第2章 『憧れと依存と』
第7話『琥珀と蓮 ②』
「
蓮は、音大ビッグバンドジャズ
一方で、琥珀はパートの
「
最高のライブのための、綿密な練習。蓮はそれを先導しつつ、またバンド内で一歩引いた視点で調整役を買って出ている。その姿が、琥珀にとってはとてつもなく
昔から、琥珀は蓮に何かと
そんな琥珀を、見捨てずにいてくれる存在が、蓮なのだ。
琥珀は蓮のようにしっかり出来ないのだ。
バンドリーダーとの打ち合わせ、パート内での指示。もちろんすべてが
蓮自身の個人練習での際も。
「……ここ、出しゃばりすぎるかな。もっとコンパクトに」
「あ、琥珀。今晩はグラタンね」
アパートでの
料理を琥珀がやろうとすると、油に火が付いたりと危なっかしくて、蓮は落ち着いてみていられないらしい。琥珀自身、それは分かっているし、自分自身の練習も蓮ほど効率よく出来ない。だから、量をこなしてようやく追いつこうとする。
蓮において行かれないように。
琥珀自身、無い物ねだりだということは分かっているのだ。それでも、蓮のようになりたいとあれこれ
蓮は、それを許してくれた。その
「琥珀が居てくれるだけで良いのに」
そう蓮は言ってくれる。もちろん、それは
「そんなわがままを言えるのも、琥珀だからこそなんだから」
「
蓮のその言葉さえも
無い物ねだりなところがあるから、琥珀は蓮に甘える。蓮がそれを
特に目立つのが、アパートに帰ってきた時だ。
「琥珀、ひっついたってご飯はすぐには出ないよ」
家族ゆえの甘えだろうか。感覚としてはそれが近いだろう。何となく、蓮には母性のようなものを感じるのだ。蓮が世話焼きな性格なのも相まって。
「下ごしらえ、手伝ってくれる?」
蓮がエプロンをしながら言うと、琥珀は大人しくそれに従う。琥珀も、包丁の
とんとんとん、とみじん切りの音。
じゅうううう、と
その間にも、
こんなささやかな時間が、琥珀にとって甘えられる時間だ。もうすぐ成人するので、
一方で、蓮も全てが完璧な訳ではない。
蓮は手堅いアプローチを好むが、その分、
「ああ、琥珀、わざわざごめんね」
そう蓮が
だからこそ、引け目をそこまで深刻に感じたことはない。これでようやく、自分自身が蓮の
蓮が
それは、
本人は無自覚だが、琥珀もただ蓮に引っ張られ続けている訳ではない。むしろ、蓮を引っ張ることさえあるのだ。
例えば、夕方の
「んー……」
蓮が、スーパーの安売りのチラシと
「マーボー
「あっ、いいね。ちょうど一丁100円切ってるし、それにしよう」
例えば、大学の学年バンドでの練習中。
「今日のパート練習メニューは……」
これもまた、サックスパートのパートリーダーとして、練習メニューを立てるのが日課なのだが、この日は難航していた。
そこに、自主練をしていた琥珀がやってきた。
「蓮、昨日ダメ出しされたソリの集中トレーニングしたいんだけど、手始めに音階練習したい」
「あ、そうだね。じゃあ、そこを
そんな風に、琥珀の
琥珀は気づいていないが、蓮はそんな琥珀を信頼しているのだ。
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