第41話 異世界の知識

「僕は・・・盾を出すくらいしか出来ないから・・・」


パラスが困った様に言う。


盾の聖女。

歴史の中で、決して強い存在ではない。

聖女の間にそこまで格差が有るわけではないのだけど・・・それでも、やはり防御しかできない聖女というのは微妙だったらしい。

何でも防げるって訳でも無いし。


「ともかく。パラスとアンリは、絶対に正体を悟られないようにな。何処から漏れるか分からないから、なるべく国民にも黙っておいて欲しい」


エルクは、やや疲れた様子で、そう告げた。


義理姉様おねえさま方、ようこそファーイーストに来て下さり、有り難うございます。私はエルクお兄様の妹、リアです」


ぺこり、とリアが挨拶をする。


「僕はエルクの親友、ジャンヌだよ」


ジャンヌもにかっと微笑む。


「私はエルク様の眷属になりました、セリアです」


ぺこり、とセリアが頭を下げる。


「僕はパラス!盾の聖女だよ!」


パラスが挨拶。

くれぐれも、他の人にはその挨拶するなよ。

エルクは心の中で突っ込んだ。


「私はアレクシア。智・・・放浪の賢者をしています」


アレクシアが挨拶する。

智?

エルクは突っ込んではいけない空気を感じ、聞かなかったことにした。


「私はノエル。レイアーの王姉です」


ぺこり、ノエルが挨拶する。


「私はアンリ。別次元から来ました」


「「「「「別次元?!」」」」」


エルクとノエルを除く全員が叫ぶ。

あ、言ってなかったか。


ふと思い出して、エルクがアンリに告げる。


「・・・そういえば・・・アンリ。別次元の知識を無闇に使うのは禁止な」


「どうしてですか?!」


アンリが心外そうな声を出す。


「どうしてもなにも・・・まず、異世界からの召喚、これは最大の禁忌とされている。この世界の民は、この世界の民のペースで文化を築いている・・・異界の知識が流入すれば、コツコツ積み上げた文化が汚される事になる。だから、異世界の知識を流出させるのは、聖神、魔神、共に禁じるところだ」


エルクが淡々と告げる。


「・・・つまり、『私』は、異世界の知識を使ってはいけない、という事ですね」


「・・・?そうだ、な」


エルクは、アンリの言葉に引っかかりを覚えたが。

頷く。


「必要だ、と判断したり、影響が無い事ならまあ構わないが・・・みだりには行わないでくれ」


ややきつい言い方になったかな。

エルクはそう思い直し、訂正するように言った。


「はい、分かりました」


アンリは、そう頷いた。


--


「此処は研究所。魔法や魔道具の研究をしている」


エルクが、眷属達に城の案内をしている。


「私が管轄してもよろしいでしょうか?」


アレクシアが尋ねる。


「ああ、構わないよ。予算も自由に組んでくれて良い」


エルクが応じる。

王の眷属達は、国のナンバー2。

政務の一部を負担するし、場合によっては、機関の最高責任者となる。


ファーイーストは、基礎研究に投資を怠らない国だ。

ミーミルに比べると、研究設備も予算も潤沢だ。


他に、色々な施設を紹介、ついでに、希望があればそこの責任者に任命・・・

軽装部隊をセリアが担当したのは予想外だった。

なんでも、兵士同士の打ち合いが好きらしい。


研究所と魔導部隊がアレクシア。

軽装歩兵とメイドがセリア。

重装歩兵がパラス。

政務補佐をノエルが担当する事になった。

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