」
「フォックスハンティング、か……」
「ほう。今もあるのか。懐かしい遊びだ」
軍曹の独り言に、そう反応したのは副司令の大槻である。
「懐かしい?……何がです?」
「何か知ってるのか?」
「は?……フォックスハンティングでしょう? 学生の頃は仲間と良くやったものです。秋葉原で部品を集めて」
「部品? 密造銃で……狐狩りを?」
「何を言っとる。銃などいらん。無線遊びだぞ」
「無線遊び?」
「どうも話が噛み合わんな。フォックスハンティングは狐役が発信器を、ハンター役がアンテナと受信器を持ち、電波を使って行う広域の鬼ごっこだ」
「電波の鬼ごっこ……」
「高指向性アンテナで定点観測や三角測量をして狐を捕まえる……」
「そうか! それだ‼」
軍曹が叫んだ!
「説明しろ。軍曹」
「はい司令! ストーム25は違法中波放送なんです! 周波数は割れてるから次の放送の時に十分離れた二箇所から高指向性アンテナで三角測量すれば……」
「なるほどな。ストーム25の発信元が割り出せる」
「タイミングから言って、少尉を撃った犯人はストーム25を調べられたら困る奴だと思うんです。発信元からそいつらの正体が判れば……」
「次の放送は?」
「確定ではないですが……金曜、土曜の夜の開催が多いようです」
「つまり早ければ明日の夜、か」
石野は少し考える素ぶりをしてから、二人に告げた。
「備管別がストーム25を探っていたことを知る関係者は限られている。ニーズトゥノウの原則に基づき、ストーム25発振源調査作戦は私が直接指揮を執る。副司令」
「は」
「作戦の実施要綱を作成し、必要な機材を手配せよ。ただし参加するスタッフは最低限。私と君。そして備管別の軍曹と二曹の四人で、奴らの正体を暴く」
「心得ました。草案と必要機材の見積もりを明日ヒトヒトまでに。承認が頂ければ全ての準備をヒトロクまでには」
「それで頼む。軍曹」
「はい!」
「明日は二曹と通常業務に当たりつつ、副司令の作戦準備をフォローせよ。副司令から指示があり次第、ここは二曹に任せて機材を集めて作動をチェックするんだ。今日の明日で連続開催もあるまい」
「了解!」
「作戦名が欲しいですな。要綱のタイトルに」
石野は口元だけで笑みを作って宣言した。
「本作戦を、フォックスハウンド作戦と呼称する」
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