第11話 騎乗
「エルク様、お乗り下さい」
アンリはそう言うと、人化を解く。
その姿は・・・透き通る様な美しさの、紫色の毛並みをした、スフィンクス。
ヴァンパイア・クイーン・スフィンクス、といったところだろうか。
それにしてもスフィンクスとは・・・エルクは驚く。
それなりに高位の聖獣だとは気づいていたが、スフィンクスは現役長老の種族と聞く。
その力は別格である上、血筋的にも聖獣の長候補と思われる。
本来の大きさは数メートルを超える筈だが、今はちょうどエルクが乗れるくらいの大きさだ。
・・・無論、乗り物にしていい存在ではない。
「有難う」
エルクが礼を言って跨ると、アンリが空に飛び立つ。
数瞬の後には、静かに目的地へと降り立った。
本来この世界では、空を飛ぶのは危険だ。
魔獣に竜、各国の守備部隊・・・守りを固めるくらいなら、歩くか、超低空を飛んだほうが早い。
しかし、アンリの場合はそもそもの速度が異常だし、5000歳を超えた竜でも、スフィンクスに喧嘩を売る馬鹿は居ない。
アンリが再び人化する。
「有難う、おかげで早く着いたよ」
「はい、帰りもお任せ下さい」
アンリが微笑む。
エルクは洞窟に入り、月待草を収穫する。
根を魔力で覆い、傷付けないように抜いた後、マナを操作、活動を極端に遅らせる。
全体を魔力で覆いつつ、コンパクトになる様にそっと折り畳む。
流れる様に作業し、20本の月待草が収穫出来た。
「・・・エルク様、流石繊細なお仕事されますね」
「なるべく鮮度を保ちたいからな」
完成したものはそのまま浮遊で、持ち歩いている魔力の網に入れる。
中に仕切りの網を張って分離するのは怠らない。
蛍光石も地面に落ちている。
「精製」
不純物混じりの蛍光石が崩れ、蛍光石のみが空中に集まる。
そのまま結晶化。
拳大の塊を10個。
「こんなもんかな?」
「・・・恐れながら申し上げます、エルク様。恐らくここまで高品質の物、人間では絶対に入手できません」
「・・・何・・・魔力で生成するのは避けたのだが、まさかそんな所に罠が」
「こんな物渡すと怪しまれますが・・・かといって、せっかく作ったものを棄てるのも勿体無いですね。指くらいの大きさの欠片にした上で、拾った事にしてはどうでしょう?」
「うむ。そうしようか。とにかく目立つと不味いからな」
正体がばれても面倒だし、権力者に目を付けられても困る。
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