第38話 帰還
エルクとノエルが連れ立って、村長とアンリのもとに戻る。
「すみません、お待たせしました」
ノエルが謝罪すると、
「とんでもありません。こちらは大きな恩を受けるのですから」
村長が頭を下げる。
「それでは少し、弟と話をして参ります」
ノエルが立ち去ろうとすると、
「あ、ノエル様・・・待って下さい!」
アンリがノエルを引き留める。
「・・・どうされました?」
ノエルがきょとん、としてアンリに尋ねる。
「今エルク様の眷属になると・・・素晴らしい新兵器の情報等をレイアーに供与して貰って、レイアーの武装を一気に強く出来ますよ?」
アンリが必死にアピールする。
「あ、もう私はエルク様の眷属ですよ?」
ノエルがそう言うと、
「そう言わず、御願いします!」
アンリが必死にプッシュ。
「落ち着け」
エルクがアンリにチョップを入れる。
「あう・・・でもでも、やっぱりノエル様が居てこその・・・!」
「・・・アンリ様、今ノエル様は、既にエルク様の眷属とおっしゃってましたが・・・?」
村長がアンリに言うと、
「・・・何時の間に?!」
驚愕してエルクを見るアンリ。
「そういうわけだからよろしくな、アンリ」
エルクがアンリの頭をぽんぽん、と叩く。
「よろしく御願いしますね、アンリ様」
ノエルがぺこり、とアンリに頭を下げる。
「うう・・・様はやめて下さい・・・」
アンリが呻いた。
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「早いですね」
アンリの背中に乗っているノエルが、驚きの声を漏らす。
ノエルはメイド服を着替え、旅の魔導士の服装をしている。
「人を乗せるくらいしかこれし能がないですので」
「・・・むしろ、人を乗せる聖獣の方が珍しいと思うが・・・」
エルクが突っ込む。
聖獣はその高い実力と、高い誇りを持つ。
勿論人間なんかを背中に乗せたりしない。
無論魔族を見つければ滅するのが存在意義で、魔族を背中に乗せるのはあり得ない。
行きに比べ、帰りは相当な時間の短縮となった。
何年離れていたのであろうか。
村は、大きな櫓が複数建ち、鉄の武装をした村人が、機械弓の練習をしている。
堀に橋が架かっていた場所には橋が無くなっている。
正確には、橋が縦になって、垂直に立っている。
あれでは渡れない。
いや、数日だろう、おかしいだろう、エルクが突っ込む。
村長も首を傾げている。
エルクが橋っぽい場所に降り立つと、こちらを見つけた村人が、何か操作をする。
橋が音を立てて降りてきて・・・堀に橋が出来た。
次いで、兵士が何か筒に向かって叫んでいる。
村の奥からセリアがやって来た。
「お帰りなさいませ、ご主人様・・・と、ノエル様?」
セリアがノエルの姿を見て、疑問符を浮かべる。
「お久しぶりです、セリアさん。素敵な村ですね」
ノエルがセリアに気付き、挨拶する。
「お久しぶりです、ノエル様。この村まで来られたのですね」
セリアも挨拶を返す。
「はい、エルク様の眷属になりましたので」
「・・・なるほど」
納得するように言うセリア。
「セリア・・・この状況は?何か村の護りが凄い事になっているんだが」
エルクが驚きつつ尋ねると、
「はい、アレクシアの指示に従って、村の護りを固めてました」
セリアがにっこり微笑んで答える。
平時ならかなり安全な防備だ。
しかしこれから聖戦が始まることを考えると、この村に居続けるのは厳しい・・・
エルクはそう思う。
帰還後、近隣の村2箇所、そしてレイアー。
近隣の村から順に、村人を送り届ける。
片方はエルクとノエル、もう一方の村はアンリとアレクシア。
最後に、レイアーにエルクとノエルが送り・・・
ラムダ村からには人が居なくなった。
資産も、移住先の村やレイアーに運んだ。
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誰も居なくなった村の宿屋、エルクと、その眷属達が集う。
「終わった、な」
エルクが呟く。
「はい、終わりました・・・寂しくはありますが、仕方ありません。また聖戦が終わったら・・・人も戻ってくるのでしょうか」
セリアが呟く。
「きっと戻ってくるさ。そしてその時は・・・俺達がまた手伝ってやれば良い」
エルクが言う。
「聖戦が終わるまで何年、何十年掛かっても・・・私達はもう吸血鬼ですからね」
ノエルがしみじみと言う。
「その時はいっそ、砦を作ってしまうのも良いかも知れないね」
アレクシアが言う。
「では、そろそろファーイーストに戻ろうと思う。これからよろしく頼むよ、妃達よ」
「はい」
眷属全員の声が唱和する。
「帰りはどうされますか?私に乗りますか?」
アンリが尋ねる。
「なるべくミーミルに気付かれたくないからな・・・どうしたものか」
エルクは少し考え、
「アンリ、俺、アレクシア、ノエルで隠蔽の魔法を掛けながら飛べば、恐らく何とかなるだろう」
「了解しました」
アンリ、アレクシア、ノエルが応える。
こうして、聖界を後にし、ファーイーストへと飛び立った。
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これで1章が終わりになります。
次回更新の時期は未定です。
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