第10話 冒険者ギルド

むにー。


エルクはアンリの口を伸ばしながら言う。


「人の話を聞いていたか?」


「い・・・いはいれすよ・・・エルクさは・・・」


涙目でバタバタするアンリ。

エルクはアンリの事を可愛いとは思うが、時々わざとやっているのかと思うくらい、ずれた発言をするのには手を焼いている。


「とりあえず、冒険者ギルドに行こう。路銀もないしな」


「はい!」


エルク達が冒険者ギルドに着く。

時間帯か、あまり人は居ないようだ。

適当に簡単そうで報酬の高く、登録なしで受けられる・・・

エルクがギルドの受付に話しかける。


「月待草の採取、キラージャッカルの討伐、蛍光石の採取、を受けたい」


「・・・それは構わないですが、どれも難しいですよ?どれも受注契約は不要なので、どれか達成出来たら報告に来て下さい。キラージャッカルの討伐部位はご存知ですか?」


討伐部位。

討伐依頼の際、それをギルドに差し出すことで、討伐した証明にする。

無論、ある程度は信頼による部分もあるのだけど。

ギルド非会員の場合は、確認が済むまで報酬が出ないこともある。

キラージャッカルの出現場所は村から近いので、そう時間はかからないだろう。

エルクはそう考えた。


「首とかで良いのか?」


「はい、首なら問題無いですし、大変なら前歯だけでも」


「了解した」


「このあたりの依頼は、比較的難易度が低い物になっています」


親切心からだろう。

勧めてくれる一覧をエルクは手で制し、


「有難う。では行ってくる」


ギルド受付に礼を言うと、冒険者ギルドを後にした。


--


アンリの喚び声に応じ、キラージャッカルの群れが来る。

5体という話であったが、成獣が7体、幼体が5体。

聖獣たるアンリなら、自害を命じることも出来るが、そこまでする必要はない。

今回は挑発に近いようだ。


「風、刃、断首」


エルクが風の刃を構築。

向かってくるキラージャッカルの首を落としていく。


「網」


魔力で編んだ網に、落としたキラージャッカルの首を収容する。


「お見事です、エルク様」


「アンリの方が素晴らしいよ。有難う」


アンリをそっと抱きしめる。


「後は・・・月待草、蛍光石」


エルクは呟くと魔力を練り、


「探査」


魔力を周囲に這わせる。


「向こうの洞窟か」


月待草は、外にも生えるが、外では昼は開花しない。

開花している花に薬効が有るので、昼に欲しければ洞窟を探すことになる。

徒歩で1時間といったところか。

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