第14話

 まずはミルの部屋へと向かった。ミルはそこで銃のバッテリーを入れ替えると、部屋を出ざまに近付いてきた掃除屋三人を撃ち抜いて見せる。

 続いてキッチンに行き、クッキングマシンを壊される前に二人をテーブルの影から倒す。

「あと、どれだけいるんだ……?」

「わからない。ボクの前に船内に入ったのは十人ぐらいだったと思うけど……デッキからの入り口は開いたままだから、ボクの後にどれだけ入ってきたか……」

 クルルの安否が、未だにわからない。彼の為にも、カタパルトデッキの入り口は開けたままにしておきたい。

「そう言えば……宇宙海賊の時は圧勝してたからわかるんだけど、何で今回も外に出て戦ってたんだ? 相手は強くて注意喚起が出回ってる掃除屋で、船の規模から多勢に無勢だって事もわかってたんだろ?」

 バリアを張って、難事が過ぎるのを待っていた方が良かったんじゃないだろうか?

「そうするつもりだったよ? けど、ずっと籠りっ放しだといつ助かるかわからないし、相手が増長するかもしれない。だから、まず出鼻だけ挫いておこうって。クルルが」

 ヒットアンドアウェイで、すぐに船内に戻ってくるつもりだったらしい。ところが、予想以上に相手の数が多かったためにさばき切れず、窮地に陥ってしまった、と。

「クルルってば、データベース調べまくったり作戦考えたり、知将気取ってる割には、抜けが多いよねぇ。本人の戦い方は脳筋と言うか、力任せだし」

 そう言ってケラケラ笑って見せた顔は、やっぱり女の子のようで。それでいて、いたずらっ子の少年のようでもあって。かと思えば、頼もしさを思わせる大人の雰囲気も出していて。

 その不思議な表情に、俺はしばらく見惚れた。見られているのが嬉しいのか、ミルは更に嬉しそうに笑う。

 二人揃って、油断していた。気付いた時には、背後に新たな掃除屋が迫っていて……。

「ミル、後ろ!」

 咄嗟に声をかけ、ミルは弾けたように銃を構える。けど、間に合わない。ミルが引き金を引くより早く、相手の棍棒のような武器が振り下ろされる。

 だけど、俺やミルの頭部が粉砕される事は無かった。閉じていた目を恐る恐る開ける。そして、俺とミルは二人揃って「あっ!」と叫んだ。

「どこに敵がいるかもわからない状況で笑ってお喋りとは、随分な余裕だな。ミル、ショウ?」

 そう言って彼は、体液まみれのアックスを一振りする。青黒い液体が、飛沫となって壁や床、果ては天井までをも汚した。

「ちょっと! 後の事も考えようよ! あんな高い場所汚したら、後で掃除が大変じゃない!」

「構わないだろう。掃除をする時は、重力設定をいじれば良い。それに、今日から人手が増えるしな」

 そう言って、ボロボロになりながらも、クルルはニヤリと笑って見せた。

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