CAUTION FOXY WEDDING
内閣調査室の上級分析官だった仲本二曹!
彼女から語られる暗殺兵器「マウス22C」の恐ろしい正体に驚愕する少尉と軍曹!
その時! 備管別のメインモニターに、三度謎のメッセージが表示された!
【WEDDING】!
結婚式を意味するその単語の真意は、今だ謎に包まれていた!
「少尉! えーと……実地評価試験中の例の逆探エージェントを試して宜しいですか?」
「評価試験? ……ああ、あれか。許可する。タワー1以外は一斉セキュリティスキャンを実施。二曹、アプリを落とせ」
「さあて……元気よく行ってみようか! 『Seek係』!」
「軍曹。そのネーミングセンスは……いや。なんでもない」
メインモニターに軍曹の呼び出したアクセスの逆探知ツールが展開される!
次々と開くウィンドウ、流れるようにチェックされてゆく自己診断項目、軍曹の操るタワー1のベンチレーターファンが唸りを上げる!
だが、二曹はその様子に訝しげな声を上げた!
「Seek係……? そんなツール聞いたことありません。ここには最新バージョンの逆探知ソフト『ハイダーシーカーver4.2』が納入されてる筈ですが」
「あれね……インテリがインテリの為に作ったようなソフトで。ハッキングの前線じゃ……多分作った人、あんまりハッキング詳しくないんだよ」
「そんな筈ありません。シーカーのver4.2は現存する逆探知ソフトの中では最高の速度と最高の実効追跡力を持つソフトです。素人が趣味で作ったようなソフトをリスクを冒して使うべきではありません。これは重大な違反行為では?」
「軍曹が必要だと言うなら必要なんだ。責任は私が持つ」
「納得行きません。スキャンが終了次第、タワー2からシーカーで逆探知を試みても?」「軍曹」
「構いませんよ。食うソースだって知れてます。それで二曹が納得行くなら。……にしてもなんでそんなにシーカーにこだわるの?」「……ブート完了。シーカー解凍。不正テキスト逆探知開始」
サブスクリーンBに仲本二曹操る「ハイダーシーカーver4.2」のコマンド用ダイアログボックスが次々と表示され、二曹は手際よくソフトに指示を出して行く!
Seek係とハイダーシーカーver4.2!
二匹の電子の猟犬は鎖を解かれ、データの風が吹き荒れる情報の荒野に今! 駆け出して行った!
「ははぁ……なるほど」
追跡ツールのログを辿りながらそう唸ったのは軍曹である!
「何か分かったか?」
「こいつ、ダミーPCのwifi経由でメインスクリーンのシステムに侵入してます」
「備品管理室名義のダミーPCに……スキャンに掛からない訳だ」
「見てください少尉。モニター自体のエラーメッセージに擬態してテキストを表示してますね……考えたな」
「ということは、飽くまでメッセージを送ることのみが目的……」
「みたいですね。追跡状況のイメージをメインに出します。……ラインは回線、四角は中継サーバー。四角の大きさはサーバーの規模に比例してます」
「六角形の点滅アイコンがシーカー。二頭身の清掃員みたいなのがSeek係……か」
基地サーバーを抜け、市の中枢サーバー群を目指すSeek係のアイコンに、点滅する六角形が追いついた!
少尉は、ふむ、と感心の息を漏らした!
「シーカー速いな。追いついたぞ」
「当然です。シーカーの本バージョンの追跡速度は民生ソフトの約30倍です。Seek係さんとやらも同人ソフトの割には頑張っていると思いますが」
「珍しいな。軍曹が黙るとは」
「……え? 何ですか? 自分に何か?」
「ぼうっとするな。状況中だぞ」
「TLを監視してたんですよ。逆探知の様子をじっと見てても意味ないです。エージェントを放ったら基本結果待ちなんですから」
「まあ……そうだな。軍曹が正しい。どれ位掛かる?」
「さあ……犯人がどれくらい遠回りしてるかによりますが…2、3時間は」
「軍曹、TLの様子は?」
「関連ポストなし。mrp値0.36。回線負荷、安全レベル」
「二曹、笠岡は?」
「先程の連投以降、沈黙を守っています」
「追跡ソフトの結果待ち、か」
「不正アクセス……これが初めてではないんですね? 軍曹が以前仰ってた24時の出来事がこれ……ですか?」
「ああ。一回目がCAUTION、二回目がFOXY……今回のWEDDINGが三回目だ」
「CAUTION FOXY WEDDING ……色っぽい結婚式に注意せよ?」
「アレかな? ケーキのハリボテからビキニ美女が飛び出す奴」
「それはスタッグパーティ。新郎と男友達がする前夜祭だ」
二つのアイコンは、Seek係に対しハイダーシーカーがリードを守ったまま海に出る! その瞬間、イメージの地図は切り替わり世界地図が表示された!
「追跡イメージの縮尺が……広域に。海外サーバーを経由しているということか」
「ですね。思ったより時間がかかるかも」
「……シーカーが遅くなった?」
「リオデジャネイロの国営通信局でしょ? あそこは言語がCOBOLでプロトコルも古代遺産のFTPオンリーだからくぐるの大変なんです」
「も、問題ありません。シーカーもマルチランゲージ対応くらいしてます! COBOLだろうがABAPだろうが時間の問題です」
「相変わらずシーカーがリードはしているが……。あ、Seek係がリオデジャネイロに入ったぞ。……おおっ!」
「どうして⁉ 殆ど引っかからずに……抜けた…?」
「ふっふっふ……二曹。そしてハイダーシーカーver4.2! せいぜい三日天下を謳歌するがいい。次回、Seek係の餌やりバケツが火を吹くぜ! ……つづく!」
「勝手に番組終わりみたいなキャプションを入れるな。状況中だ」
「いや、ここは『つづく』かなぁと思いました」
「わけのわからんことを言ってないで、一度休憩に入れ。長丁場になりそうだ。今のうちに交代で食事を取ろう」
「了解」
「その間二曹は笠岡からの転送データとwebの動静、回線負荷観察を受け持て」
「了解。コンビニまで降りますけど、なんか要ります?」
「大丈夫だ」
「私も。お弁当ありますので」
「じゃ、休憩頂きます」
「60分だ。ショートするなよ」
「了解」
「軍曹、いつもあんな感じなんですか?」
「今日は比較的マジメだな」
「……大変ですね」
「優秀な情報技官ではある」
***
「只今戻りました。少尉、次ご飯どうぞ。……変わりありませんか?」
「……ありません」
「ありゃりゃん。どしたの二曹。不機嫌?」「シーカーとSeek係の差が詰まって来てるんだ。シーカーはローカルサーバーで度々……」
そこまで言い掛けた少尉は軍曹の肩に小さな生き物を認めて息を飲んだ!
白い体毛に覆われた握った拳ほどのその生き物の尻尾の先はしかし、家庭用コンセントの差し込みプラグになっていた!
少尉が叫ぶ!
「軍曹‼︎ 右肩にマウスだ! 払いのけろ!」
「え?」
「コンセント! きゃぁっ‼」
「うっ⁉︎」
二曹の悲鳴の中、軍曹が首筋を押さえて倒れる!
少尉は駆け寄って軍曹を助け起こした!
「軍曹! しっかりしろ! 志村軍曹! 軍曹‼︎」
だが、軍曹は答えない!
不正テキストの発信者の目的は⁉︎
マウス22Cを強奪した犯人の正体は⁉︎
そして、軍曹の運命は⁉︎
つづく‼︎
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