{第百十六話} 新たな力
「自己防衛モードのオート機能を解除します。以後、コントロールが可能になります。また、一部機能の解除に伴い名称を「自己防衛モード」から「Sモード」名称を変更します」
といったメッセージと共に、おじさんが仕込んだと思われるボイスメッセージがインカムを通して再生され「お金いっぱい欲しいんだったら、年金なんてあてにしちゃだめじゃない 自己防衛 投資 海外移住 日本脱出だよね 国なんかあてにしちゃだめ あてにするから文句が出てくるわけでしょ」といった内容だった。
「これが言いたかったがために名前を「自己防衛モード」にした説がありうるな」
昌は軽く笑いながら剣を強く握り直し、構えた。
先ほどまでの苛立ちと焦りはおじさんのおかげで何処かへ行ってしまったらしい。
昌は「自己防衛モード」特有のスピードとパワーを使いこなし、タグの攻撃を点から点に移動するように避ける。
自己防衛モードを使いこなせるのは、しばらくそのスピードとパワーに体を無理やり動かされていたからだろう。
アリーセを肩に載せた謎の男を見るとソアリンは椅子から血相を変え立ち上がった。
「何故、ここにいる!」
「ふ~ん。自分の意志で動ける様になったみたいだけど、その全体にヒビが広がった鎧を見るかぎり、もう遅い。あと一撃てもくらえばゲームオーバー、オレの勝ちってわけだ」
昌が自分の意志で動ける様になった事に気づいたタグだが、自分が有利な状況は変わっていないと確信し、余裕な様子だ。
しかし、今の昌は新たな力を自分の物にし先ほどとは全く違う事にタグは早い段階で気づかされる事になる。
(SDモード中に動ける様になったのか?これまで全く対応できなかったタグの動きを遥かに凌駕する動き、これがSDモードの本当の力)
戦闘を見ていたリツカは何かを考えている様子だ。
「逃げるのは上手くなったみたいだが、それではオレには勝てない!」
昌だってそんな事はわかっている為、頭の中で思考を巡らせていた。
(相手は3人、1人を集中的に攻撃して倒したとしても、倒すまでの過程、もしくは倒した直後に攻撃を一撃でも食らえばオレの負けだ。つまり3人を同時に一撃で倒さなければ)
結論は出た昌だが、その結果を得る為の方法が思いつかない。
そんな昌の脳裏にオートで動いていた自己防衛モードの自分が放った強力な斬撃を放ったシーンがよみがえった。
(それしかないな)
これは確実に当てなければならない状況、チャンスは一度きりで失敗は許されない。
昌は自分の両サイドにGOSで壁を出現させ、自分からタグまでを一直線になる状況にした。
作戦通り、3人のタグは一列に並び、こちらへ走ってきた。
「この状況ならそうくると思ったよ。高さを変えれば3方向から攻撃出来る!」
そう言うとタグはそれぞれ別の高さにジャンプした。
(これを狙らっていた)
昌は一列に飛び上がったタグに向かってこれ以上無い位に力を入れ、縦振りの超強力な斬撃を放ち3人のタグを叩き落とした。
超強力な斬撃で叩き落され、地面に強く叩きつけられたタグのアーマーは砕け散った。
また、タグに擬態していた人形はマネキンの様な見た目になり、火花を散らして床に倒れたまま動かなくなってしまった。
「アーマーの全壊を確認。バトル終了、勝者「菊田 昌」!」
アナウンス聞いた瞬間、昌は自分の勝利を実感し剣をしまうと、鎧も消えた。
「まさか空中で3人が重なる瞬間を狙っていたのか...」
タグはあまりにも綺麗にやられたため、文句は一つも出てこず、納得した様子で去っていた。
フィールドから出ていくタグを昌は目で追った後、謎の男を探すが見合たらなかった。
戦闘を終えて自身もフィールドから出るとネラとネイの2人が迎えてくれた。
「やったわね、昌」
「ああ、アリーセに助けられた」
「オイラーの工場で会ったあの謎の小さなロボットの事ですか」
「ああ」
ネラ達とアリーセについて会話していると、手下達を含めたベック達がやってきた。
「昌、礼を言う。俺の仇を打ってくれて」
「いや、ベックが情報をくれたおかげだ」
「うんうん」「うんうん」「うんうん」
手下の3人は「その通りだ」と言った様子でうなずいている。
「だが、次は決勝だ。ここままだとお前の相手はヤツになるだろう」
「ブラッドか...」
「お前なら勝てると信じているがな」
「お、おう」
そんな和気藹々とした様子を振り返り見たタグは舌打ちをして去っていた。
「くだらない、へどが出るな」
一方、ソアリンは会場内を走っていた。
(クッソ、何処へ行った。お前が何を企んでいようと、絶対に俺の邪魔はさせない)
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そして、ブラッドは着実に勝利を重ねていた。
「アルキメデス先生、すべては計画通りです。それにしてもお孫さんはお強いですね。決勝の相手はあの菊田昌です。あれだけの実力差があれば、データクリスタルは手に入ったも同然」
広い部屋の中でアルキメデス議員は部下からの報告を受けていたが、報告に対する反応は一切なかった。
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試合はほぼすべてが終わり、残るは昌とブラッドの決勝のみとなった。
一階のバトルフィールドがあるエリアには決勝へ向けて準備をする昌とブラット、その関係者のみで、二階には二人の決着をこの目で見ようとする者達が集まっていた。
「いよいよ決勝ですね」
「気を付けてね、昌」
「ああ、あいつの試合を見ている限り小細工は通用しない。本当の実力が試される」
試合への覚悟を決めた昌の元へ、ベック達がやってきた。
「正面から全力でぶつかればお前は勝てる。それにあの人もお前にも勝ってほしいらしいからな」
そう言うとベックはvip席でこちらを見ているリツカの方を見た。
それに続いて昌達もリツカの方を見ると、リツカと目が合った。
「それをオレに渡したのはリツカなんだ」
ネイが待っているタブレッドを指さす。
「まもなく決勝戦を開始します。決勝に進出されたお二人は中央の専用バトルフィールドへ」
ベック達と話しをしていると昌を呼ぶアナウンスが会場内に響き渡った。
「頑張ってください」
「勝って京一を助けましょ」
「ああ」
昌はネラとネイに、ブラッドは執事と思われる女性に見送られフィールドへ向かった。
見送った二人は昌に聞こえない程度の声で話を始めた。
「ここまで怪し人物は一人もいなかった」
「という事は」
「ええ、彼が「死角」でしょうね」
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