第7話 不機嫌
「う・・・」
アンリが肉を口に運び、ちょっと残念そうな顔をする。
「どうした?」
そこまで変な味はしない筈だが・・・?
エルクはもう一口食べてみたが、普通に肉の味がする。
「いえ・・・そう言えば、塩や香辛料はまだないんですよね・・・」
「・・・?」
聞き慣れない単語に、またエルクは軽く混乱する。
しかも、『まだない』とはどういう意味か・・・
料理を食べたら、後は寝るだけだ。
テントは1つしかないが、眷属なので1つで十分だろう。
流石に、いきなり手を出したりはしない。
ずっと手つかずにするつもりもないが。
エルクもその程度の紳士さはあるつもりだ。
エルクは、アンリの温もりを心地よく感じながら、目を閉じた。
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次の日の朝、目を覚ますと、不機嫌そうな目をしたアンリの顔が目に入る。
・・・馬鹿な・・・何があった・・・?
エルクは戦慄する。
まさか夜の間に手を出してしまったのだろうか・・・?
「おはよう御座います」
不機嫌そうにアンリはそう言うと、ふい、と顔を背け、朝の支度を始めた。
・・・よく分からないが、寝る前はあんなに機嫌が良かったのが嘘のようだ。
やはり女性は難しい。
「お・・・おはよう」
エルクは挨拶を返すと、どうやって機嫌を取ろうかと考えた。
「その・・・済まない、アンリ。何かあった・・・のかね・・・?」
「・・・何もないから不満なんです」
・・・何もなくても不満・・・?!
やはり女性は難しい・・・
「その・・・悪かった、機嫌を直して欲しい・・・」
アンリを抱き寄せると、最初は硬かった体も、少しずつ柔らかくなってくる。
どうやら少しは機嫌が直ったようだ。
アンリがじっとエルクを見て、
「血を飲みますか?」
「うん、頼むよ」
「はい」
アンリが首筋を差し出す。
エルクが牙を立て・・・
「ん・・・」
アンリが色っぽい声を出す。
良い匂いがするな・・・思いつつ、エルクは吸血を楽しんだ。
--
「いいお湯ですね」
「ああ、こんな魔法の使い方があったとは」
エルクは感心する。
池の近くの地面に窪みを作り、池の水を流す。
その水に熱波の魔法を当て、お湯にする。
その中に浸かる。
非常に気持ちが良い。
服を脱ぐので、気を遣って時間を分けようとしたのだが、アンリに睨まれたので一緒に入っている。
・・・ひょっとしたら気を遣っているのがいけないのだろうか。
エルクは思案する。
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