第23話 破られし盾

?!

これは・・・美味い・・・。

自信満々であった理由はこのあたりだろうか。

美味しさとしては、セリアと同格・・・やはりベクトルとしては別物・・・

澄んだ味、巨大さ、頑強さ。

あらゆる力がその力の前では無力となる、そんな偉大さ。

そして自らに湧き上がる全能感。


セリアで経験済みなので、飲み過ぎはしない。

そっと牙を離す・・・と、自然にパラスの傷は癒えていく。

闇の力が体を駆け巡り、体を改変している筈だが・・・苦痛ではないようだ。


「もっと飲んで下さっても大丈夫です。健康には自信があるんです」


パラスが微笑む。

・・・なるほど、闇の者にとって優れた体質らしい。

パラスと経路が繋がって分かる。

パラスの魔力容量は凄まじい。

セリアもかなり驚いたが、パラスはその比ではない。

一方、自身で魔力を使う事は出来ないようだが・・・これは貴重な存在だ。


「成る程、確かに極めて役に立つようだ。パラス、これからよろしく頼むよ」


「はい!僕の全てを捧げます!」


パラスが嬉しそうに微笑む。

笑顔のまま続ける。


「僕は聖女って神様が言ってました!良く分からないけど凄く役立つそうです!」


エルクが笑顔のまま、固まる。


「あ」


アンリが呻きを漏らす。


「エルク様、どうされましたか?」


ニコニコ顔のまま、パラスがエルクに尋ねる。


「・・・ちょ・・・ちょっと待て・・・今聖女・・・と・・・?」


「らしいです!」


聖女。

神に選ばれた存在。

魔族の天敵であり、過去数多の魔族がその手で滅びた。

聖戦における人間側の主戦力だ。


「・・・パラス・・・その・・・冗談とか勘違いでは・・・なくて?」


「んーっと・・・」


パラスが困ったように言う。


「ちなみに、何の聖女、とか分かるのかな?」


「はい、盾の聖女です!」


・・・ここで勘違いなら、聖女の種別が出てきたりはしない・・・

つまり、本当に盾の聖女の可能性が高い。


「・・・そうだな・・・これはみんなに話しておくべきだったのだが・・・俺は今回の嫁探しで、ある程度の力を身につけたら、後は自国でゆっくりするつもりだったんだ。聖戦は、ミーミル王が就任する魔王に任せて、な。聖獣、しかも愛奴れいど状態の眷属がいる時点でかなりぎりぎりだったのだが・・・あまり強くなると、俺に魔王の座が回ってくる可能性があるし、聖戦にも参加しろ、という話になる。あくまでも、自国防衛するのがやっと、と思わせておかないといけないんだ」


情けない話だが、聖戦なんかに借り出されたらたまった物ではない。

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