第13話 真夜中の来訪

「商談、になるのですが、もしあの純度の物をもっと持ってくる事が可能なら、御願いできないでしょうか?代金は後日とさせて頂きますが・・・必ず現金に換え、お支払いします。報酬は、商品を受け取る前に相談させて下さい」


エルクは考える。

なるほど・・・ツテがあるこの村がお金に換え、その一部でこちらに支払いをする、という事か。

勿論王都等に自分で持ち込めるならこちらにメリットはないが、それを避けたい、と踏んだのだろう。

ギルドで訳あり、と明言している。


正直、エルクにはお金は不要だが・・・セリアの魂の色は、エルクから見て非常に好ましい色をしている。

眷属に迎えるのは極めて難しいだろうが、戯れに恩を売ってみるのも悪くないかも知れない。


「分かった、明日もう少し採ってこれると思う」


「有り難うございます」


セリアがにっこり微笑む。

心の底から、というよりは、作られた笑み、という感じだ。

エルクは嫌な感じは受けなかったが。


出て行こうとしたセリアに、アンリが何か尋ねている。

セリアはきょとん、とすると、困惑したような顔をして、にっこり微笑んで、出て行った。


「アンリ・・・お前の奇行は、俺だけにって訳でもなかったんだな」


「うう・・・だって・・・これではおかしいのです・・・」


「おかしいのはお前だ」


すっとエルクはアンリを抱き寄せる。

アンリが体の力を抜き、エルクに体を預ける。


「ん・・・」


そっとエルクとアンリは、唇を重ねた。


--


夜中。

予兆を感じ、エルクは服を着る。

アンリもやや遅れて起き上がり、手早く服を身につけていく。


アンリが服を着終わるのと同時くらいに、部屋にセリアが飛び込んできた。


「や・・・夜分・・・すみません・・・冒険者・・・様・・・」


「どうした?セリア殿」


セリアはエルクを見、アンリを見・・・


「幼馴染みが・・・親友が、ゴブリンにさらわれたんです・・・気付かない間に、巨大なゴブリンの集落が出来ていて・・・」


セリアはアンリの肩を掴み、


「どうしてゴブリンの集落の事が分かったんですか?!御願いします・・・助けて下さい・・・」


・・・あれ?

アンリ?

ひょっとしてさっき何か言ってたの、それだったのかな。

聖獣は知覚が優れている。

ゴブリンの存在に気付き、村に報告が入るより前に話して・・・話が通じなかったとかだろうか。

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