第48話 聖戦開始
「敵軍は、パラスが撃退した1陣、私とジャンヌが撃退した2陣、共に、生還率は9割を超えています」
アレクシアが、落ち着いた声で報告する。
「予想より高いな。それは良かった」
エルクが、安堵の呟きを漏らす。
もっとも、被害が少ければ少ないで、再侵攻の可能性は有るのだが。
「敵軍の大将は、僕が倒したんだよ」
ジャンヌが得意気に言う。
倒した?
エルクが、嫌な予感を感じ。
ふと見ると、アレクシアがだらだらと汗をかいている。
「死亡したミーミル軍のうち、著名な者の名は?」
エルクが尋ね、アレクシアが答えたそれは・・・
「ミーミル軍、四天王のナンバー1と、ナンバー2じゃないか」
エルクが、がっくりと膝をつく。
被害が大きいなんてものじゃない。
ナンバー1の奴なんて、聖戦を幾度か生き延び、ミーミル王より強いと言われていたんだぞ。
エルクは溜息をつくと、
「まあ、お前達が無事で良かった。それに・・・そこまで損耗すれば、再侵攻は無いだろう」
責任追及とかで、魔王権剥奪されてエルクに来たら・・・泣くしかない。
ともかくも、危機は乗り切った筈だ。
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「・・・おかしいな」
エルクが、訝しむ。
聖女
3/7
勇者
0/1
魔王
1/1
闇の巫女
1/1
聖戦が開始した。
柱には、現在の状況が浮かび上がる。
「聖女が大分減ってるね」
ジャンヌがのんびりとして言う。
「いや、聖女もおかしい事はおかしいが」
エルクが呻く。
「7人中、4人が脱落・・・1人はパラスだ。もう1人は、ミーミル王──魔王が捕えた奴だな。後の2人も、何らかの事情で脱落しているのだろう。だが・・・」
エルクは、勇者の箇所を指差し、
「何故、勇者が開幕から脱落しているんだ?勇者が神を裏切る事は有り得ないから、恐らく、死亡して復活待ちなのだろうが・・・」
「神につくより、友情をとったんじゃないかな!」
エルクの言葉に、ジャンヌが人差し指を立てて推測を述べる。
「あのなあ・・・魔族と勇者の間に、友情は有り得ない」
エルクがそう言うと、ジャンヌが、
「・・・確かに、友情じゃ無いよね・・・エルクにいっぱい愛して欲しいよ・・・」
ジャンヌがしゅんとして言う。
「・・・?いや、ジャンヌは俺にとって大切な存在だ。妻では無いが、同じ様に愛している」
エルクが困惑して言う。
「眷属も、眷属では無いけどジャンヌも、妹も、お兄様の中では等しく愛して下さるのですね」
リアが嬉しそうに言う。
「そこに妹を混ぜるな。無論、大切な存在ではあるがな」
エルクが半眼で言う。
聖戦は、魔王が倒されるまで続く。
勇者は、聖戦の間は死なない。
聖女は、聖戦の前に7人産まれるが、聖戦が長引けば新たに誕生する可能性が有る。
闇の巫女は、魔王が倒れた後に魔族を守る役目だ。
魔王とは、倒される運命。
一矢報いて、何処かの聖柱を制圧してくれれば・・・毎回、ぎりぎりの戦いをしなくて良いのだが。
ともあれ、聖戦は予定通り始まったのだった。
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