第4話 『森宮 継 ①』
一方で、女子を中心に
一八
「え? みんな好きだよ?」
という答えが返ってくる。もちろんそれだけなら、まだ
「なんかこう、男の子でも女の子でも、ドキドキしちゃうことあるよね」
そう、彼は簡単に相手と手を
これもまた、父は社務所での話し合いのネタにしているし、
よく言えば『親愛』だろうか。それにしてはスキンシップが多いと周囲に言われる。妹である結でさえも。
「……」
「結~」
楽しそうに後ろから抱きついてなかなか
家族であっても接し方は変わらないのだ。
あまり広く知られた用語ではないが、継のような『愛』の持ち方を『全性愛』と言うそうだ。『両性愛』、バイセクシュアルと言った方がより通じやすいかも知れない。
しかし、継はあの花火でさえも「ドキドキしたことがある」と言っているのだ。
そんな継なりの悩みというと、「誰でもドキドキしちゃうから、誰を選ぶべきか迷ってしまう」ということらしい。
「ううむ、お父さんに言われてもなあ。こればかりは、継が決めることだよ」
「そっか……」
継と真の相談の場も持たれたが、さほど良い結論も出ずお開き。悩みながら、継も毎日を過ごしているのだ。
「確かに難しいですね。色々な
「そうですよね……」
しかし、いくら
『でも』とふと思い出す。
「
「確かに、小さい
池上桃子。小学校の頃から継にアタックし続けている、継の「友達」だ。
当の継は、別に
そして、
「どうしましょう」
「そうですねえ」
名案というものはそう簡単には
しかし、継は桃子の良いところをたくさん言える、とも言っていた。そこを足がかりに出来ないか、とえにしさまと意見を
翌日。
「結ちゃん! 結ちゃんに相談が!」
タイミングよく
桃子はこう言った。
「結ちゃんなら、神様にお願い事を伝えてくれるって聞いて!」
『そこまで話が広がっていたの』と、結は目を丸くした。
これまでの人々と同様に、結の手を
それに、実際「交換日記」という形でえにしさまと交流しているし、相談もしている。
きっとえにしさまも分かっていて、桃子を引き寄せたのだろう。しかし、『分かっていない
「あ、あはは……
「だって
こう
『どうしよう』と思った矢先。
「あ、桃子だー」
継が現れ、桃子が慌ててぱっと手を離す。いつものように継が強くハグをした。
『あのね、あのね』と小さな子のように継がはしゃぐ。複雑な気持ちの桃子は、少し苦笑い。
「昨日の夜ね、桃子が夢に出てきたんだ!」
びっくりした顔をする桃子。
「いっぱい話して、色んなところで遊んでて、見たことないようなところも!」
それでね、と継が言う。
「これって、予知夢なのかなって」
桃子の表情が、思わず
もしもね、と継が繋ぐ。
「未来もずっと一緒にいられるなら、とても嬉しいなって気分で起きられたんだ」
じわりと、桃子の
「だから、一緒にいたいなって、桃子に伝えたくて」
「うん……」
ぎゅっ、と桃子の手を取る継。
それに応え、喜びをかみしめながら声を
「どうかな?」
「……うん!」
ばっと桃子が継に抱きつく。
継も、桃子に抱きつき返す。
これが、継の答えだ。
後日、幸せそうに遊びに出かける二人を見送って、結は境内で
「この家、変わった家だなあ」
父親の話を聞いていると、様々な愛の形があることを知る。そして、結自身もそれを受け入れ、実際、家族の中に「当事者」が生まれるようにもなった。たぶん、世間から少しはずれた感覚の家庭にいるのだろう、と考える。
「あ、結ちゃん」
「おはよう」
「おはようございます」
琥珀と蓮が遊びに来た。
聞けば、音大に通って管楽器の演奏を勉強しているのだそうだ。
「それでねー」
この二人には、一緒に居ることが
「私は、どんな
『兄で次男の和樹はどうなんだろう』と結は思った。結の中でまだ実感として
自分の部屋に
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