第3話 少年ニコル
「人間が、機械に……」
あまりにも衝撃的だった。
ゲート前で撃ち合って居た機械も、街で動いていた機械も、元々は人間だったって言うのか。
「うん。この国の人間はみんな機械になっちゃったんだ」
「何故そうなったんだ?」
「1週間前、ある機械が一人の人間を殺した。
だけど、それに気付いた住民は居なかった。どうしてだと思う?」
「どうしてって……誰も死体を見てなかったから」
「はずれ。殺された人間が生活していたからさ」
「……その時点で機械とすり替わっていたってことか」
「うん。気付いたときには大半が機械化してたよ」
機械達は、念入りな準備をして殺しを行ったのだろう。地道に一人づつ、誰にも気づかれないように。
だが、殺した住民を機械化させる理由が分からない。反乱や逆襲のつもりなら機械化させる意味がないはずだ。
それに、機械化した住民は人間の事が見えないはず。どうして機械であることが悟られなかった?
……いや、ゲートの機械達は俺の事を認識していた。なら、街の機械達は意図的に人間に触れられない様になっている?
ともかく、機械のやってることは不可解な点が多いな。
「あーっと、お兄さん、ちょっといい?」
「オーリでいいぞ。で、どうした?」
「この状況はまずいと思うんだけど」
「まずい?」
何が? と聞く前に、ニコルが言いたい事がわかってしまった。
既視感を覚えるような事態。要は、機械達に囲まれている。
ゲート前に居たのと同じタイプだろう。つまり、俺の事を認識しているわけで……。
「もっと早く言ってほしかったかな!」
「オーリが聞いてなかったんでしょ!!」
「え、なんか言ってた?」
「いや、言ってないけど」
「おい!!!!」
ついノッてしまったが、そんなことしている場合ではない。ゲート前と同じで数に差がある。どうするべきか。
「お前が不法入国者か?」
「いや、人違いだと思うぞ」
「なら、何故チップが入ってないない?」
「……チップ?」
チップ……一体何のことだ?
「ニコル、チップってなんだ?」
「後で説明するよ。まずこいつらを撒かないと」
「それもそうだな……。何か手はあるか?」
「なくはないけど……しょうがないか」
そう言うと、ニコルは右手の手袋を外す。
素肌になった手の甲には、何かを抉ったような痛々しい痕があった。
「ロボット達、これを見て」
その抉られた手の甲を見た機械達が狼狽え始める。
「そんな、何故生きている……」
「オーリ、行くよ!」
「え、ああ」
動揺している機械達を横目に走り抜ける。
機械達はまるで、見てはいけないものを見てしまったかのような反応だった。
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